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神奈川県央エリアを牽引する外科医を育て、地域に貢献する

Doctor's interview

Taku
Miyamae

海老名総合病院
外科部長

神奈川県央エリアを牽引する
外科医を育て、地域に貢献する

海老名総合病院の外科では、医師の知識・技術の両面を向上させ、地域を牽引する外科医を育てることに力を入れています。
目指すのは、患者さんにとって苦痛がないこと、不安がないこと、難民にならないこと。ベテランから若手まですべての医師が切磋琢磨し、地域医療に貢献するべく腕を磨いています。

消化器がんの治療に
やりがいを感じて外科の道へ

私が外科医に憧れるようになったのは、子どもの頃から大好きだった漫画『ブラックジャック』がきっかけでした。祖父が手塚治虫さんの担当編集者だったこともあってブラックジャックは身近な存在で、私もあんなふうに手術で患者さんを治したいと思ったのです。研修医時代は名古屋市立大学の消化器外科で、さらに市中病院でも臨床経験を積み、「やはり外科は面白い」と感じるようになりました。

さまざまな科を経験する中で一番心を惹かれたのが、消化器外科、特に消化器がんの治療です。祖父をがんで亡くした経験からがんの治療に携わりたいと思い、がんと宣告された後の患者さん・ご家族の気持ちの変化や緩和医療にも興味がありました。他の科もそうですが、消化器外科は命に直結する診療科です。手術を行っても治癒が難しい状況にある患者さんやご家族に積極的に関わり、ゆっくりと命の時間が短くなっていく過程にも寄り添う。そんなところにやりがいを感じ、がんセンターで消化器がんの手術手技を学ぶ機会も得ました。

一時期、大学院に戻った時は改めて研究も大事だと感じましたが、技術面も含めて精度が落ちるのではないか、やはり臨床に携わりたい、そう思い臨床に戻りました。臨床経験22年目になる現在も、常に手技が向上しているという手ごたえがあります。今なお手術をすると「もっと上手になれる」と感じることが多くあります。

神奈川県央エリアを牽引する外科医を育て、地域に貢献する

学会参加や論文作成に取り組む
風土を作り知識面の向上を図る

2019年に外科部長に就任した時から、先を見据えてさまざまなことを考え行動に移してきました。治療に関する知識や手技を向上するにあたり、最初に着手したのは若手医師の意識改革です。当院では2023年に新棟が完成することもあり、ここは神奈川県央エリアを牽引する外科となる必要があります。大学病院やハイボリュームセンターにも負けない外科を目指す上で避けたいのが、井の中の蛙になること。目先の治療だけに終始しないよう、意識から変えていったわけです。

知識面においては、新しい情報をインプットしつつ、それをアウトプットすることもできなければなりません。そのために、各自が学会に参加して最新の知見を得たり、論文を書いたりするよう促しました。しかし、市中病院では論文作成に不慣れな医師も多く、いきなり書きなさいと言っても無理があります。そこで上部消化管・下部消化管・肝胆膵の3チームに分けてそれぞれ教育役の医師を配置し、専門知識や手技だけでなく学会発表や論文作成まで、自身が培ってきたことを教えてほしい、それが仕事の1つだということを周知しました。幸いうまく理解が得られ、若手医師への指導体制が整ってきました。

若手医師の資格取得を後押しし、
全国レベルの技術習得を目指す

知識に加え、技術もしっかり高める必要があります。ここは大学病院とは違う、そうであれば現有戦力でどれだけ全国レベルの実力をつけることができるのか――。色々と模索した末、全国のエキスパートの先生方の手技を学ぶべく、部下とともに勉強会に参加することを徹底しました。そうやって知識を吸収し技術を磨きながら、一つの目標としたのが日本内視鏡外科学会の技術認定を取得させることです。これは外科部長になった時に掲げた目標なのですが、私が第一号として合格したことが刺激になり、若手医師にも資格を取得して向上を図る風土ができ上がってきました。

