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子どもの全身を診て、隠れた病気の早期発見 ・早期治療 に力を尽くす

Doctor's interview

GAKU
YAMANAKA

東京医科大学病院
小児科・思春期科

子どもの全身を診て、隠れた病気の早期発見・早期治療に力を尽くす

小児科・思春期科では子どもの神経疾患や消化器疾患など、専門的に診る医療機関が少ない病気への診療を強みとしています。
地域の先生方と連携し、ありふれた症状に隠れた重大な病気を見つけ出すことにも注力。
身体と心理社会の両面からアプローチし、子どもたちの健康を守っています。

新生児から思春期まで、子どもたちの心とからだの両面を診療する

山中医師:小児科・思春期科で対象としているのは新生児から中学3年生までの子どもです。私が専門とする神経疾患のほか、当科では消化器や腎臓の疾患、感染症、リウマチ疾患、川崎病などの心疾患、さらに先天代謝のような珍しい疾患も含めて幅広く診療しています。身体の病気だけでなく、相互に関連する心や特性、環境など背景まで含めて、子どもとご家族を診るところが当科の大きな特徴です。
私自身、全身を診療する医師になりたいという思いから小児科医を志しました。小児科では回復が望めない状態の子どもが思いのほか元気になることもあり、最後まであきらめずに取り組める、可能性のある診療科だと思っています。

子どもの全身を診るためには、院内の関連各科と連携することが欠かせません。アレルギー疾患なら皮膚科や呼吸器内科、神経疾患は脳神経外科や脳神経内科、内分泌疾患は糖尿病・代謝・内分泌内科など、それぞれとコンタクトを取り診療にあたっています。

近年、遺伝子診断により治療につながる疾患も増え、遺伝子診療センターとの連携も強化いたしました。現在では必要に応じて遺伝専門医や遺伝カウンセラーによる情報提供の元に各種遺伝学的検査を実施するための体制が整いました。保険診療が可能となった各種遺伝子パネル検査への対応はもちろんのこと、診断困難症例に対するエクソーム検査までも院内で実施可能です。

小児の神経疾患に対する専門的な診察が可能な医療機関は限られています。当院では頭痛やけいれん性疾患については多数の実績があり、小児神経専門医(常勤3名、非常勤2名)が高度医療を提供しています。
希少疾患の診断、フォローアップも積極的に行い、地域の医療機関と連携を密に行い患者さんへのきめ細かいケアを行っています。また結節性硬化症を代表とする神経皮膚症候群に対する専門チームを複数の連携科と立ち上げ、患者さんの負担を可能な限り少なくした診療体制を円滑に運営しています。

小児アレルギーについては日本アレルギー学会教育認定施設であり、専門医4名で専門外来を行っています。当科ではアレルギー疾患療養指導士の資格を有した管理栄養士による食物アレルギーの栄養指導、小児アレルギーエデュケーターの資格を有した薬剤師による吸入指導、軟膏指導などを行なっています。外来でも対応可能ですので、指導が必要と感じた際にはご紹介いただければと思います。

子どもの心とからだ、Well beingへ向けた包括的ケア

山中医師:ご存じの通り日本では死因に占める自殺の比率が高く、子どもにおいても大きな社会的課題となっています。日本の子どもの身体的健康度はユニセフの調査によると38か国中1位ですが、精神的幸福度は37位と低く、医療においても子どもの心とからだ、両面での健やかさを目指すことが求められています。
そこで小児科・思春期科では、子どものこころ専門医(子どものこころ専門医機構認定)や公認心理師による「子どもの心とからだ外来」を設け、食べられない、起きられない、あたまが痛いなどの身体愁訴を手がかりに背景課題まで、Bio-Psycho-Social modelを用いた包括的なケアを行なっています。また、入院が必要な子どもに対しては、看護師、保育士、栄養士、公認心理師、ソーシャルワーカーらとともにスモールカンファレンスを頻回に行うことで、多角的視点からのケアを提供しています。
さらに研究機関の責務として、心理社会的関与が背景にあるような不定愁訴や、それらに対する治療ストラテジーなどを、科学的検証を通して「見える化」すべく研究を行い、社会へと還元しております。

