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診療科の枠を超えたチーム体制で、最新の肺がん治療に挑む

Doctor's interview

LUNG
CANCER

浜松医療センター
呼吸器内科×呼吸器外科

診療科の枠を超えたチーム体制で、
最新の肺がん治療に挑む

浜松医療センターでは肺がんの専門外来を設置し、日本臨床腫瘍学会が認定する がん薬物治療専門医(指導医)を中心としたチーム体制で肺がん治療を行っています。 内科や外科の枠を超えたカンファレンスを行い、患者さん毎に最も適した治療を選択する方針としています。 内科ではがん遺伝子検査を併用した診断、外科では手術支援ロボットダ・ヴィンチによる手術も採用しています。 必要に応じて放射線治療や、抗がん剤治療、免疫療法、分子標的薬、併用療法なども可能です。 患者さんのがん治療と就労の両立支援にもチームを作って対応しております。

診療科の枠を超えたチーム体制で、最新の肺がん治療に挑む

がん薬物治療専門医(指導医)がチーム医療を支える

佐藤医師:内科では、がん薬物治療専門医(指導医)を中心として 週に数回、カンファレンスを行って治療方針を検討しています。 治療を進める上で大切にしているのは、診療科を超えたカンファ レンスの実施です。診断方法や薬物療法をどう行うかといった議題のほか、外科や放射線科、病理診断科の医師に参加してもらって症例について話し合っています。一同に集まり、他科の先生からその場でアドバイスをいただければ、効率的にさまざまな治療の可能性を検討でき、迅速に治療方針を決定できるメリットがあります。

肺がん遺伝子検査によって、新しい診断方法に対応

佐藤医師:治療方針を決める際の重要な根拠となるがん遺伝子検査にも力を入れています。昨今の肺がん診療、特に非小細胞肺がんではがん遺伝子検査が必須です。進行期のケースではがん組織を用いたがん遺伝子検査とPD-L1発現を評価し、オーダーメ イド治療ともいえる、患者さんに適した治療の選択が可能になります。がん遺伝子検査は日進月歩なので、常に新しい技術に対応しなければなりません。確実ながん診断のためには検査方法の工夫が必要です。たとえば、超音波内視鏡を積極的に使用しています。肺末梢の病変に対してはガイドシースと超音波プローブを使用し腫瘍を確認して組織を採取します。縦隔・肺門のリンパ節 病変に対しては、超音波気管支鏡を用いてリンパ節に対する安全で確実な吸引生検を行います。
必要があれば他科の先生にお願 いして、CTガイド下生検や外科的な生検による病理診断やがん遺伝子検査を行い、適切な治療に結びつける方針としています。より 多くのがん遺伝子検査を必要とする患者さんが検査を受け、より良い治療法を選択できる可能性を広げるため、検査方法を工夫しています。

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最新のダ・ヴィンチ手術には適応がある

朝井医師:当院では肺がんのあらゆる外科治療が可能です。肺切除の量の少ない方から、肺部分切除、肺区域切除、肺葉とリンパ節の切除に肺門・縦隔のリンパ節郭清を含む標準手術、さらに胸壁や肋骨等のがんが浸潤している周囲の臓器まで取る拡大手術にも対応しています。標準手術では2020年8月にダ・ヴィンチによるロボット支援下手術を導入し、積極的に行っています。ダ・ヴィンチを用いた手術は、4カ所の穴と1カ所の小切開創で行い他の方法 に比べて開胸の幅が小さく、筋肉をほとんど切らないので入院期間も比較的短く、術後の疼痛も少ない傾向があります。ダ・ヴィンチを使わない場合は約8センチ、小さく開胸して胸腔鏡下操作を併用する、いわゆるハイブリッド法を行っています。このハイブリッ ド法でもダ・ヴィンチを用いた手術でも肺とリンパ節の切除量は 変わりません。ダ・ヴィンチの場合は肋骨の間を開けず、4つの穴からロボットを操作し肺とリンパ節を切除した後、約4センチの切開 部からそれらを取り出します。

すべての患者さんにダ・ヴィンチが適しているわけではありません。胸の中に強い癒着がある方や、たばこによる肺気腫が高度であったり、分葉が悪い方はダ・ヴィンチによる手術よりも、ハイブリ ッド法の方がメリットがあると考えています。特に結核等の既往がある方は、リンパ節が気管支に癒着したり、肺の血管に浸み込んでいたりしていることがあり、触覚や力覚がないダ・ヴィンチでは気管支や血管に穴を開けてしまうリスクがあるため適応外としています。手術前に実施するCT検査等で、ダ・ヴィンチを用いるかどうかを判断しています。

そのほか、集学的治療、すなわち薬物治療や放射線治療と手術を組み合わせる治療にも力を入れています。取り切れない可能性のある肺がんの場合、内科・放射線治療科と連携して薬物治療や放射線治療でがんを小さくしてから切除したり、小さくなりきらないがんをすべて切除する手術を行うことがあります。最近、免疫チェックポイント阻害薬の適応も広がり、これと手術を組み合わせ る集学的治療は重要な治療戦略になりつつあります。また、術後 再発のケースは一般的には薬物治療や放射線治療がメインですが、術後に残っている肺に新しい肺がんができたケースでは手術を行う場合があります。切除した側の肺がんの再手術は大がかりで難しい治療ですが、当院では積極的に行っています。いずれにしても治療法の決定には内科や放射線科とも十分に協議して、 総合的に患者さんのメリットとなる方法を選択することが重要と考えています。