ご存じの通り2020年以降はコロナ禍でさまざまな制約が発生し、院外の研修に行くことが困難になりました。しかし、これを機にウェブで各種情報が得やすくなり、自分の動画をエキスパートの先生に提出して見てもらうことも可能になるなど、良い一面もありました。色々な取り組みを実施した結果、若手医師の意識はずいぶん変わり、カンファレンスでも「もっと技術を向上しなければいけない」と互いに切磋琢磨する姿が見られるようになっています。全体的に手術時間や出血量が以前より少なくなり、特に大腸に関しては飛躍的にレベルが上がるという良い結果が出ています。

このような改革と並行し、クリニカルパスの整備も進めてきました。クリニカルパスに沿って予定通りの経過をたどれるよう研鑽を積んだ医師が対応しますが、手術前の処置や薬剤などは日進月歩で変わります。まだパスに導入されていないことを洗い出し、今後の最適なパスになるようバージョンアップを図っていく予定です。

治療の第一は患者さんの安全性を

担保すること

治療においては患者さんの安全性を担保することが重要です。手術にあたりまず検討するのは腹腔鏡手術ですが、安全性とのバランスを考慮し、場合によっては開腹手術を選択することもあります。ただし、ハイボリュームセンターでないと治療が難しいことも現実的に起こり得ます。そのため、当科で対応する症例については厳密な基準を設けています。消化器内科や地域の医療機関から紹介されたとしても、この基準外の症例であれば、患者さんの希望を確認した上で速やかに大学病院やがんセンターにご紹介しています。

外科では、手術以外の治療についても最新の知見を取り入れています。例えば、がんであれば抗がん剤治療に関する勉強会を重ね、新しい薬剤などの情報を共有。抗がん剤治療では特にチーム医療が重視され、がん化学療法認定看護師のほか、口腔ケアやリハビリテーションを担当するスタッフも関わります。私たち医師はその体制や患者さんの状況を把握して舵を取ることにも注力しています。

なお、当院では放射線治療に対応していませんが、必要な場合は東名厚木病院などの連携施設で受けられる仕組みが確立しています。合同の勉強会を開いて症例を報告したり、紹介に関する要望を確認したりするなど情報共有を徹底し、スムーズにご紹介する体制を整えています。

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患者さんから苦痛や不安を取り除き、
難民にさせない

当科で手術を行った患者さんは基本的に5年の間は私たちが診ますが、無事に治癒して卒業証書を渡せる状態になれば、紹介元の開業医のところで定期的に検査を受けるようお願いしています。

しかし、中には積極的な治療を行うのが難しくなり、緩和ケアの施設に入ることを希望される方もいらっしゃいます。そこに移るまでの間に私たちができるのは、とにもかくにも患者さんに苦痛がないこと、不安にならないこと、難民にならないこと。これを実現するために、メンタル面も含めて積極的に苦しみを取り除くことを心がけています。当院は急性期病院ですが、他に受け入れる医療機関がなく一旦ここへ入院せざるを得ないケースであっても、患者さんのそばで苦痛の度合いを確認し、和らげるよう努めています。

地域連携をより強固にするために
地域の先生方との交流を深めたい

患者さんをご紹介くださる近隣の医療機関や開業医の先生方が安心してご相談いただけるように、私たちは細心の注意を払っています。紹介をできる限り断らないのはもちろんのこと、患者さんが回復したら地域にお戻しするという一連の流れがトラブルなく円滑に進むよう配慮するように努めています。

そのためには地域の先生方との密なやりとりが欠かせません。しかし残念なことに、コロナ禍で地域の先生方と顔を合わせる機会が激減しました。新しいクリニックの先生とお会いする機会がなく、以前からお付き合いしている先生方と疎遠になることを懸念しています。オンラインでのやりとりが普及したとはいえ、やはり対面で、リアルにお目にかかってこそ話せること・聞けることがたくさんあります。落ち着く時期を見計らって開業医の先生方と顔を合わせて交流したいですし、地域連携の会も検討していくつもりです。

また、地域の方々への啓蒙活動も積極的に取り組みたいところです。このところコロナ禍で中断していましたが、市民講座を開催するといつも一般の方が大勢参加されます。今後は地域の方に最新の医療情報を発信する機会も再開していけたらと思っています。

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