精神状況・身体状況ともに重度にある子どもについては、メンタルヘルス科「子どものこころ診療部門」の児童精神科医らとの連携により、徐々に対応の幅を広げておりますが、両科は医局や外来が近いこともあってか、日頃から気軽に声をかけ合える雰囲気があり、この良好な連携関係は他院にないレベルではないかと自負しています。

子どもの全身を診て、隠れた病気の早期発見 ・早期治療 に力を尽くす

消化器内視鏡や喉頭気管支鏡などの検査にも対応し、誤診されやすい疾患を洗い出す

山中医師:腹痛や便秘、下痢などはよくある症状ですが、その中に潰瘍性大腸炎やクローン病のような炎症性腸疾患が隠れていることが多々あります。当院でも、下痢があり胃腸炎の疑いで紹介された乳児が潰瘍性大腸炎だった例がありました。
それは開業医の先生も驚くほどレアなケースでした。でも、万一のことを考えれば、たとえ重大な病気でなかったとしても早めに当院で診断させていただくのは子どもにとって良いことです。一見すると全身状態は大丈夫そうに見えても特殊な疾患が隠れていることがある、そんな教訓を得た例でした。

子どもの消化器疾患にしっかり対応できる医療機関がそれほど多くない中、当院では消化器内科とタッグを組み、肝・胆・膵を含めて診療しています。小腸カプセルのような内視鏡検査を子どもに対しても行っており、誤診されやすい疾患をしっかり診断・治療できるのが強みです。幼い子どもの炎症性腸疾患を診療された経験のある医師は多くないと思われますので、もし消化器疾患でお困りのことがありましたら、お気軽に当院へご相談ください。
IBDセンター設立時に小児科も参画しているため成人期への移行医療も滞りなく可能です。子どもの肝疾患に対しても対応しており、エコー下経皮的針肝生検を子どもへ施行できる数少ない施設でもあります。肝移植適応症例は成育医療センターへ速やかに紹介できる体制をとっております。喘鳴を繰り返す場合も同様で、ただの風邪や喘息に見えても、内視鏡で調べると奇形が見つかることがあります。検査というと侵襲的になりがちですが、場合によっては遺伝子診断も活用して子どもの負担を減らすよう努めておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

長引く咳や喘鳴、治療抵抗性の呼吸器症状などに対して、当院では喉頭気管支鏡検査を必要に応じて行っています。新生児でも検査できる細径のファイバースコープを用いて、検査に熟練した医師が行うため、侵襲が少なく安全に検査可能です。またモストグラフを用いて気道抵抗を測定することで、これまで検査が困難であった乳幼児の呼吸機能検査が可能となりました。喘息診断の新しい検査として非常に有効ですので、喘息診断に難渋している場合はご相談ください。

重症ではないお子さんも紹介しやすい、敷居の低い小児科でありたい

山中医師:私は小児頭痛外来も担当していますが、そこでも隠れた病気が見つかることがあります。例えば、心身症と思われていた激しい頭痛が、実は耐えがたい痛みで知られる群発頭痛だったということがありました。また、風邪だと思われていた繰り返す発熱が、周期性発熱症候群によるものだと判明したこともあります。少し特殊な例ではありますがそんな病気が隠れていることもあり、ただの風邪や発熱だからと軽視することはできません。

原因不明の発熱、発疹、関節痛などがある場合、免疫不全症、自己免疫疾患、自己炎症疾患、血管炎症候群などが潜在している可能性があり、ご紹介いただければ幸いです。特に繰り返し発熱を呈する周期性発熱症候群の診断には力を入れており、PFAPA症候群は内服治療を工夫しておりますので、疑わしい場合にはご紹介下さい。

