Doctor's interview
NOBUTAKE
SADAMASA
武田病院
脳卒中センター/脳神経外科
部長
地域医療を支える使命を胸に、
一刻を争う脳卒中診療に向き合い続ける
武田病院脳卒中センター・脳神経外科は、先進的かつ高度な医療を基盤に、地域から信頼される脳卒中診療を大切にしています。京都駅に最も近いPSCコア施設として、京都市全域からの救急要請に「断らない救急」として応じてきました。2025年11月、SCU(Stroke Care Unit)を6床から9床に増床し、さらに受け入れ体制を強化しています。
これからも「困ったときは武田病院」と地域から信頼していただけるよう、使命感を持って脳卒中診療に向き合ってまいります。
地域連携の要として、脳卒中急性期医療を担う
当院は、「一次脳卒中センター(PSC:Primary Stroke Center)」および「PSCコア施設」に認定され、地域における脳卒中急性期医療の中核を担っています。一次脳卒中センター(PSC)は、日本脳卒中学会が定める基準に基づき、24時間365日体制で脳卒中患者さんを受け入れ、rt-PA静注療法などの急性期治療を迅速に行える医療機関です。
PSCコア施設には、PSCの機能に加え、地域全体の脳卒中診療を支える役割が求められます。当院では、rt-PAで再開通が得られない血栓に対し、カテーテルで血栓を除去する「機械的血栓回収療法」を実施できる体制を整え、他施設からの要請にも常時対応しています。
また、地域医療機関と連携し、「ドリップ・シップ・リトリーブ」にも対応しています。脳梗塞が疑われる患者さんを、まずrt-PA静注療法が可能な医療機関へ搬送し初期治療を開始、その後、血栓回収療法が必要な場合には、点滴を継続したまま当院へ転送し、速やかに高度治療を行います。血栓回収療法は、日本脳神経血管内治療学会が認めた医師(当院脳神経外科スタッフは全員同学会専門医資格を有しています)のみ実施可能であり、当院はこうした役割分担を通じて地域医療に尽力しています。
さらに、近隣の医療機関や介護施設と当院を結ぶ病院救急車(モービル)を新たに整備し、緊急時には当院スタッフが同乗して対応可能です。今後も、より多くの脳卒中患者さんを受け入れ、地域の先生方と連携しながら診療体制の強化に努めてまいります。
患者さん一人ひとりに適した高度な脳神経外科治療を
私たちは脳神経外科として、血管内治療から開頭手術まで幅広い選択肢を備え、患者さん一人ひとりに適した高度な治療を提供しています。私自身、日本脳神経血管内治療専門医のほか、日本脳卒中の外科学会技術指導医の資格も有しており、血管内治療と開頭手術の双方に携わってきました。加えて、日本脳神経外傷学会認定指導医および同学会評議員として、脳神経外傷の診療にも力を入れています。
治療方針の決定にあたっては、手術ありきではなく、ガイドラインに基づいた複数の選択肢を提示し、患者さんご本人の意思を尊重する姿勢を大切にしています。例えば脳動脈瘤では、破裂率や治療に伴うリスクを丁寧に説明したうえで、治療を行うかどうかを患者さん自身に判断していただきます。経過観察を希望される場合には、UCAS JAPAN(日本未破裂脳動脈瘤悉皆調査)のデータをもとに、年間破裂率や治療のメリット、合併症リスクについて具体的に共有しています。
ご紹介いただいた患者さんの経過観察中は、血圧管理など日常的な健康管理を、かかりつけの先生にお願いしています。地域の医療機関と役割を分担しながら、患者さんを長く支えていくことが、私たちの診療方針です。
先進的な脳動脈瘤治療で、くも膜下出血を防ぐ
脳動脈瘤に対しては、これまで動脈瘤の根元で血流を遮断するクリッピング術が標準的な治療として行われてきました。その後、1990年代にカテーテルで血管内からコイルを充填し、血流を遮断するコイル塞栓術が登場し、現在では主流の治療法の一つとなっています。
近年では、フローダイバーターと呼ばれる金属製の細かい網目構造をもつ筒状ステントを、動脈瘤が存在する血管に留置し、動脈瘤を血栓化させる方法も用いられるようになりました。また、WEB(Woven EndoBridge)と呼ばれる、袋状のデバイスを動脈瘤内に留置する治療法も選択肢の一つです。
当院では、これらの治療法を症例ごとに使い分け、安全性と治療効果の両立を重視しています。これまで培ってきた血管内治療の技術を生かし、複雑な症例にも対応しています。さらに近年、海外で有効性が報告され、通常より短時間での治療が可能とされる新しいデバイスも発表されています。当院も可能な限り早く導入していきたいと考えています。
連携力で実現するワンストップの脳卒中治療
当院では、医師だけでなく、看護師、薬剤師、検査技師、リハビリスタッフなど多職種が連携し、脳卒中の急性期から回復期、その後の生活までを見据えた診療を行っています。急性期治療においては、迅速さと安全性の両立を重視し、院内での役割分担と連携体制を整えています。
検査科では専用の採血セットを整備することで、救急搬送後も速やかに検査結果を確認できる体制です。rt-PA静注療法を行う際には、医療事故防止の観点から、薬剤師が救急外来に駆けつけ、医師・看護師とともにトリプルチェックを実施しています。こうした現場レベルでの取り組みが、急性期治療の安全性を支えています。