術前術後の補助薬物療法で治癒の確率が上がっている

佐藤医師:昨年、外科手術の前後に行う新しい術前・術後の補助薬物療法が承認されました。術前術後に免疫療法や分子標的薬、化学療法を併用する方法は、肺がん治療の新しい動きです。 たとえば内科が肺がんと診断して外科が手術を行い、術後に抗 がん剤と免疫療法を行うような治療によって、以前より根治する確率が上がっています。こうした治療は外科の先生とカンファレンスをして、相談しながら行う診療体制が重要です。薬物療法は日進月歩で、昨年までなかった治療法が次々に出て、新しい治療薬や治療方法が承認されているので、積極的に導入していく体制が求められています。

朝井医師:当院は外科と内科の風通しが非常に良いので、カンファレンス以外でも常に患者さんの情報の共有や相談をしています。こうした空気が患者さんに最善の治療を検討する事につながっていると思います。

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全国規模の臨床試験・治験への参加で医療に貢献

佐藤医師:2023年になって、非小細胞肺がんにおいて新しい抗がん剤の治験に参加する機会をいただくことができました。抗がん剤の治験には全国でも限られた施設しか参加できませんので、大変貴重な機会です。地域の患者さんには新しい治療法の治験に参加できる機会を提供できます。さらに、新しい情報に触れることで、我々も病院全体にとってもがん治療のさらなるレベルアップが期待できます。治験を実施する施設は、最新のがん治療に取り組む施設として周囲の医療機関に認めていただける基準にもなるの で、我々は今後もぜひ継続して貢献したいと考えています。

治療を継続するために、がん患者さんが仕事と両立できる環境づくりをサポート

佐藤医師:患者さんが、がん治療と仕事を両立できるように支援を行う体制を昨年秋に作りました。がん治療の進歩で治療を長く継続する方が増えています。これまでがんの患者さんは治療に専念するのが一般的でしたが、薬物療法を続けるため、経済的にも仕事を続ける必要がでてきたのです。当院では医師、看護師、メディカルソーシャルワーカー、事務の多職種チームで患者さんの就労支援を行っています。たとえば主治医が、通院で化学療法を続けながら仕事ができるよう療養上の指導を行い、会社に患者の療養と就労の両立のために必要な情報の提供を行う業務をサポートする活動です。このような活動によって2022年9月~2023年6月までに療養・就労両立支援指導料を9件算定しました。当院の実績は全国的にもトップレベルであり、今後も充実できるように取り組んでいく予定です。

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がん薬物治療専門医(指導医)が肺がん外来を担当

佐藤医師:がんの診療に力を入れる当院の方針で、2023年度に肺がん外来が設置されました。肺がん外来は週1日、経験豊富ながん薬物治療専門医(指導医)が担当しており、専門的な治療の相談が可能です。肺がん外来のある曜日以外にご紹介いただいても、チームで対応します。

地域医療と連携して、肺がんの術後の経過観 察・薬物療法・放射線治療を

朝井医師:外科治療を行った患者さんは、術後が良好で併存疾患もあまり重くない場合、かかりつけのクリニックと当院を交互に通院していただく形の治療が可能です。地域連携パスを使って、クリニックの先生と連絡簿のように患者さんのデータを共有しています。手術の合併症は術後何年も経ってから発生することがあります。術後の患者さんで何かおかしいと思われる時は、お気軽にご相談いただけたらありがたいです。

佐藤医師:当院で肺がんに対する薬物療法を継続している患者さんが、基礎疾患や他の疾患のために地域のクリニックを受診する場合、情報の共有や相談ができる併診の体制が理想的です。がん治療により病状が安定した場合はクリニックの先生にお願いする部分が多くなります。終末期にある患者さんには、地域の先生と連携して在宅療養も検討します。当院にご紹介をいただいた患者さんが治療方針についてお悩みになり、クリニックの先生にご相談されるケースもあるでしょう。私どもと連携してお話していただくと、患者さんは安心されるのではないでしょうか。
ご紹介いただく患者さんは、肺がんの診断がついていない場合がほとんどです。当院の呼吸器内科では、呼吸器の症状やレントゲンに異常が認められた方などの診断に必要な機器を揃え、迅速に検査や治療に対応できるような体制を整えています。少しでも心配な患者さんはぜひご紹介ください。患者さんについて一番詳しいのはクリニックの先生だと思います。信頼して大切な患者さんをご紹介いただくのですから、私たちも一生懸命、患者さんにとって一番いい方法を考えます。お力をいただき、一緒に診療していただくような姿勢でいます。

新棟完成と放射線治療機器の導入で、さらに充実した治療体制へ

佐藤医師:2024年1月に新棟が完成する予定です。手術室も病棟も新しくなるため、患者さんにとってよりよい環境を提供できるでしょう。新しい放射線治療の機器が導入され、これまでより患者さんの身体的負担が少ない治療ができるようになると期待しています。

浜松医療センター

静岡県西部地区を診療圏とする高度総合医療機関であり、地域医療支援病院、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、地域周産母子医療センター、アレルギー疾患医療拠点病院、日本脳卒中学会一次脳卒中センター、そしてゲノム医療連携病院の責を担っている。

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