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乳がん検診の機会を広げ、女性が治療を受けやすい環境づくりを

Doctor's interview

Tomoko
Uejima

海老名総合病院
乳腺外科医長

乳がん検診の機会を広げ、女性が治療を受けやすい環境づくりを

乳がんは乳房腫瘤を自覚することで発見することも多い がん ですが、乳がん検診によってより早期に発見することができます。
今回は、海老名総合病院の乳腺外科医長である上島知子医師に、医師になったキッカケや、治療に向ける想い、海老名周辺の乳がん検診の受診率や患者さんの現状などについて、インタビューしました。

外科から薬物治療までトータルに

関わることが乳腺外科の魅力

私が医師を目指した最初のきっかけは、中学生の頃から生物が好きだったことでした。人体の仕組みに興味があり、医療に関する仕事が向いているのではないかと思ったのです。人の役に立てることも魅力的で、どうせやるなら広く全般的に知識を深めることができ、人を救うことができる医師になろうと考えました。

昔から裁縫なども得意で手先は器用でしたので、自分でも最初から内科よりは外科向きだろうと思っていました。一時は消化器外科にも惹かれましたが、研修医時代に印象的だったのが最初に経験した乳腺外科でした。医学生の間は乳腺外科について学ぶ機会が少なく、国家試験に出題されることもほぼありません。そのため乳腺外科について明確なイメージを持っていなかったのですが、臨床を経験してみて、これはやりがいのある分野だと感じました。乳腺外科では手術だけでなく薬物療法も重要で、腫瘍内科のような要素があります。最初の診断から、場合によってはターミナルケアまで関わる必要がある診療科です。そうやって長く患者さんに寄り添う診療をしたいと思い、乳腺外科の道を選び、今日に至っています。

乳がん検診の機会を広げ、女性が治療を受けやすい環境づくりを

海老名周辺の乳がん検診受診率を
上げることが急務

海外に比べて日本は乳がん検診の受診率が低いと言われ、それは海老名周辺も例外ではありません。乳がん検診で精密検査が必要だと指摘されて乳腺外科を受診される方もいますが、検診を受けた経験が少ない人や、受けたことがない方が、自覚症状が出た後に受診されるケースも多いです。当院を受診される方は、少し進行した状態の方が多い印象を抱いています。私が以前勤めていた大学病院では検診で見つかる早期がんの患者さんの割合が高かったのですが、当院を受診される方においては半分以上の方が、乳がん検診を定期的に受けていない。そのような印象をもっています。

発見されることが多い超早期の乳がんと言われる非浸潤がんの場合は、手術するだけで術後治療は不要となることもあります。しかし、タイプにもよりますが、自分で腫瘤に気づいた時点では、一段階進んでいることが多く、腋窩リンパ節に転移している場合などは、抗がん剤治療などの様々な治療が必要となることがあります。時間も費用も、患者さんの精神的な負担も大変大きくなってしまいます。より早期に乳がんを発見するために、この地域の乳がん検診の受診率を上げることが大きな課題だと感じています。

自分のことを後回しにしやすい
世代への啓蒙が重要

乳がん検診の受診率が低いことには、年齢が影響していると感じています。乳がんは高齢で発症する方も多いですが、50歳前後にも多いです。この世代の女性は仕事や家庭のことが忙しく、自分のことが後回しになってしまう傾向があります。ですので、このような世代の女性がよく足を運ぶ小児科や婦人科に、乳がん検診を勧めるポスターやパンフレットを設置してもらうなど、今以上に積極的な啓蒙活動が必要だと思っています。

次に、海老名エリアで、検診を行う施設が少ないことも、乳がん検診の受診率を下げている可能性があります。海老名市内でバス検診以外に乳がん検診を行っている医療機関は数か所でした。そのため、当グループでも「カラダテラス海老名」という乳がん検診も行える施設を開設しました。少しでも地域の検診受診率を上げることに貢献できればと思っています。

乳がん検診の機会を広げ、女性が治療を受けやすい環境づくりを

乳がんの患者さんが
治療を受けやすい環境を整えたい

乳がんの患者さんの多くは、家のことを切り盛りしながら治療を受けてらっしゃいます。最近は男性も家事に協力的になっていますが、それでも 50歳前後の女性は仕事と家庭の都合をうまく調整しないと治療が進まないということがあります。高齢の女性になると、比較的時間の余裕があって通院時間も取りやすい方が多いものの、退院直後から家事が待っていたり、「食事の支度もできない旦那を置いて入院できない」と話したりする方もいます。乳がん患者さんが、心身ともに負担が非常に大きくなっている状態です。是非、治療に専念できるように、患者さんが置かれた環境への理解がもっと広まり、治療しやすくなることを願っています。

当院では今年度から「がん看護相談 」という外来を開設し、がん専門の看護師が経済面や心理面のサポートを行っていますので、乳がん治療でお悩みの方は、是非積極的に活用頂ければと思います。

乳がん検診の機会を広げ、女性が治療を受けやすい環境づくりを

治療を拒否する患者さんには、

原因を一緒に探り解決する姿勢が必要

乳がんの治療はタイプによって異なり、手術に加えて、ホルモン薬や抗がん剤、分子標的薬などによる薬物治療もよく行われます。ホルモン治療では10年かかることもありますので、患者さんへ治療法についてしっかり説明する必要があります。
しかし、患者さんの中には「もう治療を受けるのは嫌だ」という気持ちになられる方もいらっしゃいます。そんな時、本人が拒否するからといって治療をやめるという結論を出すわけにはいかず、説得が必要な場面になることもあります。とはいえ、一方的にこちらの意見を伝えても受入れ頂くことは難しいものです。このような時にこそ、医師はしっかり患者さんに向き合うことが求められます。なぜ抗がん剤をやりたくないのか、その気持ちに裏側にある生活背景なども含めてしっかり耳を傾けることが大切だと思います。治療を拒否する理由が私たちの支援で解決可能なものであれば、それを一緒に解決した上で、治療を受けて頂くよう促しています。

乳がん検診の機会を広げ、女性が治療を受けやすい環境づくりを

患者さんのご希望や適応によって、
適切な医療機関を積極的に紹介

近年は「切らない治療」が増えつつあり、臨床試験として凍結療法や焼灼療法を行う医療機関もあります。当院がすべての治療方法を網羅的に対応できるわけではありませんので、患者さんが希望される治療が提供できない場合は、信頼できる適切な医療施設をご紹介するようにしています。特に放射線治療については、東名厚木病院や厚木市立病院、大和市立病院、神奈川県立がんセンターなど近隣の医療機関と連携しながら提供しています。紹介先の医療機関とは紹介後も連絡を取り合うなどし、互いに協力して切れ目がない治療を患者さんに提供できるよう努めています。

最近は地域の先生方からご紹介いただくことも増えてきました。当院の乳腺外科の認知度が広まってきたのだろうと思っています。ただ、ここの常勤医は2人体制のため、どうしても予約が取りづらくなってしまうこともあるかも知れません。その場合は、カラダテラス海老名で診断まで行うことも可能です。ぜひ当科とあわせてご利用ください。

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