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放射線の新装置や他職種との連携、検査に対する理解でより安心な放射線治療・診断へ

Doctor's interview

RADIATION
THERAPY

横浜市立みなと赤十字病院
放射線治療科×放射線診断科

放射線の新装置や他職種との連携、検査に対する理解で
より安心な放射線治療・診断へ

放射線治療は進歩しており、患者さんの体の負担が以前より軽くなっています。最近導入された新しい放射線治療装置は病巣部に集中して放射線を照射でき、隣接する組織への線量を減らせるため有害事象の減少が期待されています。肺がんでは手術と同程度の効果が期待できる定位放射線療法が一般的になりました。入院治療に対応し、がん放射線療法認定看護師や緩和ケアチームがサポートしています。
当院では、がんの治療方針の決定に役立つPET検査も可能です。

放射線の新装置や他職種との連携、検査に対する理解でより安心な放射線治療・診断へ

放射線の進歩で以前より患者さんの負担が軽減

大谷医師:放射線治療は全身に対して行いますが、多いのは頭頸部癌・乳がん・肺がん・前立腺がんです。乳がんの温存手術後の放射線治療を得意としています。以前と比較して1回線量を少し増やして早めに終わる寡分割照射法が主流になり、治療の日数が短くなる傾向があります。最近、IMRT(強度変調放射線治療:Intensity Modulated Radiation Therapy)のための新しい放射線装置が導入されました。従来の装置は左右均等に放射線を照射していましたが、IMRTでは強弱を変えて放射線をかけられます。病巣により多く照射でき、たとえば前立腺がんでは隣にある直腸の線量を減らし前立腺に放射線を当てられるのです。正確に患部に放射線を照射できるため、有害事象を減らす効果が期待されます。

放射線の新装置や他職種との連携、検査に対する理解でより安心な放射線治療・診断へ

放射線のスペシャリストが連携する治療の流れ

大谷医師:治療の流れとしては、まず患者さんに私の外来を受診していただき、スケジュールを相談します。通常、その日か約2日後までに放射線治療計画用のCTを取り、その2日後くらいから放射線治療を開始します。大体3週間くらい治療を継続するのが一般的です。1日の放射線治療は20分程度で、1週間に1度程度、特に変わりがないか外来で拝見しています。

放射線治療は原理が分からない面もありますが、こうすると治る、あるいはこの量の放射線を使うとこのくらいの有害事象がでるというのは分かってきています。効果が期待でき、有害事象をなるべく抑えられる範囲のよりよい方法で治療を行なう考えです。放射線はかければかけるほど効果が出ますが、周囲の組織に有害事象がおきます。一般的に普通のがんであれば1回2グレイをトータル40から60グレイまで毎日かければ大体治るといわれています。治りやすい悪性リンパ腫では20から40グレイ、肺がんでは65グレイ以上が必要かもしれません。

より安全な放射線治療のため、スペシャリストが放射線治療の設備や品質の管理、臨床での対応まで連携して行う体制です。放射線治療科には放射線治療専門医のほか放射線治療専門技師、がん放射線療法認定看護師、医学物理士が在籍しています。カンファレンスには必ず技師を交え、相談しながら治療を行っています。医学物理士は放射線の量や放射線物理のアドバイスをしてくれる貴重な存在です。

多方向から放射線を照射する定位放射線治療が肺がんで一般的に

大谷医師:約10年前から定位放射線治療が使われるようになり、当院でも7、8年前から行っています。定位放射線治療は多方向から病巣にピンポイントで放射線を照射する方法で、周囲の組織への線量が抑えられます。肺がんに対しては手術とほぼ変わらない約8割の治癒が見込まれています。保険点数も外科治療とほぼ同じです。従来の装置でも可能でしたが、ソフトの進歩や適応症の拡大によって治療の幅が広がりました。初期の肺がんでは4日ほど入院していただき、1回12グレイを4回、48グレイほど照射しています。呼吸器外科から依頼される患者さんが多く、1度肺がん手術をして治癒後に再発した際や、ご高齢の方の肺への負担を減らすために定位放射線治療を行うケースがあります。

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頭頸部がん・前立腺がんに期待されるIMRT・体内でがんを攻撃するアイソトープ治療

大谷医師:頭頸部がんはほぼ扁平上皮がんで、アジア地域に多く白人には少ないといわれています。放射線治療は扁平上皮がんに効きやすく、腺がんには効きにくいと考えられてきました。ただし腺がんの中で前立腺がんと乳がんは放射線治療の効果がでやすい疾患です。逆に言えばそういう症例が放射線治療科に回ってくるともいえるでしょう。IMRTの恩恵を受けるのは頭頸部がんと前立腺がんだと考えています。たとえば咽頭部がんで右側に患部があるとき、これまでの機械では左右均等に照射されますが、IMRTであれば右に多く放射線がかけられます。これによって左側の唾液腺など頭頸部の機能に対する有害事象が減らせます。