急性期を乗り越えた後は、早期からリハビリを開始し、回復期へ円滑につなぐことを重視しています。発症直後は患者さんの不安も大きいため、医師、看護師、理学療法士など多職種が連携し、身体機能の回復だけでなく、心理面にも配慮した支援を行っています。
回復期以降については、武田病院グループの十条武田リハビリテーション病院と連携し、同院の医師が当院のカンファレンスに参加しています。患者さん一人ひとりの状態に応じたリハビリ先の選択が可能で、安心して回復期へ移行できる体制です。
さらに、近年は回復期から在宅で生活する「生活期(維持期)」をどのように支えるかが重要なテーマとなっています。京都大学附属病院前病院長の宮本享先生を中心に、連携主治医制やかかりつけ医制を多職種も含めて再構築する動きが進められており、当院でも生活期を見据えた支援に取り組んでいます。
患者さんとご家族に寄り添うサポート
当院は、脳卒中の患者さんやご家族を幅広く支える取り組みとして、「サンナイ会」を設置しています。脳卒中の予防や再発防止に関する情報をニュースレターで発信するほか、公開講座の案内などを行い、「脳卒中にならない、手遅れにならない、脳卒中に負けない」をスローガンに活動しています。
また、2022年には「脳卒中相談窓口」を開設し、治療後の不安や生活上の悩みなど、診療だけでは拾いきれない声に対応しています。患者さんやご家族が気軽に相談できる窓口として活用されています。
一般の方に向けて開催する公開講座では、患者さんや地域の開業医の先生方にもご協力いただき、正しい理解を深める機会としています。こうした活動を通じて、地域全体で脳卒中を支える体制づくりを進めています。
患者さんの回復を原動力に、脳神経外科医としての歩みを続ける
私が医師を志した原点には、家族の病があります。小学校を卒業する頃、厳格だった祖父が認知症を発症し、これまでとは違う言動を取るようになりました。その後、約2年の闘病を経て亡くなりましたが、「なぜ人は病気によって変わってしまうのか」と考えた記憶があります。家族の病や入院を通じて身近な存在となった医師に憧れ、医学の道を志しました。
脳神経外科を目指したのは、学生時代に高次脳機能を扱う教室で研究する機会を得た際に、認知症の話題を出したところ、「認知症は治らないが、脳神経外科の病気は治るものが多い」と言われ、強く心を惹かれました。その後、臨床実習などを通じて脳神経外科医の姿に触れ、この道に進む決意を固めました。
脳神経外科はハードな場面も多い診療科ですが、患者さんが回復してご自宅へ戻られる姿を見ることが、何よりの原動力です。片麻痺や意識障害があった患者さんが、手術後により改善し、短期間で日常生活に戻られることもあります。また、くも膜下出血で生死の境をさまよっていた患者さんが、治療を経て回復される姿に立ち会うたび、この仕事の重みとやりがいを実感します。
外科手技の習得には、長い年月をかけた鍛錬が欠かせません。それでも、「誰かが担わなければならない医療がある」という思いを胸に、脳神経外科医としての研鑽を続けています。
よりよい脳卒中診療を、地域とともに
脳卒中診療において重要なのは、発症した患者さんの治療を適切に行う医療機関へいかに早くつなげるかという点です。rt-PA静注療法は発症から4.5時間以内が適応となり、早期のご紹介が予後を大きく左右します。また、rt-PAの適応とならない場合でも、血栓回収療法によって改善が期待できる症例があります。
診療の中で少しでも違和感を覚えられた際には、どうぞ遠慮なくご相談ください。当院では、脳卒中に関わる治療を総合的に行う体制を整えておりますので、信頼してお任せいただければと思います。
急性期治療を担った後は、患者さんを再び地域の先生方へお戻しすることを基本としています。患者さんは、当院よりも長く地域の先生方のもとで診療を受けることになります。再発予防は極めて重要であり、高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理が欠かせません。脳卒中既往のある方では、血圧は収縮期130mmHg未満、拡張期80mmHg未満を一つの目安としていただければ理想的です。寒冷期には血圧が上昇しやすく、治療調整が必要となる場合もあります。
また、糖尿病を有する患者さんでは血管障害が進行しやすいため、下肢、頸動脈、心血管の評価も重要です。近年は、糖尿病や脂質異常症に対する有用な治療薬も増えており、地域の先生方による継続的な診療が、患者さんの長期予後を支えています。私たちも、脳神経外科の視点から情報共有やコミュニケーションを深めていきたいと考えています。
私自身、医師会の会合などを通じて日頃から地域の先生方には大変お世話になっています。今後も地域の先生方と連携し、脳卒中診療の質向上に取り組んでまいります。 
医療法人財団 康生会 武田病院
1970年の開設以来、救急救命医療に力を注ぎ、心臓血管外科・循環器内科・脳神経外科・内科・外科が連携して24時間体制で対応。 先進的な取り組みを重ねながら、患者さんとご家族への「思いやりの心」を忘れず、理想の医療を追求し続けている。
所在地
〒600-8558 京都市下京区塩小路通西洞院東入東塩小路町841-5
病床数
374床
URL
https://www.takedahp.or.jp/koseikai/