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呼吸器病センターで他科・多職種連携による、高度な肺がんの集学的治療を提供

Doctor's interview

LUNG
CANCER

横浜市立みなと赤十字病院
呼吸器病センター

呼吸器病センターで他科・多職種連携による、

高度な肺がんの集学的治療を提供

横浜市立みなと赤十字病院は2018年に呼吸器病センターを設立し、呼吸器内科と呼吸器外科が密に連携する体制になりました。呼吸器病センターは、日本人のがんによる死亡原因で多い肺がん¹⁾の集学的治療に力を入れています。日本がん治療認定医機構がん治療認定医が、がん診療にあたるなど、がんの専門家による治療が特徴です。また、遺伝子パネル検査や肺がんの新しい化学療法レジメンに対応して、それぞれの患者さんに適した治療をしています。手術はリスクを検討した上で、なるべく侵襲の少ない完全鏡視下で行う方針です。

1)国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)がん死亡数の順位(2022年)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

呼吸器内科と呼吸器外科をはじめ、他科・多職種連携で高度な肺がんの集学的治療

河﨑医師:横浜市立みなと赤十字病院は2018年に呼吸器病センターを設立しました。呼吸器内科と呼吸器外科が同じ場所で外来診療し、その場で相談して患者さんに対応できる環境です。病棟も臓器別になり、協力しやすくなっています。週に1回キャンサーボードと呼ぶカンファレンスがあり、より連携がスムーズになりました。

下山医師:呼吸器病センターでは、特に肺がんの診療に力を入れており、集学的治療を行う体制を整えました。予防から検診、検査、診断、内科治療、手術、放射線療法、緩和ケアまで他科・多職種連携で対応しています。例えば、肺がんの診断やステージの決定は基本的に呼吸器内科が担当し、診断が難しい場合には呼吸器外科で生検も行います。
ガイドラインではステージI期、II期にあたる早期の肺がんは外科的切除、ステージIIIA期以降の症例は集学的治療が推奨されています。進行症例でも手術療法と薬物療法、放射線療法の組み合わせによって治療効果が期待できるケースもあります。また近年は薬物治療の進歩がめざましく、手術前後に化学療法や免疫療法を行うことにより治療成績の向上を図ることができます。診療科の線引きが難しくなっている領域も呼吸器病センターで対応しています。



呼吸器病センターで他科・多職種連携による、高度な肺がんの集学的治療を提供

河﨑医師:呼吸器病センターは、呼吸器疾患の専門家による診療が特徴です。当院は日本呼吸器学会認定施設および呼吸器専門研修プログラム基幹施設で、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本呼吸器学会呼吸器指導医が在籍しています。また、日本がん治療認定医機構がん治療認定医が、がんの診療にあたる体制です。アレルギー専門医教育研修施設でもあり、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医が所属しています。

呼吸器病センターで他科・多職種連携による、高度な肺がんの集学的治療を提供

PET/CT検査による精度の高い肺がんの診断

河﨑医師:呼吸器内科では、積極的にPET/CT検査を行なって精度の高い診断をしています。当院では2013年からPET/CT検査を始めました。
PET検査は、グルコースに似た物質に放射性同位元素をつけた薬剤を使って集積をみる方法です。がんは正常の組織より盛んに細胞分裂してグルコースを多く取り込む性質があるため、この薬剤によって放射性同位元素の集積がみられます。グルコースをよく代謝する脳や心臓、炎症でも集積がみられますが、健康な肺には集積しにくく、CTで腫瘤影や結節影として丸い影がみられた部位に集積がある場合、がんが強く疑われます。原発巣だけではなく、リンパ節や他の臓器の遠隔転移でもがんの細胞増殖があれば集積します。


下山医師:肺がんは脳や骨、肝臓、副腎に転移しやすく、PETによる全身的な検索が有益です。特に、骨の転移はCTだけでは分かりにくく、PET/CT検査が役立ちます。造影剤を使ったCT単独の検査では判断が困難な場合は、生理活性がみられるPET/CT検査により診療の精度をあげることができます。PET/CT検査は、がんのステージ決定のほか、転移の有無や術後の再発を調べたり、手術適応を検討するのにも活用されています。ただし脳は生理的にグルコースの集積が多いため、別にMRI検査を行って検索しています。


河﨑医師:当院では、PET/CTを地域の医療機関の先生方にご利用いただいています。共同利用を希望される際は医療連携課にお尋ねください。

呼吸器外科専門医による侵襲の少ない完全鏡視下手術

下山医師:当院では、ほとんどのケースをモニターで術野を見ながら行う完全鏡視下で手術しています。完全鏡視下手術は侵襲が少ないため痛みが抑えられて回復が早く、患者さんの負担が減らせます。クリニカルパスを利用しており、入院期間も約1週間程度となっています。
手術は呼吸器外科専門医合同委員会呼吸器外科専門医の資格をもつ医師が執刀しています。完全鏡視下手術には、カメラで術野を正確に映す技術を持つ医師のアシスタントも不可欠です。以前は、肉眼視と胸腔モニターでの観察によるハイブリッド手術を行なっていましたが、手術体制の変更によりこの約2年でほぼ完全鏡視下手術になりました。
手術の適応と判断された場合は術前検査を綿密に行い、それぞれの患者さんに適した術式を検討しています。血管や気管支、胸壁への浸潤がある進行症例や巨大腫瘍にはリスクを考慮して開胸手術を行っています。

