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地域に必要とされる医療グループであり続けるために 戸田中央メディカルケアグループ(TMG)の「経営を強くする」とは

2026年09月15日

地域に必要とされる医療グループであり続けるために 戸田中央メディカルケアグループ(TMG)の「経営を強くする」とは

120を超える関連施設を持つ戸田中央メディカルケアグループ(TMG)。グループ在籍32年、本部で総局長室室長を務める橋本敦氏に、「経営を強くする」という言葉の真意から、データ活用による経営の可視化、職員への徹底したケア、そして地域連携の未来像まで、病院経営の本質を伺いました。

利益の最大化よりも、「医療を止めない力」を持つこと

私が当グループに入職したのは32年前。配属された戸田中央総合病院は当時400床余りの規模で、外来や当直など現場の最前線で10年ほどを過ごしました。29歳のころ、「もっといろいろやりたい」という希望を出したことがきっかけで、新築移転する病院の医事課所属長に就任しました。その後は急性期から慢性期、産科、小児科、新規立ち上げまで、一通りの医療機関を経験し、現在は本部の総局長室室長を務めています。

当グループは現在、120を超える関連施設を持っています。グループの理念は「愛し、愛される」。患者さんからも職員からも愛され、こちらからも愛すということです。
この理念は60数年間一度も変わっていません。方針やスローガンは毎年変わっても、理念だけは変わらない。入職当時から繰り返し言われてきたことが、今も息づいています。
そのため「利益を最大化する」という言葉は、あまりなじまないと感じています。それよりも、今ある医療を止めない力を持つこと。それがTMGの「経営を強くする」ということだとずっと考えてきました。

全国では病院が閉院したり、合併を余儀なくされたりするケースが増えています。経営が安定しているからこそ、地域に必要な医療を提供し続けられます。逆に言えば、経営が安定していなければ、人材育成も、設備投資も、働き方改革も、何もできなくなり、結果として患者さんに不利益をこうむらせてしまいます。
「経営の強さ」とは、地域と患者さんと職員を守る力、そのものです。

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データは現場を強くするためのツール

120超の施設を持つ当グループの強みは、圧倒的なデータ量です。横断的に分析できるからこそ、うまくいっている施設とそうでない施設の要因が明確に見えてきます。 


各施設のシステムはすべて同一で本部と繋がっており、各施設が朝に入力し10時ごろには本部にデータが揃います。RPAで自動集計・資料化し、11時前には幹部が確認できる状態になります。6〜7名が毎日120施設のデータをチェックしていますが、各施設がデータを個別に送ってくるわけではなく、こちらから能動的に見にいける仕組みなので、現場の負担もほとんどありません。
異常値の検知にはルールを設けています。稼働率を色分けで管理し、赤が続けばコロナ陽性者数と照合してクラスターの可能性まで推測したうえで事務長に連絡します。 救急の受け入れ件数が前年比・前月比で一定の割合を下回った施設も同様に、3日連続で数値が下がっていれば、何か起きていると判断して介入します。データで予兆を掴むことで、事前に手を打つことができる仕組みづくりをしています。

これからの経営指標に、人材とプロセスの視点を

病床稼働率・診療単価・平均在院日数といった従来の指標は当然重要です。しかし今後は、それだけでは足りないと感じています。
まず必要なのが人材指標です。 離職率、有給取得率、残業時間などの数字も経営指標と並べて管理していかないと、収入が上がっていても人の状態が悪ければ稼働は落ちます。人が辞めれば補充のコストがかかり、慣れない人材が増えれば生産性も下がる。その逆もしかりで、人材の状態が安定すれば、おのずと現場の質と稼働が上がります。


次にプロセス指標です。紹介率・逆紹介率・入退院支援の介入率といった「動かす系」の数字を見て初めて、改善の打ち手が見えてきます。結果の数字だけを追うのではなく、その結果を生み出すプロセスを経営に転換できるかどうかが、これからの病院経営の分岐点になると思います。


実際、経営が好調な施設の共通点として見えてくるのは、IT(Inpatient revenue per patient)率(入院単価)が高く、紹介からの入院・手術件数が多いことです。IT率が高い施設は医師1人あたりの生産性が高く、それだけ密度の濃い医療が提供できています。さらに紹介からの入院は1人あたりの診療単価も高く、収入への貢献度が大きい事実があります。
救急車を20台増やすより、手術目的の紹介患者を1人確保した方が収入インパクトははるかに大きいのです。

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そのためには手術できる体制を整えることが前提になりますが、それが実現できている施設は、やはり地域連携がしっかり機能している施設でもあります。

地域連携は、地域の中で役割を問い続けること

前述のとおり、経営の強さは地域連携の質と直結しています。単に紹介患者を確保するという話ではなく、地域の中で自分たちがどんな価値を発揮できるかを問い続けること。それは「経営そのもの」と言っても過言ではありません。
地域連携室は「1部署の業務」ではなく、病院全体で取り組む重要な戦略部門です。選ばれる病院になるためには、地域連携が最も必要な機能の一つだと確信しています。


連携業務はまだ属人化しやすく、施設によって結果にばらつきがあるのが現状です。ただ、地域連携は収益貢献を数値で示しやすい部門でもあります。紹介患者をどれだけ増やすか、そのためにどんな活動をどれだけ行うか等、他の業務より数値に落とし込みやすいと思います。事務職やソーシャルワーカーが売り上げをつくるという世界観が院内で共有されれば、連携室の存在価値は大きく変わります。


