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高い技術と情熱で「乳房再建」に取り組み、根治性と整容性を両立

Doctor's interview

Breast
Reconstruction

東京医科大学病院
乳腺科×形成外科

高い技術と情熱で「乳房再建」に取り組み、
根治性と整容性を両立

乳がんの治療が大きく進化する今、乳房再建も盛んに行われるようになりました。

しかし、乳房再建はどこで行っても同じとは限りません。当院では乳腺科・形成外科がタッグを組み、高い技術と情熱を持つ医師が人工物や自家組織による再建、さらに乳頭乳輪再建にも対応しています。

両科の医師が互いを尊重しているため、スムーズな連携が実現できている点が大きな強みです。

乳房再建から乳頭乳輪再建まで幅広いニーズに応える

石川医師:乳がんは一つの病気ではないため治療は個別化しなければなりません。症例に応じて手術、薬物療法、放射線療法をうまく組み合わせることが必要です。また大学病院という特性上、新規薬剤の治験や次世代の治療のための基礎的な研究も行っています。

手術以外の治療法が進歩していますが、最も大切な乳がんの治療法は手術であることは変わりません。2013年に人工物(インプラント)による乳房再建が保険適用となって乳房再建を希望する患者さんが増えてきました。

2014年に赴任した際に整容性の高い手術を目指して形成外科との連携を一緒に教授として就任された松村教授にお願いしました。

高い技術と情熱で「乳房再建」に取り組み、根治性と整容性を両立

松村医師:形成外科では外傷や先天性奇形など幅広い分野を扱っており、その一角を成すのが再建外科領域における乳房再建です。乳房再建には、人工物を入れるものと、患者さん自身の組織を用いる自家組織再建の2つがあります。従来は人工物を用いることが多かったのですが、近年は自家組織による乳房再建がかなり増えてきました。

自家組織を使う場合、当初は拡大広背筋皮弁を使うのが主流でしたが、現在は遊離深下腹壁動脈穿通枝皮弁も増えてバリエーションも広がっています。 乳房のふくらみを作るだけでなく、移植や局所皮弁、医療用タトゥーによる「乳頭乳輪再建」を専門とする医師がいることも当科の特徴です。

乳頭乳輪再建を行う医師は全国にいますが、当院の医師は学会のシンポジウムなどにもよく出ていますし、手術件数も多く、知名度も上がってきたのではないかと思います。

高い技術と情熱で「乳房再建」に取り組み、根治性と整容性を両立

密な情報共有により、乳がんの根治性は乳腺科が、整容性は形成外科が担う

石川医師:乳腺科では乳がんを治すという“根治性”をめざして、手術以外の治療も組み合わせて患者さんごとに適切な治療を提供しています。また“整容性”も乳癌の治療にはとても大切です。外科医ができる範囲で整容性を考えた手術を行っていますが、形成外科の先生方の知識や技術に頼らざるを得ない症例も多く存在します。

しかし形成外科は治療の領域が広いため、乳房再建を専門とする医師は意外と少ないのが現状です。形状や患者の希望も千差万別な状況で再建するだけでなく整容性の高い手術を提供するためには情熱を持って臨む専門家チームが必要です。

当院の形成外科とのチームは、情熱も持って患者さんが期待する乳房の再建を行うように努めています。

 

連携する上で欠かせないのは合同カンファレンスです。乳房再建を専門とする形成外科医は毎週行われる病理・放射線科による乳癌症例の多職種カンファレンスに出席して乳がんの治療の全体の方針を把握しています。

また再建症例に関しては全例について形成外科と乳腺科の合同カンファレンスで手術の方針および術後の評価を毎月検討しています。

 

松村医師:形成外科の診療チームには乳房再建を専門とする医師がスーパーバイザーとして関わり、一緒に治療を行う体制を取っています。

といっても専門の医師にすべてを任せるわけではなく、乳腺科・形成外科の合同カンファレンスでは乳房再建を専門としない医師の意見も大いに参考になります。「この場合はこちらのほうがいいだろう」「我々の専門分野から言うと、こうするほうがきれいではないか」などと多方面からアドバイスしながら検討を重ねています。

 

