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密な連携体制とチームワークの良さで、患者さんに寄り添うがん治療を提供し地域医療に貢献

Doctor's interview

TAKAHISA
TAKIHARA

海老名総合病院
呼吸器内科 部長

密な連携体制とチームワークの良さで、
患者さんに寄り添うがん治療を提供し地域医療に貢献

呼吸器内科は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で注目されるほか、がんや喘息、COPD、肺炎、睡眠時無呼吸症候群など多くの呼吸器疾患を扱っています。近年、肺がんの治療には遺伝子レベルの知見を背景にした最先端治療から、症状緩和に重点をおいたベストサポーティブケアまで幅広い選択肢があります。「患者さんの価値観を知り、ともに寄り添う治療を行いたい」という海老名総合病院呼吸器内科部長の滝原崇久医師。滝原医師に専門医の少ない呼吸器内科の疾患や、地域医療との繋がりについてインタビューしました。

父に憧れて全身を診る医師を志した

外科医だった父の背中をみて、自然に医師を志しました。子供の頃から思い描いていたのは全身を診る医師の姿です。大学を卒業した時に全身管理をしたいと考え内科を選択しましたが、私の大学では専門を決めずに2年間かけて内科の各科をローテーションする研修システムでした。3、4年目に市中病院で内科全般の診療をして、5年目で呼吸器内科を選びました。心臓や肺といった命に直結する臓器を扱う科に進みたいと考えていて、医師3年目の時点では循環器のカテーテル手技などにも興味がありました。しかし、聴診器を使って胸の音を聴き、胸部X線写真を読影する呼吸器内科の医師が自分のイメージするドクターの姿に最も近いものでした。しっかり患者さんを診て、じっくり頭で考えてから手を動かすプロセスがあるのも自分に向いていると思いました。

密な連携体制とチームワークの良さで、患者さんに寄り添うがん治療を提供し地域医療に貢献

慢性疾患が多い呼吸器の患者さんに
寄り添いたい

呼吸器は慢性の疾患が多く、残念ながら根治が難しい病気が少なくありません。患者さんが病気と付き合っていくなか、ご自分の人生で何を大事にして、どのように過ごしていきたいかを受け止めたいと思います。患者さんに寄り添い、医療のみならず何ができるのかを一緒に考えるのが自分のスタイルです。患者さんの抱える病気のことだけではなく、患者さん自身についても深く知りたい思いがあります。医学的には、肺は1つの臓器でありながら病気の数が多いこともやりがいを感じる点です。呼吸器内科で扱う疾患にはがんや喘息、COPD、肺炎、最近は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)があります。睡眠時無呼吸症候群(SAS)も呼吸器内科で扱う病気です。領域が広いため、どの分野についても最先端の情報を吸収するのは大変な分、やりがいがあって飽きることがありません。

密な連携体制とチームワークの良さで、患者さんに寄り添うがん治療を提供し地域医療に貢献

クリニックでの聴診や呼吸機能検査による病気のスクリーニング

近隣の医療機関から呼吸器内科に紹介される患者さんに多くみられる症状は、長引く咳や息切れなどがあります。健康診断を受けて胸部X線で異常所見があり、紹介いただくケースもよくあります。症状があれば、既に病状が進んでいることも往々にしてみられます。

基本的な診察で発見できる病気があるので、患者さんに手を触れて所見をとることは大切です。地域のかかりつけ医の先生方が病気を発見するのに聴診が役立つ例があります。私の専門である間質性肺炎では、聴診でベルクロ音(fine crackle)が聞こえます。マジックテープを剥がす「パリパリ」とした音に似ていることから名づけられた聴診音です。

息切れについては、患者さんが息切れを単なる老化現象だと思っている場合があります。病的な息切れなのか、そうではない通常の息切れなのかを見極めるには、患者さんの話をよく聞いてどのような息切れであるかを確認する必要があります。月並みですが、やはり問診も大事です。

1秒量や肺活量を測定する呼吸機能検査は、クリニックでCOPDや喘息、間質性肺炎をスクリーニングする際に役立ちます。検査によって客観的な異常値がみられれば、患者さんを専門病院に紹介する契機になります。

地域の先生方が紹介して良いケースかどうか迷うという声も聞きますが、何か疑わしいとか、おかしいと感じる状況で、ぜひご紹介いただきたいと思います。患者さんの受け入れの間口を広くしたいと思っていますので、想起される診断名がない状況でご紹介いただいても全く問題ありません。ご紹介いただいて異常がない場合には、ご紹介いただいた先生方にお戻しすることも可能ですので、どうぞお気軽にご相談ください。

標準治療からベストサポーティブケアまで、多様ながんの治療方針

がんの治療は研究の進歩もあり、近年はさまざまな治療方法があります。肺がん診療の最初の段階は確定診断のための検査になります。胸部X線写真で肺に腫瘍を疑う丸い影が写るなど異常が認められ、患者さんは来院されます。次のステップで胸部CTを撮影すると、影の映り方で悪性の可能性が高いかどうか専門的な立場で判断することができます。

