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2つの最新治療に大きな期待

Doctor's interview

UROLOGY

浜松医療センター
泌尿器科

2つの最新治療に大きな期待

「静岡県初!水蒸気で体に優しい前立腺肥大症の治療法」

「膀胱がんの再発を防ぐ!天然アミノ酸の光力学的診断」

浜松医療センターでは2023年6月に静岡県で初となる「REZUMETMによる前立腺水蒸気治療」を導入し、 高齢者や持病を持つ患者を対象に体に負担の少ない外科的治療の提供を開始しました。 また、高齢者に多い膀胱がんでは早期で治療しても再発を繰り返すという課題がありましたが、 手術中に光力学的診断(PDD)を用いることで膀胱がんの検出率が向上し、再発リスクが減少することが報告されています。 当院では2023年6月にPDDの導入を開始し、安定した成績を残しています。

静岡県初、「前立腺水蒸気治療」を導入

渡邉医師:2022年9月、高齢の方や既往症をお持ちの患者さんにとっては福音とも言える、新しい治療法「経尿道的水蒸気治療 Water Vapor Energy Therapy:(WAVE治療)」が保険適用となりました。当院でも2023年6月、静岡県で初めて「REZUMTMによる前立腺水蒸気治療」を導入し、体への負担が少ない前立腺肥大症の外科的治療を提供できるようになりました。

施設によりますが、当院では麻酔については患者さんの状態を考えながら選択しています。内視鏡を尿道から挿入、前立腺に針を刺してそこから103℃の水蒸気を10秒ほど注入し、対流熱によって前立腺組織を壊死させます。これを何箇所か繰り返し行います。壊死した細胞が退縮し体内に吸収されることで尿道が広がり尿道の圧迫を軽減するという仕組みです。膀胱への刺激や 尿道の粘膜の損傷が少なく、排尿時の痛みが出にくいというのが特徴です。





永田医師:手術はおよそ10分程度で終了し、治療後に一時的な 前立腺のむくみが生じるため、最後に尿カテーテルを留置します。入院期間は2泊3日、尿道カテーテルを留置したまま退院します。 カテーテルの留置期間は術前にカテーテルが留置されていない患者さんは約1週間、カテーテルが留置されていた患者さんは約1ヶ月で、外来再診時に抜去します。術後の数週間は排尿時にわずかに出血することがあります。手術の効果が現れて排尿状態が改善するまでには少し時間がかかり、術後1カ月以上を要します。

WAVE治療は術中の出血が少量のため抗凝固薬、抗血小板薬を服用されている方でも対応は可能です。ただ内視鏡を使うときに視野が良好となり、安全性が高いことから、可能であれば抗凝固薬や抗血小板薬は休薬します。

改善効果が高く、合併症が少ない治療

永田医師:治療効果は従来の「TUR-P」と比較して軽度劣るものの、 自覚症状による改善効果は高く、5年間の調査では効果は安定して持続し、再手術率が2~4%と低い結果が報告されています。 最新の機器を使うことでほとんど尿道を傷つけることなく、術後の痛みも軽減されます。米国15施設で実施された比較試験では、術後3ヶ月後の重篤な合併症の発現率は0.7%と低く、5年間で薬物療法の再開は11.1%、再手術率は4.4%と従来の手術よりも低い結果が示されました。また従来の手術に比べて性機能が維持されることも確認されています。過活動膀胱を合併している場合、半数は症状が改善されるという報告もあります。
(ボストン・サイエンティフィック社HPより)

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吊り上げ術と比較した場合のメリット

永田医師:侵襲性の低い外科的療法として「経尿道的前立腺吊 り上げ術(Urolift)」も同時期に保険適用されました。この治療は当院では行っていませんが、切開、切除、加熱することなく、 前立腺の中に小型のインプラントを埋め込み、肥大した前立腺を持ち上げ尿道を広げて、排尿できるようにする手法です。WAVE治療は吊り上げ術と比べると、尿道カテーテルの留置期間が長く、治療効果が出るまでに1ヶ月以上と時間がかかるといったデメリットはありますが、異物が体内に残らないということと、吊り上げ術では本来治療が難しいと言われる前立腺の変形 「中葉肥大」にも治療が容易にできることが利点です。「低侵襲」 「短時間」さらに「異物が体に残らない」という安全性と形の変化 にも対応できるという点で、当院ではWAVE治療を導入いたしました。

