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2024年1月 新病院設立。「やらまいか」精神で地域医療を支える病院づくりに取り組む。

Doctor's interview

NAOKI
UNNO

浜松医療センター
院長

2024年1月 新病院設立。

「やらまいか」精神で地域医療を支える病院づくりに取り組む。

浜松医療センターの新病棟が完成し、2024年1月から稼働を開始します。ハイブリッドERとハイブリッドORを備え、血管造影室は全部で4部屋となります。MRIは3台体制となり、新しい放射線治療装置も導入されます。また血液内科病棟には無菌室が増設されます。さらに、リハビリ庭園や屋上ヘリポートも設置されます。建物は全体に船をイメージしたような形状で、まさに病院が新たに船出するという感じです。建物内部には浜松市出身の作家の方がデザインした壁画や、装飾が飾られています。今後、当院は浜松医科大学との連携をさらに深め、救急医療やがん、循環器疾患などに対する高度医療を展開するとともに、小児周産期医療にも力を入れていきます。以下に、新しい病院のビジョンについて紹介します。

ハイブリッドERなど、救急救命の新しい設備

海野院長:浜松医療センターは2023年4月1日に創立50周年を迎え、前述しましたように2024年1月に新病棟の稼働がスタートします。新しい病院にはハイブリッドER、ハイブリッドORなど4部屋の血管造影室があります。ハイブリッドERは、救急患者に対してCT、血管造影やX線撮影、手術ができ、搬送されてきた多発外傷などの重症の患者さんを効率的に治療できる施設です。同様にハイブリッドORは血管造影装置を備えた手術室で、高度な心臓血管外科手術や整形外科手術が行えます。具体的には心臓血管外科領域では大動脈瘤破裂や解離性大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、脳外科領域では脳血栓や脳動脈瘤といった疾患に対して血管内治療と手術を組み合わせたハイブリッド治療、整形外科では高度な脊椎手術が可能となります。当院は救急患者が多く、こういった患者さんの救命率の向上につながるのではと期待しています。

2024年1月 新病院設立。「やらまいか」精神で地域医療を支える病院づくりに取り組む。

力を入れている血液がん治療に、広い無菌室を活用

海野院長:当院のもう一つの柱であるがん治療についてお話しします。当院はがん診療連携拠点病院の一つであり、幅広くがんの治療を扱っています。浜松市の人口は約80万人ですが、天竜川を越えて他の医療圏からも多くの患者さんが来られています。とりわけ県西部では最も多くの血液がんの患者さんを治療しており、新しい病棟における広い無菌エリアは白血病や悪性リンパ腫に対する骨髄移植治療や免疫低下による感染症を防ぐほか、血液がん以外の免疫能が低下している患者さんの治療にも貢献するものと考えています。さらに、さまざまながんに対する抗がん剤治療の実施や新しい放射線治療機器も導入されるので、より充実したがん治療ができると考えています。またがん患者さんの就労支援にも力を入れています。

急性期患者に対するリハビリテーションにも力を入れたい

海野院長:今日、急性期病院は入院期間を短くすることを保険制度上求められています。一般的に急性期病院では平均在院日数を12日以内にすることが制度上求められています。急性期の比較的早期からリハビリを開始することにより回復を促し、入院期間の短縮化につながりますので、急性期早期からのリハビリ開始は本当に大切です。特に高齢の方では手術後3、4日とベッド上で安静にしていると、筋力が落ちて回復に何ヶ月もかかることがあります。

新しい病院には広いスペースのリハビリ施設があるので、ご自宅への退院や後方病院に転院する前の急性期リハビリをさらに充実させたいと考えています。急性期治療の結果、不幸にして足腰が弱り、嚥下機能も低下してしまった患者さんの場合は、回復してご自宅に戻るまでに数ヶ月を要しますので、いったんリハビリ病院に転院し、そこで数ヶ月間トレーニングしてから御自宅に戻る、いわゆる病病連携も非常に大切であると考えています。

2024年1月 新病院設立。「やらまいか」精神で地域医療を支える病院づくりに取り組む。

屋上にヘリポートを設置、遠方の患者さんの救命や災害時に貢献

海野院長:新病棟の屋上にはヘリポートが設置されるので、山間部や遠方からの救急¥患者さんの受け入れに威力を発揮すると考えています。特に、脳血管疾患や大動脈瘤破裂や解離など1分1秒を争う疾患では、救急車よりヘリコプターを使った方が早い場合もあり、そのようなケースではヘリコプターによる患者搬送も可能です。また当院は災害拠点病院でもありますで、災害時には地域医療の中心となって医療を継続する責務もあります。

2024年1月 新病院設立。「やらまいか」精神で地域医療を支える病院づくりに取り組む。

インターナショナルな対応として、海外渡航外来の設置や常勤の通訳が勤務

海野院長:海外渡航外来も当院の特色の一つです。浜松市は国際的な企業が多く、東南アジアやインド、アフリカに出張される社員の方やそのご家族が渡航外来にいらっしゃいます。ワクチンを打って安心して渡航していただくためにワクチン業務を毎週、外来で行っています。また、浜松市は外国人の多いエリアです。特にブラジルなどの南米の方が多いので、日中はポルトガル語とスペイン語の通訳が常駐しています。

