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鹿児島の医療と暮らしを支え、未来をつくる。2病院が連携し中心となるまちづくり

2024年07月02日

鹿児島の医療と暮らしを支え、未来をつくる。2病院が連携し中心となるまちづくり

鹿児島市高麗町の複合施設キラメキテラスは、「30年後の鹿児島への贈り物」をコンセプトとした街づくり構想により誕生しました。キラメキテラスは区画内にマンションやホテル、小売店、そして役割の異なる2つの病院が存在する、1つの街のような複合施設です。キラメキテラス内にある、公益社団法人昭和会いまきいれ総合病院は、高度急性期機能を備える医療機関です。一方の医療法人玉昌会キラメキテラスへルスケアホスピタルは、在宅医療や介護サービスも行う回復期・慢性期病院です。両者が”緩やかなパートナーシップ”で連携し、地域の医療を支えています。医療と地域の将来を見つめ、生活に溶け込み鹿児島の人々が集う場所として存在するキラメキテラスの、2病院の連携による医療体制や、街づくり構想の現在と未来について、公益社団法人昭和会今給黎理事長と、医療法人玉昌会キラメキテラスヘルスケアホスピタル田島副院長に伺いました。

人口減の時代、鹿児島の医療と雇用を守る

田島副院長:キラメキテラスは、地方創生に貢献する「まちづくり構想」として、鹿児島市内中心部の旧鹿児島市交通局跡地に誕生しました。2つの病院のほか、ホテル(シェラトン鹿児島)、分譲マンション、小売店が集まっており、暮らしと健康を支えています。キラメキテラスは2023年に全面オープンしましたが、先行していまきいれ総合病院とキラメキテラスヘルスケアホスピタルは2021年にこの地に移転開院しました。

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キラメキテラスヘルスケアホスピタル

今給黎理事長:当初の計画では単独移転を考えていましたが、最終的に玉昌会や南国殖産と交通局跡地の再開発に乗り出しました。共同事業を始めることになってコンソーシアム会議に参加し、はじめて街づくりの発想を得たのです。せっかく新しいビジョンを持つなら、国の政策にある地域包括ケアシステムや、鹿児島市の構想にも沿った形で進めたいと考えるようになりました。そして現在の形ができあがり、地域の医療を切れ目なく支えるため、いまきいれ総合病院とキラメキテラスヘルスケアホスピタルは”緩やかなパートナーシップ”で連携しています。

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いまきいれ総合病院

田島副院長:現在、鹿児島県の人口は約154万人です。最多であった1955年の約204万人から約50万人減少しました。2045年の推計人口は約124万人で、今後20年間で約30万人の人口減少が予測されています。そして、鹿児島県の人口あたりの病床数は全国平均の約2倍あり、鹿児島市では約20%の人が医療ヘルスケア分野で働いています。病院は医療を提供し地域住民の健康を守ることはもちろんですが、雇用を守るという役割も果たすことができます。2040年を見据え、病院として地域の課題解決に貢献していくべきだと考えています。

今給黎理事長:人口動態に伴って医療も変わっていきます。私は当院の3代目理事長ですが、移り変わりを感じています。これまで当院は急性期に特化してきましたが、いわゆる人口ボーナス期にあったから成立したのでしょう。今は医療側が提供したい医療だけではなく、地域に求められる医療を意識するべき時代です。当院は救急、がん治療、周産期医療を3本柱にしていますが、今後は経営戦略として、地域に求められる医療をもっと考える必要があります。その点において、キラメキテラスの観光・商業と連携した街づくりや、2つの病院が連携した切れ目のない医療の提供は、地域における役割を果たしていく上で重要だと感じています。

医療機能と人、両面で連携することで患者さんにより良い医療を

今給黎理事長:いまきいれ総合病院は移転前450床、現在は350床の急性期病院です。今、移転前のおよそ1.4倍、約5000台の救急車を受け入れています。私たちは回復期、慢性期を担う医療法人玉昌会キラメキテラスヘルスケアホスピタル(以下、玉昌会)とシームレスに医療を提供するため「アトリウム」と呼ぶ通路で2つの建物を繋いでいます。

