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不整脈センターで専門的な治療を提供し、地域医療と連携

Doctor's interview

KAZUHIRO
SATOMI

東京医科大学病院
循環器内科科長 / 不整脈センター センター長 / 心臓リハビリテーションセンター センター長

不整脈センターで専門的な治療を提供し、
地域医療と連携

東京医科大学病院は2017年に不整脈センターを設立しました。循環器分野の専門的な治療を提供し、全国でもめずらしい不整脈目指す若手医師の研修を行っています。里見和浩主任教授は、心疾患の治療には生活習慣や血圧のコントロールが大切と語り、地域の先生との連携を重視しています。

不整脈センターで新しい治療と専門に特化したトレーニングを提供

里見医師:不整脈の領域はこの20年ほどで著しく進歩しています。薬物、カテーテル、埋め込み型心臓デバイスによって、それまでの治療と大きく変わりました。不整脈センターには、患者さんに先進的な心臓の治療を提供する目的があります。最近は全国の病院や海外から不整脈の勉強をしたい先生が研修に来るようになり、多様な背景の先生方とディスカッションできる環境になりました。不整脈に特化したトレーニングができる施設は全国でも少ないので、循環器の領域進歩に貢献したいと考えています。私は国立循環器病研究センターで研鑽を積み、ハンブルクで不整脈の治療を学びました。当時、不整脈の新しい治療や臨床研究はドイツが進んでいたのです。日本では心房細動のカテーテル治療が導入するタイミング帰国し、国立循環器病研究センターで心房細動のアブレーションをスタートしました。ご縁があり、10年ほど前に東京医科大学に参り、不整脈の治療を本格的にスタートしました。

不整脈センターで専門的な治療を提供し、地域医療と連携

カテーテルによる弁膜症の治療が進歩

里見医師:最近はほとんどの弁膜症がカテーテルで治せるようになっています。構造的心疾患のインターベンションと呼ばれるTAVI(経カテーテル大動脈弁治療:transcatheter aortic valve implantation)や経皮的僧帽弁クリップ術、左心耳閉鎖術、卵円孔開存閉鎖術などが、この10年ほどで進歩した治療です。TAVIは高齢の方に多い大動脈弁狭窄症に対して行います。大動脈硬化から大動脈弁狭窄症になり弁の開きが悪くなると、心臓から駆出する血液が障害され、胸痛や心不全が起き、命にも関わる病気です。薬などの内科的な治療が難しく、高齢でさらに肝腎疾患や糖尿病のある複雑なケースの方には、外科的な治療は必ずしもいい結果になりません。以前は諦めざるを得ない状況でしたが、今はカテーテルを使った数時間程度の治療が可能になりました。

経皮的僧帽弁クリップ術は閉鎖した僧帽弁の逆流をカテーテルで治す方法です。左心耳閉鎖術では、心房細動による脳梗塞の予防のためカテーテルで左心耳を閉鎖します。心房中隔に孔が開いている卵円孔開存では、この孔を通って血栓が脳に飛ぶ奇異性脳塞栓症がおきるため、予防のために卵円孔開存閉鎖術を行います。

当科は心臓血管外科とも連携して、外科による開心術が良いのか、カテーテル治療が適するのは、それぞれの患者さんに適切な治療方針を相談しています。カテーテルの治療には、検査も含めて大体4〜10日くらいの入院が必要です。

不整脈センターで専門的な治療を提供し、地域医療と連携

抗血栓薬の再評価、アブレーションには専門機関を

里見医師:心房細動は、100万人くらいの患者さんが日本にいます。脳梗塞の約3割は心房細動による血栓が原因ですが、脳梗塞になって初めて診断がつくケースが多く、症状がなくても適切な治療が必要です。早めの診断、治療が大切で、学会や日本心臓財団などでもキャンペーンをしています。最近はいろいろな診断のためのデバイスが販売されています。腕時計型のスマートフォンによって今まで症状があっても原因がわからなかった患者さんの診断がつく場合があります。治療には薬やカテーテルによる根治的治療のほか、デバイスを使う方法もでてきました。

不整脈に対するカテーテルアブレーションの治療では10年前と比べて患者さんの数が倍以上になりました。以前、患者さんの平均年齢は60歳ほどでしたが、最近は70から80歳の方にも行います。治療の性質上、合併症が発生する可能性があります。約1%くらいに出血などの合併症が起き、不幸な転機に至る場合もあるので、トラブルが起きたとき早期に対応できる大きな施設や経験がある病院での治療が望ましいでしょう。当院では外科がスタンバイする体制になっていますが、幸い私の赴任後は外科の先生にお世話になるような大きな合併症は経験していません。

一度始めた抗血栓薬を一生飲む時代もありましたが、出血の問題があるので、最近は最小限の抗血栓薬を使う方向に変わってきました。高齢の方や合併症のある患者さんには、過度に抗血栓薬を使うと悪い作用がでるケースがあると分かってきたのです。消化管出血や血便、鼻血などの出血が起きた場合には再評価が必要です。これまで使われていたワルファリンは専門外の先生には扱いにくい薬でした。近年は似た作用で出血リスクが少ないDOAC(直接経口抗凝固薬:direct oral anticoagulant)が一般的です。導入は簡単になりましたが、出血とのバランスで容量の調節をする必要があるため、地域の先生方の患者さんの再評価をご相談いただければと思います。抗凝固薬による出血を起こすような患者さんには、左心耳閉鎖術を行い血栓が予防できるようになってきました。