QOLを上げるための治療の選択肢に

永田医師:WAVE治療は、手術療法が適用される患者のうち、 従来の手術療法(TUR-P、HoLEP、PVP等)が困難、全身状態が不良で合併症のリスクが高い、高齢もしくは認知機能障害のため術後のせん妄・身体機能低下のリスクが高い方が対象となります。 適用が厳しめに設定されていることから、患者さんによっては適用にならない場合もあります。

前立腺肥大症はすぐに命に関わるものではないため、生活に支障をきたしながらも積極的に治療を受けずに我慢して生活をしている人も少なくありません。治療したことで生活の質が高まり、「早く受ければよかった」と喜んでいる方もたくさんいらっしゃいます。手術のハードルが下がったことで、高齢の方や持病があって手術が受けられなかった方においては治療の選択肢の一つとして考えてみるのもいいかもしれません。

再発率が高い膀胱がんの手術

渡邉医師:膀胱がんも高齢者、どちらかというと男性に多い疾患の一つです。10万人あたり18.5人(2019年)と数は多くはありませんが、男女とも増加傾向にあります。以前は血尿で受診して発見 されることが多かったのですが、最近ではCT、エコーなどの検査で 偶然見つかるケースが増えています。早期膀胱がんの治療には、 尿道から内視鏡カメラを挿入して腫瘍を切除する「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)」を行います。膀胱がんは治療しても再発しやすく、TUR-Bt治療後の膀胱内再発率は40~60%、そのうち5割以上が2年以内に再発すると言われています。目に見えないわずかながん細胞が手術で切除しきれずに残っていると、それが増殖 して再発を起こすのです。再発を繰り返すことで、浸潤性のがんに進行する可能性があります。

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天然アミノ酸でがんの見落としを減らす

渡邉医師:高い再発率を改善するために、新しく開発されたのが 「光力学診断(PDD)」という診断手法です。具体的には、天然のアミノ酸である「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」を術前に内服してもらいます。細胞に取り込まれた5-ALAは手術中に青色の光を当てることで、がん細胞が桃色に発光します。がんと正常部の境目が鮮明になり、がんの範囲が分かりやすくなります。人間の目には見えなかった小さながん細胞が可視化され、見落としを減らし切除することが可能となります。切除後にがんの残存を確認し、追加切除をすることで、通常のTUR-BtとPDDを使用したTUR-Bt の比較では、約2年の時点で、通常50%だった再発率を半分の25%に抑えることができたという報告もあります。

光力学的診断(PDD)を用いたTUR-Btは有効性が示され、保険適用となっています。当院においても2023年6月に導入し、これを診断補助として、再発を抑え、より精度の高い治療が行えるようになりました。安全性に関しましては、今のところ、副作用の報告は ありません。光に反応する薬のため薬を飲んでから48時間は太陽光などの強い光は浴びないようにという注意事項はありますけども、室内の場合は問題ないと思われます。



地域のクリニックとの連携で安心できるフォロー体制を

渡邉医師:WAVE治療やPDDを用いたTUR-Btといったような新しい治療を今後も積極的に取り組んでいきたいと考えています。地域のクリ ニックの先生方には、安心できる低侵襲の治療法であるということを患者さんにお伝えし、ご紹介いただければと思っています。経過観察や 治療薬の処方といった、日々のメンテナンス等、治療が終わった後の患者さんの体調管理をお願いいたします。

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浜松医療センター

静岡県西部地区を診療圏とする高度総合医療機関であり、地域医療支援病院、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、地域周産母子医療センター、アレルギー疾患医療拠点病院、日本脳卒中学会一次脳卒中センター、そしてゲノム医療連携病院の責を担っている。

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