呼吸器病センターで他科・多職種連携による、高度な肺がんの集学的治療を提供

がんゲノム医療を活用し、それぞれの患者さんに適した治療を提供

河﨑医師:当院では、患者さんに適した治療を提供するため、がんゲノム医療に積極的に取り組んでいます。がん遺伝子プロファイリング検査は、がん細胞のゲノムから多くの遺伝子変異を調べ、がん細胞の性質を明らかにする方法です。
遺伝子パネル検査は、それぞれの患者さんに合う薬があるか調べる技術です。生検や手術で採取されたがんの組織を「次世代シークエンサー」にかけ、大量のゲノム情報を高速で解析し、同時に多数の遺伝子を調べます。検査の結果、遺伝子変異が見つかり、変異に対応した薬が存在すれば、その方に適した治療が検討できます。遺伝子パネル検査は主に、肺がんの半分以上を占める腺がんの患者さんに対して行なっています。腺がんでは、遺伝子変異によって無秩序にがん細胞が増殖するケースが多く、遺伝子変異に働きかける薬があるか調べる必要があるのです。


下山医師:手術した方でも将来、再発して薬物療法が必要になる可能性があるため、手術の際に全例で遺伝子パネル検査を実施しています。手術検体では多くのがん組織が採取できるので、より正確な検査ができます。

肺がんの化学療法レジメンを検討し、患者さんに合う治療方針を決定

河﨑医師:呼吸器センターでは、肺がんの新しい化学療法レジメンに対応した治療をしています。レジメンは、投与する薬の種類や量、プロトコルを時系列的に記す治療計画書です。化学療法は日々、進歩して選択肢が増えてきました。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬、従来の細胞障害性抗がん剤を単剤、あるいは組み合わせて使う場合があります。
各診療科から申請のあったレジメンに対して、化学療法委員会がエビデンスの根拠となる文献や副作用で中止する条件、保険適用の有無などを審議して賛成多数で承認しています。委員会は薬剤部や抗がん剤、化学療法を行う診療科のスタッフで構成され、私と下山先生も委員です。患者さんがなるべく多くの選択肢をもてるようにレジメンを検討し、正確なオーダーができるよう薬剤部に登録します。

治療では、それぞれの患者さんに合うレジメンを選択しています。例えば、基本的に効果が高い治療法を選びますが、患者さんの状態によっては強い薬を使えません。患者さんを診てエビデンスやガイドラインを確認し、週1回開かれるキャンサーボードで最終的にレジメンを決定します。多角的な視点からレジメンを決定できる体制は、呼吸器病センターの強みだと思います。

全人的な対応を行う緩和ケア病棟が再開

河﨑医師:集学的治療の観点から、がんの患者さんに緩和ケアも行なっています。苦痛のある入院患者さんは早期から緩和ケアを専門とする医師、薬剤師、看護師など多職種で構成された緩和ケアチームに相談できます。緩和ケアチームではご家族のケアも含め、全人的な対応が可能です。例えば、痛みや息苦しさといった苦痛は鎮痛薬や麻薬による薬物療法のほか、環境整備でもQOLが上がります。息苦しい患者さんは室温が涼しく、また点滴がごちゃごちゃした環境よりスッキリ整頓されている方が心理的に楽だと感じるので、環境にも配慮しています。

コロナ禍でも緩和ケアチームは診療を続けていましたが、緩和ケア病棟は数年間、閉鎖されていました。2024年4月から緩和ケア病棟が再開し、患者さんによりご自分らしい医療を受けていただけると思います。地域医療との連携で療養先の検討もしています。最近は在宅ホスピスが増えるとともに、自宅療養にもより自由度が高い選択肢が増えてきました。

地域医療との連携を大切に、高度な肺がん医療を提供したい

河﨑医師:私たちは地域医療とのつながりを大切にしてきました。横浜市の健康事業である肺がん検診にも協力しています。当院の日本呼吸器学会認定呼吸器専門医が横浜市中区の医師会に出向し、2次読影指導医として、地域の先生が1次読影された画像を拝見しています。地域の先生方と顔見知りになり、肺がん患者さんの早期発見や、読影向上でお役に立てれば幸いです。
呼吸器病センターは日本人のがんによる死亡原因で最も多い肺がん¹⁾を中心に、専門性の高い医療を提供し、近隣の医療機関と提携して地域医療に貢献したいと思います。

呼吸器病センターで他科・多職種連携による、高度な肺がんの集学的治療を提供

呼吸器疾患で気になるケースは気軽にご紹介を

河﨑医師:がんこな咳をはじめとする難治性の気道症状、胸部陰影など、専門的精査が必要と考えられる症状の患者さんがいらしたら、呼吸器病センターにぜひご紹介ください。診療情報提供書を作成していただき、当院の医療連携課などを通してご連絡くだされば、呼吸器内科、呼吸器外科と指定していただかなくても、呼吸器病センターで対応いたします。肺がんの予防のため、禁煙外来の診察もしています。


下山医師:当院は総合病院の強みがあり、循環器や腎臓、内分泌、膠原病、精神などの合併症がある患者さんに対して、関連診療科と連携した治療が可能です。地域の先生方の患者さんに肺がんの疑いがあれば、ご相談ください。呼吸器外科では、肺がん以外にも気胸や膿胸といった内科だけでは対応できない疾患も治療しています。開業医の先生のご紹介のおかげで診断がつくケースも多いので、気になる患者さんをご紹介いただければ幸いです。

呼吸器病センターで他科・多職種連携による、高度な肺がんの集学的治療を提供

横浜市立みなと赤十字病院

横浜市立みなと赤十字病院は横浜南部保健医療圏の中核病院として二次医療機能を提供しています。 また地域がん診療連携拠点病院として、手術支援ロボットによる低侵襲手術、最新の抗がん薬を用いた治療やゲノム医療にも対応しています。

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