増加する心不全には地域医療連携が必要

里見医師:心不全はさまざまな病気の最終段階なので、基礎的な心疾患がなくても高齢や高血圧の患者さんで発症します。最近、収縮が維持されている「左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)」が注目され、高齢化社会で心不全の患者さんが急増する「心不全パンデミック」が懸念されています。今後、心不全に対して地域の先生方との連携が不可欠になるでしょう。当科の心不全チームでは、入院中や退院後に一部の医療機関の医師や看護師を交えて、在宅診療も含めたカンファレンスを心不全の地域連携として行っています。

心不全には息切れやむくみの症状がありますが、日頃の診察だけでは原因が分かりにくいので疑いがあればご紹介ください。元気だったのに急に悪くなって、救急車で搬送されるケースもあり、予測するのは難しい疾患です。血圧のコントロールや塩分の制限といった日常生活の習慣が大切で、医師だけではなく、看護師やコメディカルスタッフが定期的に介入すると再入院の予防になります。そういった意味から心不全の予防には、在宅診療が適しており、地域の先生方にお願いしています。

不整脈センターで専門的な治療を提供し、地域医療と連携

心疾患の診断には一般的な診療が大切

里見医師:心疾患の診断は難しく、労作時の息切れや胸痛、心雑音などの症状がある場合、弁膜症や大動脈狭窄症以外にもさまざまな病名が考えられます。地域の先生方には気軽にご紹介いただき、当院で鑑別診断の後、方針を決めて必要な治療をした後、経過観察をお願いしたいと思います。心臓病は血圧や糖尿病と関連があり、タバコや飲酒、塩分の制限などの生活習慣が病気の悪化を防ぎ、治療の効果を維持するために大切です。

心電図は診断には非常に有益ですが、読影が得意でない先生は心電図所見にこだわらず、症状や変わったことがあればご紹介ください。先生方の施設で使われている心電図は自動診断である程度、病名がつく設計になっていると思いますが、必ずしも正しくないのが現状です。AIが進んで自動診断の精度が向上すれば、地域の先生方や患者さんにとってもメリットがあると思っています。専門による研究が進められていますが、まだ一般の臨床で導入できる段階ではありません。
聴診は弁膜症を発見する上で確実な方法です。心エコーのような専門的な装置がなくても心雑音が聴取できた場合は弁膜症を疑ってご紹介ください。不整脈も血圧の測定や聴診で見つかるので、一般的な診察は大切です。

高血圧は肥満や睡眠時無呼吸が原因のことも

里見医師:高血圧の定義は最近、ガイドラインが変わっています。成人の方では、自宅で測定した血圧で130/85が目安になりました。140や90以上になると、糖尿病などの合併症を持っている患者さんにトラブルの発生が多いと分かり、基準が厳しくなったのです。血圧が高い方が来院されたときは、生活習慣のほかに血圧が上がる要因がないか調べる必要があります。当科にご紹介いただければ、高血圧の背景を精査いたします。単に高血圧だから降圧薬を出すのではなく、患者さんの背景を知ると最小限の薬でコントロールできるかもしれません。例えば、高血圧には肥満や塩分の過剰摂取、睡眠時無呼吸が隠れているケースがあります。

当科には睡眠時無呼吸専門外来があります。睡眠時無呼吸は少し肥満の男性に多い病気です。一泊入院で寝ている間に検査して確定診断し、診断後は空気の通り道に異常がある可能性があるため耳鼻科や口腔外科とカンファレンスを行って治療方針を決めています。疑わしい患者さんがいれば、一緒に寝ているご家族に息が止まることや、いびきがないか尋ねてください。睡眠時無呼吸の治療だけで血圧が下がる場合があります。

循環器領域の遺伝性疾患、末梢動脈疾患、構造的心疾患の専門外来

里見医師:循環器内科では他にも専門外来を設置しています。循環器遺伝外来では、循環器領域の遺伝性疾患が疑われる患者さんの診断や相談をしています。末梢動脈疾患(PAD:peripheral arterial disease)外来は動脈硬化によって足の動脈が狭くなる下肢閉塞性動脈硬化症の治療をする部門です。構造的心疾患(SHD:structural heart disease)外来では、心臓弁膜症や左心耳・卵円孔などの心臓の構造に関する病気を専門に診ています。

不整脈センターで専門的な治療を提供し、地域医療と連携

地域の先生との連携を大切に、頼られる存在でいたい

里見医師:地域の先生との医療連携を大切にしており、心不全やカテーテル治療の分野、外科との共同で定期的に地域連携の会を開いています。私たちの新しい治療の紹介に加えて、地域の先生方に困っている患者さんのプレゼンテーションをしていただき、ディスカッションしています。年に1、2回開催しているので、教室のホームページでも発信する予定です。

患者さんをご紹介いただく際は、医療連携室を通して外来予約をお願いします。緊急の場合は、ダイレクトの電話番号を先生方にお配りしていますので直接、担当医とお話しして、緊急治療が必要と判断される場合はそのまま来ていただきます。循環器は時間を争う疾患が多く、救急対応や集中治療が大切です。救命救急センターとの連携で患者さんを断らずに受け入れ、専門的な治療を行っています。働き方改革の時代ではありますが、土日夜間にも循環器内科の当番医師はいますので頼りにしていただければと思います。

不整脈センターで専門的な治療を提供し、地域医療と連携

循環器の病気は、患者さんや先生方もこのままにしていいのか悩まれるケースがあるでしょう。たとえ異常ではなくても専門的に診断し、必要があれば治療して先生方にお戻ししますので気軽にご紹介ください。循環器疾患には急性期以外の生活習慣の管理や経過観察が大切です。

東京医科大学病院

東京医科大学病院は新宿副都心に位置する「特定機能病院」であり、都区西部「地域がん診療連携拠点病院」に指定されています。

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