荻医師:アイソトープ治療は特定の臓器に取り込まれる放射線物質を投与し、体内からがん細胞を攻撃する方法です。アイソトープ治療には、施設認定された専門医がいる医療機関を受診する必要があります。甲状腺がんの取り残しやリンパ節転移のあるハイリスク症例が当科に紹介されています。 (Ra-223)を用いて、前立腺がんの骨転移に対するアイソトープ治療は年に1、2例ほど行っています。がんの骨転移による痛みの緩和に使われていた塩化ストロンチウム(Sr-89)は数年前に製造終了になり、現在は使われていません。

当院にない放射線照射装置や設備が必要な症例では、近隣の医療機関に依頼しています。

有害事象は放射線装置の進歩で以前より少なく、有害事象発生時には専門的ケアを

大谷医師:有害事象が心配だと他科の先生からよく言われますが、最近の治療では以前とくらべて治療の負担は減っていると思います。正確に放射線を照射できるようになり、正常組織に放射線が当たりにくくなっているからです。ほとんどのケースでは外来通院で治療ができますが、高齢で遠方から毎日通うのが大変だという場合や、痛みのある方は入院も可能です。

放射線治療の終盤で皮膚炎が生じた際、当科で軟膏を出しています。年に何例もありませんが症状が重ければ皮膚科外来にお願いする場合もあります。さらに痛みが強いケースでは医療用麻薬を使います。痛みが原因で入院する状況であれば、緩和ケアチームに依頼が可能です。緩和ケアチームには内科出身の緩和医療学会認定医師と緩和薬物療法認定薬剤師、がん看護専門看護師が所属しています。放射線治療は寝ていられないと難しいので、痛みがある場合は緩和ケアチームに相談して痛み止めを処方します。また、放射線治療で頭頸部がんの患者さんに粘膜炎がおきた場合、耳鼻科の主治医が頻繁に診察してくれるなど、他の診療科との連携も行っています。

PETの性質を理解し、総合的な診断方針の決定を

荻医師:私が専門的に扱っているのは、主にPETや核医学検査です。PETは、がんの病期診断や再発転移の診断ができ、治療内容の決定に役立ちます。転移の有無や部位によって外科治療あるいは化学療法をするのかといった治療の方向性が見通せるでしょう。たとえばPETで骨転移があれば放射線治療、原発性肺がんの初期だとわかれば定位放射線治療をするなど、主治医の治療方針につながります。

しかし、PETはすべてのがんに適している訳ではありません。PETに使う検査薬は糖代謝が激しいものに結合するので、肺がんやリンパ腫、乳がん、頭頸部がんには向いていますが、早期のがん、腎がんや膀胱がんなど尿路と重なるがん、一部の胃がんなどは組織によっては向いていないのです。肺がんでも分化度が高いと薬が入らず診断が難しい場合があります。また、PETの検査薬は肝臓や脳に入ってしまうので、重なる部位にがんが隠れていると分かりません。リンパ節転移もPETでの診断が難しい例の一つです。CTでは見逃してしまう小さな骨転移をPETが拾うケースもありますが、PETは万能ではなくCTやMRIの結果もみて、総合的な診断が大切です。

放射線の新装置や他職種との連携、検査に対する理解でより安心な放射線治療・診断へ

日本では放射線治療が少ない

大谷医師:日本は欧米に比べて放射線治療の数が少ないといわれています。おそらく放射線に対する抵抗感と、何より放射線治療ができる医師の少なさが理由でしょう。放射線科医が10人いると放射線治療科医は1人程度、ほとんどは放射線診断医です。放射線科は放射線専門医を取ったあと放射線治療専門医か放射線診断専門医の片方しか取れません。私は血管造影もしたかったのですが、血管造影検査は診断科が専門なので、制度上できませんでした。

がん診療連携拠点病院として、放射線治療・診断で地域に貢献したい

大谷医師:放射線治療の進歩により、以前に比べて放射線治療の有害事象は以前より少なくなっています。肺がんに対する定位放射線治療は近年、一般的になりました。新しく導入された放射線治療装置によるIMRTでは、がんの病巣に以前より正確に放射線を照射でき、有害事象が減らせる効果が期待されています。通院が困難な方や痛みのある方には入院設備もあり、緩和ケアや主治医との連携も行っております。患者さんをご紹介くださる先生方のお話を伺いたいと思いますので、放射線治療についてお気軽にご連絡いただけると幸いです。横浜市中区医師会によく伺っていますので、放射線治療についてご興味のある先生はどうぞお問い合わせください。

荻医師:放射線診断科は放射線治療科と密に連携しているほか、当院はがん診療連携拠点病院なので、地域の医療機関の放射線診断に貢献したいと思います。ご紹介いただいた地域の先生には、画像にカラーで矢印をつけて、なるべく分かりやすくレポートを書くようにしています。対応地域の医療機関の先生にはご依頼いただいた患者さんの結果について、電話でも対応いたしますのでどうぞお尋ねください。


横浜市立みなと赤十字病院

横浜市立みなと赤十字病院は横浜南部保健医療圏の中核病院として二次医療機能を提供しています。 また地域がん診療連携拠点病院として、手術支援ロボットによる低侵襲手術、最新の抗がん薬を用いた治療やゲノム医療にも対応しています。

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