2021年04月01日
新型コロナウイルスの影響もあり医療業界のIT化が大きく進んだように感じます。
当社でも1年前は医療関係の方々との打ち合わせをオンラインで行うことの方が稀でしたが、現在はほぼオンラインでの実施となっています。みなさんの病院でも院外・院内問わずオンラインの打ち合わせが一般化してきたのはないでしょうか?これは、IT化が遅れていると言われる医療業界にとって大きな進展であったと思います。
特に注目されるのはオンライン診療だと思いますが、オンライン診療以外にも医療業界にさまざまな分野でDX※の波が押し寄せています。
地域医療連携の分野においても同様で昨今多くの便利なITツールが誕生しています。
このようなサービスを上手く病院が活用することで、地域医療連携がより効果的かつ効率的に促進されることを期待しています。
※DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略。一言でいうと「企業がデータやデジタル技術を活用し、組織やビジネスモデルを変革し続け、価値提供の方法を抜本的に変えること」を意味します。
どちらも病院経営にとっては大切ですが、病院収益の源泉が「患者の来院」であり、これが”地域に信頼され求められていること”という事実を捉えると、受診の質と数の向上、つまりは前方強化なくして後方強化はなし得ないのではないか?と感じます。
もちろん、退院時の業務効率化、入院料や機能評価係数、加算・管理料といった項目は医療の質の観点から極めて重要です。
しかし、加算や管理料を取るためには労力を厭わないが、患者を集める活動を徹底して行っている病院はまだまだ数える程度しかありません。
医療の世界は、公定価格という世界で運用されているので、基本的には一定の収益は出せるという非常に安全性の高い業界であったとも言えます。しかし、「良い医療をしていれば、必ず患者さんに選んでもらえる」という時代が終わろうとしています。
このことは、コロナの影響で多くの病院が実感したのではないでしょうか?医療費抑制はこれからもますます厳しくなることを考慮するのであれば、今から「選ばれる状態」を作り出し盤石な病院経営基盤を築くことが求められるでしょう。
そのため今回のコラムでは、あえて前方支援における泥臭いお話に焦点を当ててお話したいと思います。前方連携をシンプルに一言で言うと、「自院の強みを地域医療機関に訴求して紹介患者件数を増やす」です。
これは一般企業におきかると、「自社のブランディングを行い、営業と宣伝活動を効果的に行い顧客を増やす」ことに当たります。
つまりは、病院における前方連携とは、営業と広報活動の強化であり、それによりどれだけ地域医療機関との関係性を向上できたか、どれだけ紹介患者を獲得できたかが重要になります。
規模が大きい急性期病院であれば、地域の開業医が病院名も知らないということは少ないと思われます。
しかし、特徴や状況に関する詳細までを知っているかというと決してそうではありません。そのため開業医は、まだまだ自身の経験と繋がりから紹介先を選定していることが多いことが予測されます。
このようなことから開業医は近隣病院に対する知識を持ち合わせていないことを前提に考えるべきであり、如何に「知名度」ではなく「認知度」を向上できるかが重要となります。また多忙な医師が多いため、よほどの関係性ができていない限り、開業医が自らが病院情報収集することは期待できないため、病院主体となって積極的に情報発信することはもちろんのこと、どのように届けるかまでを設計することが求められています。
フェーズごとのターゲットと目的を明確にして、強化すべきポイントを抑えて施策の隔たりをできるだけ無くしましょう。
上位2割と更に関係性を深めるためにとる手法は?下位8割を上位2割に引き上げるためにとるべき手法は?未開拓(新規)を下位8割(紹介実績あり)に引き上げるためにすべきことは?など取り組む活動ごとにおいて、ターゲットと目的を明確にする必要があります。
例えば、広域のクリニックから紹介患者を増やしたいと考えた場合、まずは興味を持って頂くことがスタートになります。
しかし、広域となると対象となるクリニックも多くなるため、訪問活動だけで開拓することは困難ですし、興味をもってもらうことを目的とした場合、費用対効果が良いとは言えません。
広域を対象とするのであれば、一度に多くアプローチすることができるダイレクトメールなどを積極的に活用した方が有効的でしょう。
