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消化器がんに、内科と外科で連携して低侵襲治療から集学的治療まで

Doctor's interview

DIGESTIVE
CANCER

関東労災病院
消化器内科×消化器外科

消化器がんに、内科と外科で連携して低侵襲治療から集学的治療まで

関東労災病院は、神奈川県川崎市で24時間救急医療を行う、地域がん診療連携拠点病院です。消化器のがんに対して、消化器内科と消化器外科で密に連携して治療しています。消化器内科では内視鏡治療、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、ラジオ波焼灼療法(RFA)を行っています。腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除(LECS)では内科と外科が協力しています。外科では、消化器がん手術を全般に手がけ、手術した患者さんを一貫してフォローし、他科と連携して集学的治療する方針です。

消化器の救急治療、がんの集学的治療に対応

鈴木医師:当院は地域がん診療連携拠点病院で、がんの患者さんを幅広く治療しています。外科では、がんのエキスパートとして大腸がん、胃がんを含む5大がんの手術を手がけ、手術した患者さんを一貫して最後まで診る方針です。私たちは、特に消化器内科と密な連携をとっており、多くの患者さんの紹介を受けています。専門的な観点からそれぞれの方の手術適応を判断し、患者さんに最適な治療法を選択しています。
がん治療では、消化器内科をはじめ腫瘍内科、放射線治療科、多職種とも連携して集学的治療を行っています。化学療法は外来でも受けられます。放射線療法が適している方には、外科や内科の治療と並行した治療が可能です。がんに伴って体力低下や痛みなどでお困りの方には、がんリハビリテーションをお勧めします。がんが進行して人工肛門になった方には、ストーマ外来で個別的なケアをご紹介しています。

池原医師:消化器内科は、内科の中でも扱う臓器が最も多く、治療の方法も多彩です。当科ではがん診療、内視鏡治療、肝疾患治療を3つの柱としています。消化管や肝胆膵に対して、それぞれ専門の医師が在籍し、高度な治療を行っています。胃・十二指腸潰瘍出血や急性胆管炎、腸閉塞、食道・胃静脈瘤破裂などに24時間、緊急内視鏡の対応ができる体制です。

消化管や肝臓のがんに侵襲の少ない、内視鏡治療やESD、RFA

池原医師:私たち消化器内科で行っている治療をいくつかご紹介します。がんの治療でも可能であれば、侵襲の少ない内視鏡の治療を行っています。小さい大腸ポリープは外来で内視鏡切除が可能です。大きい大腸ポリープや消化管がんは入院して内視鏡切除します。入院、外来のどちらでも、適切な麻酔を使用し、必要があれば鎮静下で苦痛のない内視鏡検査・治療を行っています。

内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic  Submucosal Dissection)は食道・胃・大腸にできた早期がんの治療です。内視鏡で見ながら粘膜下層に薬剤を入れて病変を浮かせ、専用のナイフで慎重に剥離し、病変を一まとまりで取り除きます。1回で病巣全体を除去でき、合併症の少ない方法です。当院では、年間に80〜100例のESDを行っています。外科手術をせず、内視鏡で病変を取れるかどうかの診断が重要です。


消化器がんに、内科と外科で連携して低侵襲治療から集学的治療まで

ラジオ波焼灼療法(RFA:Radiofrequency Ablation) は、お腹を切らずに超音波で肝臓の中にできたがんを見ながら、電極針を刺して先端から出るラジオ波でがんを焼く治療です。主に原発性の肝臓がんに対して行っています。侵襲の少ないRFAが適応かどうかは、腫瘍のサイズや数、肝機能によって判断します。肝臓がんの患者さんは肝硬変でフォローされている方が多く、その場合はがんを早期に発見できるでしょう。私はRFAを得意とし長年、専門的に治療してきました。肝臓の血管や治療の障害となる組織を避け、正確に腫瘍を焼くには経験と技術が必要です。人工胸水・腹水法、体位変換で肝臓と他の臓器を分離する技術のほか、造影超音波や融合画像でがんを確認する方法を使って、より精度の高い治療を行っています。当院では、年間に約30~50例のRFAを行っています。

外科と内科が協力し、胃の内外を見ながら正確に腫瘍を取るLECS

鈴木医師:腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除(LECS:Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery)は外科と内科で協力して行う胃がんの手術です。内科医が胃カメラのように内視鏡を入れて胃粘膜下腫瘍を確認し、外科医が胃の外側から腹腔鏡で見ながら腫瘍を切り取ります。胃の中と外からスコープで観察するので、切除する範囲が正確で侵襲が小さい治療です。術後の胃の変形も最小限になり、機能の低下も抑えられます。内視鏡治療の経験が豊富な内科医と、腹腔鏡手術に熟練した外科の医師が同時に手術に入る必要があります。