その後、本当にがんであるか確認するために病理組織検査を行います。私たちがよく行うのは体の中からのアプローチとして、肺にカメラを入れる気管支内視鏡検査です。内視鏡を介して特殊な器具を肺の腫瘍に到達させ腫瘍組織の一部を採取します。そのほか放射線科医師との連携でCTやエコーを用いた体外からの経皮的アプローチも行います。局所麻酔下で組織を採取するための針を皮膚や筋肉に通して、肺にある腫瘍組織の一部をとります。

肺がんを何らかのかたちで発見するとしたら、現実的な方法は健康診断になると思います。症状が出ている場合では、残念ながら肺がんが進行しているケースもありますので、当然のことになりますが、早期発見が重要となってきます。

院内はもちろん、近隣医療機関とも
密に連携し「集学的治療」を進める

がんの治療には、その効果を上げるために複数の治療法を組み合わせる「集学的治療」が提唱されています。具体的には、手術、放射線治療、抗がん剤による薬物療法を組み合わせて行う治療のことです。海老名総合病院には呼吸器外科があり、しっかりと連携して治療を行っています。呼吸器外科とは近しい距離感でスムーズに個別相談ができる関係にあることが当院の良いところだと思います。

放射線治療は当院で対応できないため、近隣の医療機関に依頼しており、放射線治療以外は当院で治療を継続するケースもあります。東名厚木病院とは距離的に近く、放射線治療について、いつもスピーディーな対応をしてくださっています。放射線と抗がん剤の治療を組み合わせる場合は、大学病院やがんセンターに依頼しています。薬物療法については、院内でいわゆる標準治療を完結できる体制があります。がん治療における施設間連携は私自身も非常に重要視しており、常にフットワーク軽くスムーズに進められるように意識しています。

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患者さんの価値観に寄り添うがん治療を提供
分子標的薬などオーダーメイド治療も推進

抗がん剤の治療では、副作用とのバランスに気をつけています。標準的な治療はある程度確立していますが、患者さんの年齢や体力状況などを考慮して、副作用で疲弊してしまうことを可能な限り避けたいと考えています。患者さんの社会的背景とニーズからなるべく外来治療が良いのか、ある程度入院しても良いのかなども治療法の選択に加味しています。

最近は遺伝子レベルでがんがどのような異常をきたしているのかを調べられるようになっています。オーダーメイド治療に近いものですが、患者さんのがんに合った薬剤を選択するために病理組織検査で評価します。ピンポイントでがんを叩く分子標的薬や、ノーベル賞で話題になった免疫チェックポイント阻害薬がトピックです。がんが増殖するのに関わる根本的なメカニズムであるドライバーミューテーションをピンポイントで抑える分子標的薬は、肺がんの治療を画期的に進歩させました。このような薬剤も肺がんの標準治療になっています。

私たちが内科で診るのは基本的に抗がん剤を使用する、いわば進行がんが多いです。I期からⅣ期までの臨床病期の中でⅣ期の進行したがんは根治が難しく、患者さんに告知をした上でどのように過ごしていくかを相談します。患者さんに寄り添うのはとてもセンシティブな面があります。

標準治療については専門家としての立場で話をしますが、かといって患者さんが絶対にすべてを受けなくてはならないわけではありません。最終的には患者さんと相談して、その方の価値観に合った治療を行っています。積極的な抗がん剤治療を行わず、緩和ケアを軸としたベストサポーティブケアを当初から選択するケースもあります。ご本人、ご家族のお考えを重視しますが、判断に迷われる際には、プロとしてのご提案をさせていただきます。

がんの積極的な治療は行なわない場合でも、患者さんの苦痛を取り除く治療は最大限に行ないます。当科の外来へ通院可能な間は、外来での治療を継続し、ご家族や周囲の方々のサポート状況によっては自宅で過ごしていただけるよう、往診をしている近隣の医療機関との連携も行っています。当院にも在宅診療科があり、外来から在宅までシームレスに繋ぐことができるのは当院で肺がんの治療をうけていただく際の利点になると考えています。

体力が低下して自宅で過ごすことが難しい状況であれば、我々も信頼しているソーシャルワーカーが介入することにより、時期を逸することなくホスピスや長期療養できる病院へと繋ぐ体制は既に十分構築されています。

ダミーテキスト

研究をともにした医師のチーム体制で
地域の医療を支えたい

当院の呼吸器内科チームは、以前より私が関わってきた間質性肺炎の大学の研究グループで一緒に仕事をしてきたメンバーや同じ大学の医局のメンバーのためチームワークが非常に良いことが強みです。さらに、2023年の4月からメンバーが増員となり、医師4名の体制で診療を強化していきます。
呼吸器を専門にしている医師は全国的に数が少ないので、何か現場でお困りの際は気兼ねなくご相談いただければ幸いです。患者さんの状態が安定した際には、ご紹介いただいた先生にお戻しする連携体制も構築させていただけたらありがたいと思います。

密な連携体制とチームワークの良さで、患者さんに寄り添うがん治療を提供し地域医療に貢献

海老名総合病院

職員数:1,210人

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