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国内最大規模のクラスターから1年築き上げてきた地域のつながりが支えとなる

2021年04月01日

国内最大規模のクラスターから1年築き上げてきた地域のつながりが支えとなる

永寿総合病院は東京・台東区にある急性期を受け入れる中核病院。 1956年設立の歴史ある同院は2012年に公益法人化、2019年に地域医療支援病院の承認を得て、地域に開かれた病院として、高齢化の進んだ下町の人々の健康を支えている。

2020年3月の新型コ ロナウイルスの大規模クラスターの発生が、全国的に注目されたことは記憶に新しい。
同院の地域医療連携支援病院取得までの歩み、クラスター発生後の地域との関わり、危機を乗り越え、今何を教訓として残したのか、地域医療連携室課長 森雅宏氏に聞いた。

地域医療支援病院取得を目指して

私は2013年3月に永寿総合病院に入職し、医事課入院係を経て2014年12月に地域医療連携部門に配属されました。
当時の外来患者数は1日1200名であり、その中で地域の医療機関からの紹介状況は紹介率が35%程度、当院からの逆紹介率は20%程度と近隣の中核病院に比べると低く(当時の地域医療支援病院承認要件:紹介率50%以上かつ逆紹介率70%以上)、
逆紹介を推進するためにポスターやリーフレットで患者さんへの啓蒙活動を行ってはいましたが、正直なところ承認要件を満たすには非常に厳しい状況でした。

2017年に池田地域医療連携センター長が就任し、患者さんへの啓蒙に加え、症状が安定している患者さんについては、積極的に地域の開業医に逆紹介するという方針が打ち出されました。当時はまだ、逆紹介は患者を減らすイメージが強く、不安視する声などもありましたが、院内に積極的に協力を要請することで、毎月400件ほどであった逆紹介数を倍の800件ほどまで増やすことができました。

看護部・医療福祉相談部門と組織を一体化し、逆紹介窓口を設置

2017年、当院の2階にあった予防医療センターが移転した後のスペースを地域医療連携部門として使用できることになり、医療福祉相談課の医療ソーシャルワーカーと看護部の入退院支援看護師と地域連携部門の一体化を目的とした地域医療連携センターを開設。

外来からのアクセスが容易なので、さらに「逆紹介窓口」を設置しました。逆紹介は患者さんへの基本的な説明から診療所の選定までが必要で、医師が外来で行うには負担が大きく逆紹介できない要因となっていました。
そこで私たちが医師の代わりに逆紹介の一連の業務を請け負える体制を整えたのです。

逆紹介数の増加により実績アップ、地域医療支援病院へ

窓口設置後、大体月に100件以上の患者さんの逆紹介を対応しました。逆紹介することで、今まで当院とあまり関わりがなかった医療機関からの紹介患者も徐々に増えてきました。2017年4月に窓口を設置以来、もともと20%だった逆紹介率が1年間で50%まで上がりましたが、紹介に関してはそれほど変わらず35%程度を推移していました。
医師に積極的に逆紹介を行ってもらうために、逆紹介の医師別ランキングや診療科別の紹介数や逆紹介数の推移を院内掲示板に貼るなど、総力を上げて取り組んだ結果、2018年には逆紹介72%、紹介患者54%にまで伸ばすことができ、2019年8月に地域医療支援病院の承認を得ることができました。

逆紹介先の選択、第一優先は患者さんの利便性

患者さんには逆紹介の意味合いから始まり、病院とクリニックの違いまで地域医療連携の仕組みを丁寧に説明します。
理解してくれる人は紹介先もすぐ決まりますが、中にはどうしても当院がいいという患者さんもいらっしゃいます。
そのような場合は無理強いせず、最終的には医師からしっかり説明してもらうようにしています。

当院は公益財団法人なので、紹介先の選定基準としては患者さんの利便性を第一に考え、まずは自宅から近いところを紹介しています。
当院には約230ほどの連携登録医療機関がありますが、連携先を優先的に紹介するということも行っていません。また私たちが主観的にいいと思っている先生を率先して紹介するようなこともありません。
専門医の資格を持っている、治療に必要な医療機器が備えてあるというように患者さんには客観的な事実だけを伝えてその中から選択していただけるように心がけています。医療福祉相談課と一緒になったことで、例えば保険証を持っていないような患者さんが相談に来られた際には、ソーシャルワーカーや看護師に、最初の入口から情報共有できるようになりスムーズに連携することができるようになりました。

2つの部門の合併は私たちの病院では非常に良い成果を上げていますが、全ての病院がこれに当てはまるわけではなく、ケアミックスの病院などでは別々の方が活動しやすいという話も聞きますので、これは病院によるのだとは思います。

逆紹介することで紹介が増え、収益が上がる

当院には月に1000から1200名の外来患者さんが来ていましたが、逆紹介を強化したことにより、外来の患者数は200名ほど減少しました。
しかしながら、待ち時間が短縮され、新規の紹介患者さんを待たせずに診察できるようになったことで、今まで当院への紹介を敬遠されていた開業医の先生からの新規のご紹介が増えました。