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アトリウム

田島副院長:キラメキテラスヘルスケアホスピタルは、回復期機能102床、慢性期機能96床の198床で、リハビリテーションや透析治療に力を入れています。訪問診療や介護サービス、健診事業も行ってきました。私たちは、いまきいれ総合病院と連携し、患者さんの転院と紹介、医療機器の共同利用、健康診断、人間ドック、合同カンファレンスなどで両院が協力しています。転院については、いまきいれ総合病院が救急を受け入れ、キラメキテラスヘルスケアホスピタルが患者さんの転院先として受け皿となるイメージです。受け入れについては基本的に断らない方針としています。連携室から打診しやすいように医師の受け入れ担当ローテーション表を作成しました。問い合わせがあれば、半日以内に返事をするルールです。やむを得ずお断りする場合は件数や理由を経営会議で確認し、多ければ医局に伝えています。当院に入院する患者さんの約40%はいまきいれ総合病院からの紹介ですが、60%は地域の他の病院からの受け入れのため、すべての受け入れをスムーズに行えるよう、受け入れ体制を整えています。

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合同カンファレンスの様子

今給黎理事長:鹿児島市は急性期病院が多く、後方支援病院が足りません。玉昌会との連携はお互いにメリットがあります。例えば、急性期病院である当院が外来支援し、玉昌会にこれから増えていく在宅治療を紹介する体制を考えています。当院は総合病院で選定療養費の問題があり、玉昌会との外来連携は病院と患者さん双方の役に立っています。

田島副院長:外来連携の部分では、いまきいれ総合病院で働いている専門医が週3日、当院の外来で診察しています。いまきいれ総合病院の外来は患者数も多く、医師負担も増加しています。当院でDo処方に近い状況にある方を対応できる状態にしていくことを、協力しながら進めています。徐々によい体制になってきましたが、当院への外来移行促進と質向上のために、これからは電子カルテ情報連携を実現したいと考えています。今給黎理事長:急性期と慢性期では文化が違うので、2つの組織をシームレスにつなぐ仕組みづくりが大切です。玉昌会の診療科と積極的にカンファレンスを行い、患者さんの情報共有をしています。転院や紹介をスムーズに行えるようになり、スタッフの医療スキルの向上につながりました。
将来、玉昌会との連携は人材確保にも役立つと考えています。例えば、急性期病院のスタッフがライフイベントで働き方を変えたくなったら隣の慢性期病院に移り、子育てが落ち着いたら急性期病院に戻るパターンも考えられるでしょう。自然に人が集まる医療環境を作っていきたいと思います。

人口減の時代、鹿児島の医療と雇用を守る

今給黎理事長:キラメキテラスで地域とつながる活動に協力的なスタッフが増えている印象です。例えば、鹿児島市が後援するナポリ祭に、玉昌会と共に救護班のナースを派遣しましたが、受け入れられていました。地域とつながりを持ち、盛り上がっていきたい私たちの思いが、スタッフに少しずつ浸透しているのを感じます。

田島副院長:地域との繋がりの面では、私たちは、姶良市で回復期・慢性期病院のほか、グループ会社でジムやカフェ、スパを提供する複合フィットネスクラブWellBeClubを運営するなど、医療を中心に幅広い事業を手掛けてきました。鹿児島市とは生活圏が違うので、今後どのような形で地域と関わっていけるか模索中です。