外科では、患者さんに負担の少ない鏡視下手術が一般的に

鈴木医師:外科では、なるべく傷を小さく手術する鏡視下手術が一般的になりました。腹腔鏡手術は、直径5〜10mmの細長いビデオカメラをお腹に挿入し、モニター上の映像を見ながら行います。視野が拡大されるので繊細な手術がしやすく、出血も少なくなります。正確で緻密な操作によって合併症を減らせる方法です。開腹手術に比べて入院日数も約5日ほど短くできます。習熟した手技が求められ、何かが起きた際に対応できる知識と経験が必要です。当院では、技術認定医の指導の下で、胃がん、大腸がん、肝臓がんなど多くの疾患に行っています。

包括的ながん治療を行い、外科で標準的な化学療法も

鈴木医師:私たちは早期がんから重症のケースまで治療しています。また、がんの手術をした患者さんを、紹介された時点から最後まで、一貫してフォローする方針です。地域医療連携パスを使っている方もいますが、がんに関しては定期的な外科での経過観察が必要です。手術が成功して5年経過された患者さんは、ご紹介いただいた開業医の先生にお戻ししてきました。残念ながら再発した方には外科での再手術や化学療法、緩和治療を紹介しています。地域の開業医や訪問診療の先生方、施設とも連携しながら、ご家族と共に生活に寄り添って、包括的にがん患者さんを診ています。

消化器のがんに対して、外科で手術以外に化学療法も行っています。例えば、胃がんが進行して腹膜播種がおき、胃の内側の粘膜から筋肉、胃の外側まではがれて腹腔に散らばり、手術ができないステージ4の患者さんに抗がん剤の治療が可能です。抗がん剤治療で完治することはありませんが、状態の改善のため、国内の専門機関で使用されている抗がん剤の組み合わせを腹腔内投与する、先進的な治療に取り組んでいます。

早期発見のためにがん検診を勧め、気軽にご紹介を

鈴木医師:消化器内科では消化管、肝胆膵の患者さんを24時間体制で受けています。その中には、外科的な適応があるケースも多く含まれています。がんの疑いがある方や、長く経過を診る上で予後が不安な慢性の肝臓病の方などは、早めにご紹介ください。地域の先生がご紹介くださる際は、外科と内科のどちら宛でも構いません。こちらで適切に判断して治療し、紹介元の先生にお返しします。


池原医師:日頃からがん検診を受けて早期発見できるのが1番です。ぜひ、患者さんにがん検診をお勧めください。かかりつけの先生のアドバイスが、早期発見につながります。少しでも検診にひっかかった場合、精密検査をすれば何もなくても患者さんは安心です。地域の先生が何か変だと感じたときは、気軽にご紹介ください。

消化器がんに、内科と外科で連携して低侵襲治療から集学的治療まで

急性期病院としての使命を果たし、地域に貢献したい

鈴木医師:外科の魅力はきちんと治せるところです。救急で来られて苦しんでいた患者さんが、笑顔で帰られるのを見るのは何よりの喜びです。急性期病院の使命を果たすため、地域の診療所の先生から信頼していただける治療を提供できるよう、日々努力しています。
コロナ禍の前、外科では年に3回ほど地域の開業医の先生をお招きして、症例検討会を開いていました。近いうちにまた企画して開催する予定です。地域の先生方と顔の見える連携をして、信頼関係を築いていきたいと思います。
何か気になるケースは明確な診断がついていなくても、ぜひご相談ください。特に悪性疾患や急性腹症など、早期に介入が必要なケースは、迅速に対応いたします。ためらわずに気軽にご相談ください。


池原医師:消化器内科は、肝胆膵と幅広い疾患のエキスパートが揃っています。また、24時間体制で救急対応しています。地域の先生方が気になっている症例や、心配なケースはぜひ早めにご紹介ください。消化器内科でも、勉強会を計画中です。気軽にお声かけいただきたいと思います。

消化器がんに、内科と外科で連携して低侵襲治療から集学的治療まで

関東労災病院

がん診療連携拠点病院でもある関東労災病院は川崎市中部地区の中核病院として24時間救急医療を実践し、地域医療連携にも力を注いでいる高度医療、二次救急を重視した急性期型の総合病院です。

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