患者数が減少することで収益が下がることを懸念していましたが、外来の収入は減少しませんでした。再診で処方のみの外来は決して診療単価が高いわけではないので、入院や手術の可能性が高い新規の紹介患者が増加したことによりむしろ収入が上がりました。
その他に逆紹介が増えたことにより診療情報提供料が倍近く伸びたことも大きかったと思います。

返書によるアピールが紹介につながることも

返書については専属のスタッフが集配を行っており返書率は95%ほどです。
対応が遅れているものについては通知を出し、できる限りスピーディーに提出するようにしています。
当院の場合、医師が返書の重要性を理解しており、返書を出さない医師が少ないので非常に助かっています。
さらに報告や診療のアドバイスだけでなく、直筆で「ありがとうございます」と一言つけ加えられたり、耳鼻咽喉科にいたっては独自で作った広報誌を返書とともに同封して届けています。広報誌を見たクリニックの先生から問い合わせが入り、そのまま紹介につながるケースも少なくありません。
こういった受け手側の気持ちにたった返書の取り組みは非常に重要だなと感じています。

ベッドコントロールは院内コミュニケーションが鍵

病床稼働は個人的には気にしていますが、基本的にベッドコントロールは看護部が行いますので、地域医療連携センターの役割としては、院内の連携を強め、業務をスムーズに回すことに重点をおいています。
本当に基本的なことなのですが、日々医師の要望をまとめたり、担当頂ける看護師さんには毎日感謝の気持ちを伝えるなどして、良い雰囲気の中、円滑にコミュニケーションが図れる環境づくりに配慮しています。

常に患者ファースト看護師コンシェルジュサービスの導入

2018年から看護部の発案でMCT(メディカルコンシェルジュチーム)が設置されました。
事務員・看護師が一体となり、外来の正面玄関のところで専属のスタッフ3~4人がコンシェルジュ活動をしています。院内の警備や患者さんへの案内だけではなく体調の悪そうな患者さんに声をかけたり、今の時期だと手指消毒やマスク着用などの声かけや車椅子をアルコール消毒するなど多岐に渡った活動を行っています。
介助のプロである看護師が対応していますので、病院や病気に対して不安を抱える患者さんや家族の方から大変喜ばれています。

未曾有のウイルスとの戦い、診断の遅れが命取りに

クラスターが発生した昨年3月の時点では、新型コロナ感染 症の特徴として症状が出る前に強い感染力があることや、 感染しても無症状であることが多く、感染が気づかないうち に拡がっていくといったことが知られていなかった。
急性期 病院である同院には、発熱や肺炎を起こす患者さんが少な くなく、判別をするためのPCR検査の設備を持っていなかったため、迅速な診断ができず、感染が拡大した。

現在、医師 が必要と判断したときには、院内でPCRもしくはLAMP法に よる検査を実施している。結果が判明するまでは個室で待機し院内感染の予防に努めている。基本的な感染予防策と して、患者も職員も感染者である可能性を常に考え、職員の 毎朝の体温測定と、発熱のある場合の出勤停止、職員全員 の常時マスク着用、頻繁な手指消毒を徹底している。
また、 検査や処置でエアロゾルが発生する際にはN95マスク、 フェイスシールド、防護服の着用等の適切な予防策を取って いる。今回の経験から、病棟休憩室、仮眠室、職員ロッカー 室等、職員同士が密になる可能性のある空間では複数の職 員がマスクなしで休憩を取ることや飲食することを禁止し、 職員食堂においても、対面での食事は禁止している。

院内クラスターで実感した地域のありがたみ

2020年3月に新型コロナウイルスの院内クラスターが発生し、患者相談専用窓口が設置されるまでは、地域医療連携セ ンターにもひっきりなしに 電話がかかってきました。
2カ月 間、診療が停止したことにより、妊婦さんや手術が必要な患者 さんを多く逆紹介しなければなりませんでしたが、妊婦さんのように受診を待てない患者さんであってもなかなか受け付 けてもらえませんでした。その中で、非常に協力的に対応して下さった医療機関もあり、本当に感謝しています。


院内クラスターが起きたことで風評被害は広がり、辛いこともありまし たが、それ以上に今まで地道に関係性を築いてきた地域の人たちに様々な形で応援していただきました。院内でのクラス ター発生から終息、診療再開から現在に至るまで、本当に多くの方々からご支援、激励を賜りました。この地域に限らず全国 の皆様からの気持ちの込められたご寄付や、マスク、ガウン などの医療資材をはじめ、食べ物、飲み物、サプリメントなど で絶えず力を頂いてまいりました。

地域の方からの激励の横 断幕や、多くのお手紙・ビデオ・寄せ書きなどで、職員一同、本 当に勇気づけられ業務を続けてくることができました。皆様にはあらためて深く御礼申し上げます。また現在の当院での 感染対策の取り組みを伝えることで少しでも皆様のお役に立つことができれば嬉しく思います。

永寿総合病院

職員数:950人 医師数:121人/看護師数:295人 外来患者数(1日平均):780人

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