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顔と顔の見える関係で横浜市域の医療連携を進めたい

Doctor's interview

SPECIAL
DIALOGUE


横浜市立大学附属病院 病院長 横浜市医師会 会長

顔と顔の見える関係で
横浜市域の医療連携を進めたい
高齢化や人材不足の問題に
医療DX、医療連携で取り組む

横浜市では、地域医療連携がさらに推進されています。高齢化や人材不足など医療を取り巻く問題の解決には、医療DXのほかスムーズな連携が解決の糸口です。横浜市立大学附属病院は、市内で唯一の特定機能病院として、高度医療を提供するとともに、2018年から患者サポートセンターを設置し連携業務を進めてきました。そして、横浜市医師会は約4100人が所属し、全国でも最大規模の郡市医師会です。横浜市立大学附属病院と横浜市医師会の「顔が見える連携」によって、市民によりよい医療が提供できることが期待されています。当院院長の遠藤格先生と、横浜市医師会の戸塚武和会長に横浜市域の医療連携についてお話を伺いました。

地域連携には、専門医療機関とかかりつけ医の相互理解が必要

遠藤病院長

横浜市立大学附属病院は2018年に患者サポートセンターを立ち上げ、紹介患者さんの受け入れ、診療した患者さんの後方連携を行なってきました。しかし、まだまだ足りていない部分もあると思います。横浜市医師会の立場から、当院は地域連携にどのような役割を果たしていくべきとお考えでしょうか。


戸塚会長

横浜市立大学附属病院には特定機能病院として、先進医療、救急、高難度手術、難病対策など高度医療を提供する役割があります。地域の医療機関から紹介される患者さんの受け入れ体制を強化して、適切な医療を迅速に行うことが求められています。さらに、急性期治療が終了した後は、地域の医療機関とともに患者さんをフォローする地域一体型の連携をお願いしたいです。国が求める地域包括ケアシステムの一環として、在宅医療や介護との連携も視野に入れ、患者さんが自宅で安心して過ごせる環境を整えていただくことも重要と考えます。


遠藤病院長

急性期治療が終了後、地域の医療機関と連携していくにあたり、どの疾患が診られるか、どういった患者さんを受け入れてもらえるか、より適切に判断するにはどうすればよいでしょうか。

顔と顔の見える関係で横浜市域の医療連携を進めたい

戸塚会長

ホームページには内科と標榜しているだけで、糖尿病や消化器の内視鏡手術など専門的な治療もしているクリニックがあり、分かりにくいこともあると思います。個人の努力だけでは対応できない面もありますので、 厚労省は令和7年度から「かかりつけ医機能報告制度」を施行します。健康上の相談もできるようにして、必要な際は専門医療機関に患者さんを紹介し、総合的に地域医療を充実させる制度です。この制度では診療可能な疾患や、時間外対応、在宅医療などの情報を報告するため、対応可能な範囲がわかりやすくなります。


遠藤病院長

そのように見える化されると、適切に判断し逆紹介を行えると思います。かかりつけ医に逆紹介させていただいたあとでも、何かあった際には当院が診療することが大切な使命だと思っていますので、患者さんを逆紹介する際には、当院で年に1回は定期的にフォローしたり、急な腹痛など何かあったらいつでも当院を受診してくださいと伝えたりしています。


戸塚会長

何かあればいつでも診るという大学病院としての姿勢は我々としても大変ありがたく、心強く感じています。また退院支援と医療相談が1つの窓口でできる患者サポートセンターは、患者さんにも地域の医療機関にもありがたい存在です。

顔と顔の見える関係で横浜市域の医療連携を進めたい

高齢化社会を「地域包括医療病棟」など医療連携で支える時代へ

戸塚会長

私は横浜市立大学を卒業して、本学小児科に在籍し、昭和62年に栄区で小児科と内科を標榜する医院を開業しました。当時はクリニックの玄関に子どもの靴が積まれるような時代でした。地域のニーズに応え診療していた結果、現在では小児は2~3割で高齢者の患者さんが多くなりました。平成15年くらいで急速に高齢者が増えた印象です。開業医として、専門的な治療が必要な方は適切に大学病院、特定機能病院に送る判断を重視しています。患者さんを正しく診断し、点滴や当院で可能な処置をして地域医療を支える姿勢です。
 
今、問題になっているのは高齢者に対する救急医療です。「地域包括医療病棟」の制度が2024年6月から始まりました。地域包括医療病棟は、急性期治療で病状が安定したけれどすぐに退院するのが難しい方や、一時的に入院する患者さんが在宅復帰に向けた支援を受けるための施設です。この制度によって、特定機能病院の先生方の負担軽減が期待されます。
かかりつけ医も1人では地域医療を夜間休日、在宅まで支えられません。さまざまな専門の医師を雇用して在宅医療に特化した大規模なグループ、いわゆるメガ在宅とも連携をとっていきたいと考えています。