大学病院は敷居が高いと思われやすいので、私たちはそのイメージを払拭したいと考えています。胃腸炎で少し調子が悪い、下痢や頭痛、発熱が何となく続くなど、重症ではない段階でも構いません。体重減少や血便がある時はすでにご紹介いただいていると思いますが、そこまでいかなくても、少し経過が長い子どもも含めて遠慮なくご紹介ください。現在はエクソソーム解析で遺伝子を網羅的に調べるという選択肢もあり、なかなか診断がつかない子どもにも対応できることが増えています。

子どもの全身を診て、隠れた病気の早期発見 ・早期治療 に力を尽くす

初診で重症度や緊急度をしっかりジャッジし、早く診るべき疾患を見逃さない

山中医師:小児神経外来など、混雑する部門では紹介から受診まで数カ月かかることがあり、これを少しでも早めることが課題となっています。そこで2022年10月から、初診は講師レベルの医師が担当して重症度や緊急度をスクリーニングし、急ぐ場合はより速やかに診療できるよう体制を整えました。

ご紹介いただきましたら、しっかりと必要な診察・検査・治療を行い、状態が安定しましたら再び地域の先生方へお戻しさせていただく。この流れをうまく定着させたいと考えています。特殊な症例は別として、通院などの利便性、かかりつけ医による安心感の観点からも、患者さんにとってメリットが大きいと考えるためです。

そのためには地域の先生方との連携が不可欠であり、講演会や連絡会などの機会をより活用して参りたいと考えております。国立国際医療研究センターや河北総合病院、東京女子医科大学、そして当院の4病院で定期的に勉強会を行っており、そこに開業医の先生方にご参加いただくことも検討中です。当面はコロナ禍で難しい面もあるかもしれませんが、工夫しながら連携を深めていきたいですね。

受け入れの可否が瞬時に分かるシステムで利便性を高めたい

山中医師:小児科に限りませんが、感染症などの疾患が急増した際、開業医の先生方にとってはどの病院で受け入れが可能なのかをリアルタイムで知る手段がありません。忙しい中、あちこちに連絡するのは非常に不便なことと思います。
その解決策として、こういう患者さんなら受け入れることができる、と一目で分かるようなシステムを独自に構築したいと考えています。例えば、あらかじめURLを地域の先生方にお渡ししておき、即入院が必要なお子さんがいる時に、そこにアクセスすれば当院の受け入れの可否がオンタイムで分かるものを想定して制作しています。まだ解決するべき課題があって時期は未定ですが、地域の先生方のお力になれるようなシステムをうまく作りたいです。

あわせて地域貢献として、準夜診療や乳児健診、就学支援会議、児童虐待に関する会議などへ、当科医師の派遣を可能な限り行なって参りました。私は小児の神経疾患を専門としているため、他院からの依頼で診療に伺うこともあります。最近は、中野区の指定難病事業で医師や看護師が訪問診療を行う際に、私たちも同行する機会を作るようになりました。地域の先生とダイレクトにお話しできる貴重な場なので、参加して良かったと思っています。こうした活動は今後も積極的に続けていきたいと思っています。

高度な新生児医療の提供と新生児搬送受け入れ態勢の拡充

山中医師:当院の母子周産期医療センターは新生児集中治療部門としてNICU12床、GCU18床で運営されており、新生児専門医4名を含めた計8名の新生児医療専従医が担当しております。年間400名以上の新生児入院があり、そのうち20~30名が超極低出生体重で、地域周産期母子センターとしては実績も豊富です。高度な医療を提供することで予後に関しても、非常に優秀な成績を残しています。当センターの特徴は年間160件以上の新生児搬送を受け入れており、都内でも屈指の受け入れ件数を誇っていることです。状況に応じて積極的に当院より新生児専従医がお迎え搬送に伺いますので、必要な際はNICUまでご連絡ください。
また急性期医療のみならず、患者様の退院後のフォローも責任をもって対応させて頂きます。今後とも地域の周産期医療の一端を担えるよう努めさせていただきます。

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東京医科大学病院

東京医科大学病院は新宿副都心に位置する「特定機能病院」であり、都区西部「地域がん診療連携拠点病院」に指定されています。

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