ただし、あくまでも乳がんの治療が基本で、それがあっての再建という位置づけです。手術後も他の治療が続く場合は、乳房再建が妨げにならないよう配慮しなければなりません。例えば、化学療法と放射線を控えている患者さんは、治療のベストなタイミングで再建を行えるよう両科で最初から相談し、化学療法→乳がん摘出・再建→放射線療法、と計画的に行っています。

乳房再建を行うタイミングは人それぞれです。また、以前は乳房の全摘後に再建するのが一般的でしたが、現在は部分切除に対しても乳腺弁や局所皮弁での再建と、形成外科が関与する機会が増えつつあります。

このように治療のタイミングや形成外科の関わり方が患者さんごとに異なるからこそ、両科のコミュニケーションが大事です。形成外科の関与が必要な場合は最初から乳腺科と一緒に診ながら、乳腺科がどんな治療をいつ行うかに合わせて再建手術の時期や術式を調整しています。

乳腺科からの紹介も、直接のアプローチも分け隔てなく受け入れる

松村医師:乳房再建を希望する患者さんが形成外科を受診するパターンは、主に2つの系統があります。多いのは、乳がんの治療を目的として近隣の医療機関から乳腺科へ紹介され、再建を希望する人が形成外科の乳房再建外来を受診するパターンです。もう1つは他院で乳がんの治療をある程度終えた患者さんからの直接のアプローチで、中には乳頭乳輪再建だけを希望する方もいます。私たちはいずれの患者さんも断ることなく、常にウェルカムな状態で受け入れています。

 

地域の先生方や患者さんには、当院の乳房再建についてもっとよく知っていただきたいと考えています。そのための取り組みの1つが、乳腺科と合同で開催する市民公開講座です。こうした活動がきっかけで、近隣の形成外科から医師が見学にいらっしゃることもあります。今後も情報発信を続けるとともに、地域の先生方にも学んでいただけるような環境も少しずつ整えていけたらと思っています。

高い技術と情熱で「乳房再建」に取り組み、根治性と整容性を両立

検査の結果がんではなかった人を地域でフォローし続ける体制が重要

石川医師:私は総合相談・支援センター長も兼務していますが、当院は医療連携が大変よく機能していると感じています。乳腺科でも地域の開業医や当院のOBの医師と良好な関係を築いていて治療後の逆紹介も定着してきました。

 

逆紹介のシステムは非常に重要です。検診で要精検となって紹介されて、当院で良性病変もしくは経過観察と診断された場合、検診や紹介先に戻りますが、数年後に乳がんと診断されることは珍しくありません。とはいえ乳がん以外の症例を当院で経過観察する余裕はないため症例によっては、乳腺専門医のいる顔の見える地域の先生方にお任せして経過を観察することは大変重要です。

高い技術と情熱で「乳房再建」に取り組み、根治性と整容性を両立

互いを尊重し合う文化がスムーズな連携の源

石川医師:形成外科と乳腺科が尊重し合っていることも当院の特色ではないかと思います。治療成績を通じて当院の形成外科の技術の高さ、およびカンファレンスを通して知識の深さを実感しています。また我々もそれぞれの症例に現時点で最適な治療を提供しているという自負があります。分かり合えるから良い関係があるのだと思います。

 

最近では形成外科と乳腺科が共同で基礎研究も開始しています。人工物再建の際にインプラント周辺が固くなって痛みが出る被膜拘縮という合併症がありますが、現在、創傷治癒を専門とする松村教授の指導のもとで、乳腺科の大学院生が被膜拘縮を軽減するための動物実験などの基礎研究を進めています。将来、共同で実際に臨床に応用できるような技術を報告できたらと思っています。

 

松村医師:乳腺科の石川先生と私は同じ2014年に教授になった、同世代の仲間です。形成外科で乳房再建外来を立ち上げるところから一緒にやってきて、信頼関係があることは大きな強みです。

 

現在、脂肪注入による乳房再建の保険適用が間近とされ、形成外科ではすでに行っている自費の脂肪注入をそれに向けて準備しつつあります。

また、乳腺科で遺伝性乳がんの検査を積極的に行っていることも最近のトピックと言っていいでしょう。今後も大学病院として求められる役割を果たしていきますので、乳がんの疑いのある方や乳房再建を検討している方がいらっしゃればお気軽にご相談ください。

東京医科大学病院

東京医科大学病院は新宿副都心に位置する「特定機能病院」であり、都区西部「地域がん診療連携拠点病院」に指定されています。

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