このような顧客(クリニック)の状態に合わせて、戦略を考えると、訪問は既に紹介実績があるクリニックや近隣の新規開院クリニックなどにターゲットを絞って活動すべきことが明確になってきます。それぞれの施策に対しての目的の共通認識を部署内で持つことにより、成果が上がりやすくなりますし、効果検証しやすくなります。
訪問は効果的な手法ですが、ただただ訪問すれば良いわけではもちろんありません。営業活動で成果を上げるにはとてもシンプルな方程式があります。
訪問の数×訪問の質=成果
訪問の数を増やせないのであれば、訪問の質を担保しなければ、最大の成果を得ることが難しくなります。
訪問時の目的を明確にしているか、第1の目的が達成できない場合には、第2、第3の目的まで用意して臨んでいるか。ということが大切になります。
これには訪問のためのトークスクリプト※を作成すると効果的でしょう。目的が明確になっていない場合、訪問時のトークが均一化できていない場合は、訪問の質を担保することが、困難であり訪問後の評価も感覚値となってしまいます。
成果が出ない場合は、その人の営業能力による問題なのか?訪問数なのか?という考えに陥り、質の改善に目を向ける機会が少なくなります。1回のアクションで最大の成果を得ることは、訪問に限った話ではなく、地域勉強会、返書郵送、広報誌など、どのアクションにおいても同様です。
成果を上げるにはどうすれば良いか?の視点を持ち、一石二鳥、いや一石三鳥の結果を得れるようにして頂きたいと思います。
※トークスクリプトとは、営業活動において、顧客に対して「どのような内容で話をするのか」などをあらかじめ決めたマニュアル(営業台本)のことです。この営業台本の質が、顧客獲得の伴となるといっても過言ではありません
訪問にしてもメルマガにしても、効果測定がとても重要です。これがないとナレッジ蓄積や最適なタイミングでのアプローチが実現できません。訪問活動の内容を逐一管理者がチェックして、フォロー対応すべきことがあれば迅速に対応できているでしょうか?
スピーディーに対応することで顧客満足度を向上させることができます。紹介実績がある医療機関を訪問するのであれば、迅速かつ質が高い対応が重要となります。情報共有を円滑にするためには、CRM※のようなツールが有効であると言えます。
※CRM(Customer Relationship Management)です。主な機能は、顧客情報や営業活動管理です。顧客との良好な関係を維持・構築するために使用されるシステムのことです。
| 経営者のメリット
経営者にとって一番のメリットは、「病院の業績達成能力が向上する」ことです。患者獲得のために必要な営業活動において把握したい情報をシステムが自動的に可視化してくれることで、病院全体の業績達成能力が向上します。また、営業管理が優れた担当者のマネジメント、分析ノウハウをCRMツールに実装することで全体の生産性の向上を見込みことができます。
| 管理者のメリット
訪問内容などの管理が圧倒的に効率化されます。Excelや紙の管理だと、過去の履歴が追えず煩雑になってしまいます。
そもそも管理をしていない場合は、勘や経験、記憶に頼ることしかできませんが、CRMがあればデータに基づいた最適な営業アプローチを実 践することができ、情報共有が円滑になることで、管理者はフォローや改善に更に注力することができます。
また、管理者が見たいレポートや抑えたいポイントをすぐに可視化できるので、会議の準備時間なども大幅に短縮することができます。
| 訪問担当者のメリット
訪問担当者にとっては自身の目標達成まで道のりが可視化されることで効率的な営業活動を行えるようになります。
それに加え、過去の応対 履歴やつながりが可視化されることでが対応の質向上や、引継ぎをスムーズに行うことができます。
更にシステムを通じて活動報告を行える ので、事務作業などの業務負担を軽減することができます。
このようにCRMの活用には多くのメリットがあります。 業績を上げている多くの一般企業においてもCRMが導入されています。
それだけ、情報共有とナレッジの蓄積が重要だということです。医療業界で は電子カルテをはじめ、患者情報の蓄積や管理といった分野においてはIT化が発展してきましたが、別の軸として患者獲得に関する情報の蓄積にも 目を向ける時期が来ていると言えます。
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