少子化で患者数は減っているが、産科と小児科を重視

海野院長:少子化にともなって浜松市全体の分娩数は年々減っています。当院でも以前は年間1000件以上のお産がありましたが、現在は600件くらいです。浜松市には産科を扱う民間のクリニックも複数ありますので、お産に関しては近隣のエリアとくらべて浜松市は恵まれている地域だと思います。少子化の影響とコロナ禍で衛生環境への意識が高まり、小児の入院患者も減っていますが、今後も当院は小児周産期医療を重点的に続けていく方針です。

「オープンシステム」で地域の先生と連携、逆紹介率130%

海野院長:当院は地域医療連携に力を入れており、地域の先生からのご紹介を大事にしています。軽症、重篤の方を含めて年間に約6000台の救急車を受け入れ、一次医療から三次医療まで扱っています。当院の医師にお願いしているのは、一刻を争う重症の方を優先的に診てくださいということです。たとえばその日のうちに急患として入院を要する重症の方のご紹介を受ける際には、診療所の先生と当院医師との間で直接電話でお話しをしていただき、その上で入院の準備を整えて患者さんを救急車で迎え入れるという態勢をとっています。医師同士で直接お話しいただくことによって患者さんについての詳細な情報や緊急度などについての理解が深まり、スムースな入院と治療に結びつけることができます。担当の医師が外来対応中などですぐに電話口に出れない場合には、一旦間をおいてすぐにこちらからかけ直すようにしています。

当院は浜松市医師会と緊密に連携しており、私自身が浜松市医師会の理事も務めています。当院の前身は浜松市医師会中央病院であり、昭和48年に県西部浜松医療センターとなり、平成23年に現在の浜松医療センターと改称されました。

2024年1月 新病院設立。「やらまいか」精神で地域医療を支える病院づくりに取り組む。

地域の先生との連携の強さは、逆紹介率130%の数字にも表れています。当院では急性期を脱したら早めに地域の先生に連絡をとり、その後の経過をお願いしています。当院にはご紹介いただいた方のほか、救急車で搬入されかかりつけ医がいない患者さんも多数いらっしゃいます。そのような患者さんには、地域の先生を紹介してその後のフォローアップをお願いしていますので、逆紹介率が130%と高くなっているのです。

地域の先生が当院に患者さんをご紹介いただいた後、入院後も病院を訪問して患者さんの経過を病院の医師と一緒に診ていくオープンシステムがあります。紹介医の中には手術の助手として実際の手術に参加される先生や、手術には入らなくても時々、術後の経過観察に来られる先生もいます。しかし時代の流れで、当院もそうですが日本全体でこのオープンシステムを利用する診療所の先生の数は減ってきています。

「やらまいか」精神で、教育と産学連携を進め医療に貢献

海野院長:もともと当院は50年前の浜松医科大学設立時に医学部生の教育病院として浜松医科大学を補助する病院として浜松市が設立した経緯があります。その後両病院間にしだいに距離ができ、人事や教育の交流が疎になっていました。しかし2017年に私が院長に赴任後は開院の原点に立ち戻り、当院と大学がお互いに緊密に協力し合える体制づくりを目指し、徐々にですがその成果が出てきたと考えております。

今後は教育についても、当院と浜松医科大学との間で学生や研修医、専攻医、スタッフの人事交流をシームレスに行える態勢を作りたいと思います。看護教育に関しましても、浜松市立看護専門学校と浜松医科大学看護学部との間で交流を深め、病院実習などで両院が協力し合える体制を作りたいと考えています。

また、私はこれまで、ものづくり企業と一緒に新しい医療機器の開発も行ってきました。私が力を入れてきた研究の一つに、インドシアニングリーン蛍光リンパ管造影法があります。インドシアニングリーンを足(手)背部に少量皮下注射することにより、リアルタイムで四肢のリンパ流を観察することができ、リンパ流異常を即座に診断することが可能です。その観察のための近赤外線ビデオカメラは地元の世界的有名企業により開発されました。これまで被曝を避けることができない放射性同位元素を用いる方法しかなかった四肢のリンパ流観察が、無害なインドシアニングリーンでリアルタイムで観察可能となり、日本から世界に発信する新しい画像診断法となりました。この方法は遅くとも3年以内に保健診療が可能になる見通しです。ほかにも足の虚血をバイパス手術やカテーテル治療で治療する際に、手術中にリアルタイムで組織の血流を酸素レベルで判定できる装置の開発を静岡大学工学部とものづくり企業と一緒に産学官の医工連携で行っています。物作りは病院単独だけでは難しいので、これからも大学と企業と連携して継続していきたいと思います。

浜松には「やらまいか」という言葉があります。一言でいえば、「とにかくやってみよう」と一歩踏み出す精神です。この地域はそうした進取の機運に満ちている背景があります。医療や医工、産学官の連携といっても、結局は人がすべてです。人との出会いや関係から、思わぬところでチャンスに恵まれ、助けていただいた経験を数多くしてきました。病院や大学の施設、設備の問題だけではなく、これからも人とのつながりを大切にしていきたいと思います。

浜松医療センター

静岡県西部地区を診療圏とする高度総合医療機関であり、地域医療支援病院、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、地域周産母子医療センター、アレルギー疾患医療拠点病院、日本脳卒中学会一次脳卒中センター、そしてゲノム医療連携病院の責を担っている。

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