遠藤病院長

私たち大学病院も、高度医療機関で継続して診療すべきかあるいは地域包括で診ていくべきかの見極めに携わっていくつもりです。

医療DXに医療の質や利便性の向上、医療機関の負担軽減を期待

遠藤病院長

最近は、医師会の事業計画でも医療DXの推進がうたわれています。戸塚先生はマイナンバーカードの健康保険証利用で医療はどのように変化するとお考えですか。


戸塚会長

医師会は数年前まで、医療DXに積極的ではありませんでした。時を経て容認からさらに推進に変わったのは、医療DXの進展は避けて通るわけにいかないと認識をしたからです。
マイナンバーカードの健康保険証利用で、医療情報連携のネットワーク活用が進むと期待されています。患者さんの医療情報を適切に共有すれば、より質の高い医療を提供できるようになるでしょう。また、受付の自動化や医療費控除の簡便化など、患者さんの利便性向上にもつながります。重複する医療サービスが低減できるため、医療費が適正化するのも目的の一つです。ただ、高齢者や軽度の認知症の方への対応は別で考えなくてはならないと思います。


遠藤病院長

現在はどれくらいの患者さんがマイナンバーカードを健康保険証として利用していますか。


戸塚会長

横浜市の一般の診療所ではマイナンバーカードの利用者は5%程度でした。他の地域でも6~7%という話も聞きます。まだまだ利用割合としては課題が残るとは思いますが、利用を推進していきたいと思っています。


遠藤病院長

当院でも導入を進めていますが、マイナンバーカードの健康保険証利用はまだ10%未満です。医療情報の一元管理で診療をスムーズに進められるほか、受付の効率化で医療従事者の負担軽減、人手不足の解決にも役立つはずです。医療DXによって余裕の出来た人材を、戸塚先生が仰った高齢者・認知症の方への対応に充てるなど工夫していくことができると考えています。

看護師の人材不足の解消にも連携で挑みたい

遠藤病院長

看護助手と看護師の不足が著しく、大きな問題になっています。医師会と市医師会は看護師養成事業に長年取り組んでいらっしゃいますが、最近はいかがでしょうか。


戸塚会長

横浜市医師会では看護専門学校を運営していますが、応募数は多くなく、その中で入学後に脱落せず卒業する方は約7割です。
しかし、看護人材の育成事業は続けていかなければいけないと考えております。看護師の確保は横浜市医師会、医療機関にとって重要な問題です。この度、横浜市医師会は行政と県の看護師協会と連携して、看護師の就業定着支援事業(仮称:ナースバンク)を立ち上げました。まずは看護師復職研修会を始め、就業と定着を支援する計画です。市内在住の復職を躊躇している看護師の掘り起こし、ゆくゆくは市内医療機関への就職のあっせん、いわゆるハローワーク機能まで考えています。


遠藤病院長

当院でも看護師が不足しています。医師会での取り組みがそこまで進んでいることを知り、とても嬉しく思いました。育児のために一旦退職された看護師が、育児が落ち着いたころに復職する支援などを、医師会と我々で連携して取り組めればと思います。

顔と顔の見える関係で横浜市域の医療連携を進めたい

信頼関係をもとに一対一で顔が見える連携が理想

戸塚会長

開業した当時、大学病院はやはり敷居が高く感じました。だんだんと、地域医療連携の目的でセミナーや勉強会を開いてくださるようになり、そこで多くの先生方とお会いして、体制を説明いただいたりして、以前よりお願いごともしやすくなったと感じます。


遠藤病院長

やはり地域の先生方からは、大学病院は気軽に相談しづらいイメージはあるのでしょうか。


戸塚会長

例えば、高齢者は急に具合が悪くなるケースがよくありますが、受ける側としては入院させてほしいと言われても今、悪くなければ無理だという立場もよく分かります。その部分への遠慮のようなものが生じてしまうのでしょう。しかし、適切な患者さんを適切なタイミングで紹介するようにしたいと思います。


遠藤病院長

戸塚先生と私のように、1対1の医師同士なら垣根はないと思います。大学病院には500人以上の医師が在籍していますが、地域の先生方からすると、1対1ではなく、1対500なのだと思います。500人の中でどの医師に信頼を置き、スムーズに連携していけるかが見えにくい中で、何人かが顔の見える窓口になっていく必要があると考えています。地区の集まりなどにもぜひ積極的に参加して、1対1の関係性をなるべくたくさんの先生と築いていきたいです。

顔と顔の見える関係で横浜市域の医療連携を進めたい

横浜市立大学附属病院と横浜市医師会の絆でよりよい連携を

戸塚会長

横浜市立大学附属病院のご対応や姿勢には今でも満足していますが、遠藤先生が新しい試みをされていると伺い、期待しています。私自身も横浜市立大学出身でもありますので、横浜市立大学附属病院とともに私どもも努力していきたいと思います。


遠藤病院長

市民の方が安心できる医療を届けることが、当院の一番の根幹です。地域の先生が「最後の砦」として当院を選択し、ご紹介くださった信頼に応える、そのような気持ちで診療にあたってまいります。そして治療が終了した患者さんに再び地域に戻っていただくことを、丁寧に続けていきたいと考えております。

顔と顔の見える関係で横浜市域の医療連携を進めたい

横浜市立大学附属病院

『市民が心から頼れる病院』の理念のもと、『高度かつ安全な医療』の提供とともに、 神奈川県にある唯一の公的医育機関附属病院として、『質の高い医療人を養成』することを使命に診療。

  • 所在地

    神奈川県横浜市金沢区福浦3丁目9

  • 病床数

    671床 (一般:612床、精神:23床、結核:16床、臨床試験専用病床:20床)

  • URL

    https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp/

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