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WellBeClub

今給黎理事長:キラメキテラスの街づくりの構想には、患者さんへの啓蒙活動も含まれています。医療を受ける側にも知識がないと、正しい受療行動につながりません。例えば、施設のデイケアに通い、かかりつけ医が在宅で看取る話をしていても、状態が悪くなると救急車で急性期病院に搬送するケースがあります。これからは多死社会です。患者さんにACP(AdvanceCarePlannning)を伝え、万が一のときにどうしたいか本人を主体に話し合い、意思決定する仕組みを広めたいと思います。今年、働き方改革が始まりました。急性期病院の職員の負担軽減のためにも、医療のあり方を誰もが考える取り組みが必要です。地域住民の方々とのつながりも重要ですが、地域医療においては、地域の医療機関との連携が欠かせません。そのため医療従事者同士のつながりによる街づくりも考えています。当院は患者さんを紹介してくださる開業医の先生方と連携の会を開いてきました。移転後、コロナ明けから玉昌会と共同で連携の会を再開しています。

田島副院長:2023年11月に、昭和会と玉昌会と共同で開催した地域連携の会には、両院のスタッフを含めて約250名が参加しました。私たち回復期・慢性期病院が関係性を強化すべきは転院後の患者さんを紹介してくれる急性期病院です。急性期病院との連携は、当院の職員にとってもプライドを持って働くモチベーションになっています。加えて、退院支援をしてもらう後方の介護施設とのつながりも重要です。開業医から病院、介護施設がつながることによって一括化した医療の輪を、連携の会で紹介できた意義は大きいと感じました。さらに、私たちが加盟するコミュニティ協議会に声をかけて、地域住民の方を20名ほど連携の会に招待しています。キラメキテラスはコロナ禍でスタートしたので、地域の方に事業をアピールする機会が作れませんでした。2つの病院が連携していると知らない方もいたので、お披露目して親しみをもっていただけたのは収穫でした。2024年5月、いまきいれ総合病院の昭和会、南国殖産グループの南国ホテルズ、私たち玉昌会で、キラメキテラスを構成する3企業体でヒューマンライフライン協議会を設立しました。近隣の医療機関を含め、企業や地域の方とのコミュニケーションをより深めていき、一体となってよりよい地域づくりを行いたいと考えています。

”鹿児島の六本木ヒルズ”へ。街を盛り上げ、医療と地域、行政を変えたい

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田島副院長:私はキラメキテラスを「鹿児島の六本木ヒルズ」にしたいとよく伝えています。地域の人が日頃から通っている施設に病院があるイメージです。病院の連携だけではなく、キラメキテラスを核として地域を発展させれば、私たち医療機関の持続性にもつながります。六本木ヒルズは、用事がなくても買い物をしたりコーヒーを飲んだり、散歩にくるお客さんが集まっています。キラメキテラスも、地域の皆さんが自然に集まりたくなるような場所にしていきたいです。イルミネーションを飾るようなイベントを地域と企画するのも1つのアイデアです。実際に、シェラトン鹿児島など周辺施設との定期連携会議を行なってキラメキテラスの可能性を考えており、今後はマンションともより連携を進めていきたいと考えています。これまで病院は専門集団として勝負してきましたが、働く人や患者さんを確保するためには外に出て、街を盛り上げていく意識が大切です。病院は暗いところではない、という感覚が社会に広がっていくと、医療に対する考え方も変わるでしょう。いまきいれ総合病院のような急性期病院との連携で幅広い患者層に、よりよい医療の提供が実現できると期待しています。

今給黎理事長:日本全体が医療提供の大転換期です。社会保障費を抑制するため、市民向けにヘルスケアの知識の発信や、健康寿命を延ばす予防医学の推進も考えています。人口減と予算の削減に対して、ICTを利用して利便性を維持する仕組みづくりも可能です。今後は民間だけではなく、行政も巻き込んでいきたいと考えています。鹿児島市の県庁所在地でも人が集まる地区と人口流出が進む地域があり、先々で手を打っていく必要があるでしょう。今回、コミュニティ協議会を作ったのも、街づくりに活路を見出したい思いからです。私たちをモデルケースとして、行政のあり方に影響を与えられるような発信も考えています。

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