育成面では、本部に「地域医療連携支援部」を設け、月1回「地域医療連携部会」を開催しています。また年4回の「TMGマネジメント強化研修会」では、営業ノウハウや数値管理、マネジメント力まで幅広く鍛えます。この研修のもう一つの狙いは、「連携担当者の存在価値を高める」ということです。本人のモチベーションが上がり、院内での貢献度が認められ、主体的に動けるようになれば、組織全体の底上げになると強く感じています。


さらに実践的なOJTとして、本部の地域連携支援部長がクリニックへの営業に同行します。25年以上この分野一筋の部長が「まず雑談から入る」「この先生はテニスをされるから、まずそこから話す」など、話し方を実地で伝えています。

職員を守り、育て、応援する力

「職員を大切にする」というのは、TMGを語るうえで欠かせない言葉です。グループであることの最大の強みの一つは、職員の異動の選択肢が広いことです。一つの病院で「この部署はもう難しい」となっても、グループには多くの施設があります。職員がグループを辞めずに働き続けられることは、グループとしての優しさだと思っています。

前向きな異動も同様です。職員は年に1回、希望を申請することできます。「もっと規模の大きい施設で働きたい」「介護施設で働いてみたい」「事務長職をやってみたい」そういった希望が全職員(医師以外は100%入力)から上がってきて、本部の人事がマッチングを検討します。私自身も29歳のころ、新築移転する病院の医事課所属長に就かせてもらったのはそのおかげです。あのときのチャンスが今の自分をつくっていると思っています。


システム化されたことで、退職リスクも早期に検知できるようになりました。「半年以内に退職を考えている」という入力が来た瞬間に赤信号が灯り、すぐに事務長や看護部長が面接に入ります。病棟別・部署別で退職希望者の比率を見ることで、所属長の問題なのか、医師との関係なのかまでピンポイントで特定できます。この仕組みができてから、組織課題の可視化が格段に進みました。

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職員を大切にする制度が好循環につながる

職員を大切にすることの1つとして、数年前に年間休日を123日にしました。医療業界は111日前後が相場でしたから、一般企業並みまで引き上げました。これは採用面でも、在籍職員の定着面でも、絶大な効果があったと感じています。
休日を増やすと1人あたりの稼働が減る、人件費が増える、という懸念は当然あります。ただ半年ほどかけてシミュレーションしてみると、「今いる人材が辞めなければ問題ない」という結論になりました。123日にすることで離職が減り、採用もしやすくなれば、増員コストをかけなくても運営できます。休日を増やすことは職員への投資であり、最終的には離職防止という経営合理性に結びついています。


また、グループ内の施設に限って副業を解禁しました。収入補完という側面はもちろんありますが、他の施設で働くことで視点が変わり、「あの施設ではこんな書類を使っていた」「この仕組みを当院でもやろう」という形でノウハウが組織内を循環していきます。グループ全体の活性化につながっている実感があります。

特に事務職の若い世代には、宿直・当直の副業が好評です。仕事終わりの夜7時から翌朝7時まで宿直をこなすと1万8000〜2万円ほどになります。月に数回こなせば7〜8万円の収入が増える計算です。「5万円、10万円の差で転職を考えることは普通にある」その現実を正面から受け止めた制度です。

スタッフが自走し始めた、グループウェア導入の効果

もう一つ大きな転換点となったのが、2年前に刷新したグループウェアです。現在、非常勤医師を除く1万4000名が利用し、週1回以上アクセスする職員は70%を超えています。チャットルームは3万1000ルームを超えました。


正直当初は「情報発信ツール」くらいの感覚で入れました。ところが1年ほど経つと、現場が勝手に動き始めました。本部からの指示がなくても、各病院が自分たちの活動をアップし、他の施設がそれを見て「うちもやろう」と動いていきます。これは情報格差が解消されたからだと思っています。職員が同じ情報を持つことで、「経営者目線で考えてほしい」という要求が初めて現実味を帯びてくる。情報を開示しないまま当事者意識だけ求めるのは無理な話です。


グループウェアの導入と運用は、私ともう1人の計2名で立ち上げました。コストも小さく、でも効果は絶大でした。成功事例として手応えを感じています。

指示ではなく並走する。本部と現場の関係

職員への投資と並行して、本部と現場の関係づくりにも力を入れています。本部の方針をいかに現場に浸透させるかは、規模が大きくなるほど難しくなる課題です。


そこで機能しているのが、本部の局長4名が120施設を分担して担当するという仕組みです。各局長が基本的には月1回施設に赴き、データを持参したうえで経営会議に参加します。「人の問題なのか、ものの問題なのか、もっと根本的な問題があるのか」を現場で確認し、必要であれば私たちへの指示につなげます。現場の三役だけで問題解決しようとするのではなく、本部の上位職が直接入り込むことが一つのポイントです。

データと人材と地域連携を、一つの循環にしたい

今後さらに強化していきたいのは、「データ」「人材」「地域連携」この3つを融合させることです。データで課題を可視化し、人材がそれを実行して、地域と繋がる価値を作る。この循環をうまく回せる組織にしていきたいと思っています。
本部の存在意義は、指示を出すことではありません。現場が主役であり、現場が成果を出せるような支援機能を整えることが、本部のあるべき姿だと思っています。

地域から本当に必要とされる医療グループになること。それがTMGの目指す姿であり、私自身がこの仕事を続ける理由です。

戸田中央メディカルケアグループ

戸田中央メディカルケアグループ(TMG)は1962年創立、埼玉県戸田市を拠点に病院・介護老人保健施設・クリニックなど多数の施設を運営する医療グループです。 基本理念「愛し愛されるTMG」のもと、地域の方々に愛される医療・介護の実現を目指し、良質な医療とともに健全経営、人財育成、社会貢献にも力を注いでいます。

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