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心不全や脳梗塞の原因となる心房細動に対する適切な治療介入

Doctor's interview

Hidemori
Hayashi

順天堂大学医学部
順天堂大学医学部 循環器内科学講座 准教授 不整脈グループ

心不全や脳梗塞の原因となる

心房細動に対する適切な治療介入

加齢とともに起こりやすくなる不整脈。すぐに命に関わるといった病気ではないものの心不全や脳梗塞を引き起こすリスク要因が高いにも関わらず、早期発見・治療がなされないことも多い。
順天堂医院には、7人の不整脈専門スタッフ(常勤5人、非常勤2人)が在籍しており、通常の外来診療に加え、年間約300例のカテーテルアブレーションと200例の植え込みデバイス手術実績を誇る。
今回は不整脈診療の中心であるアブレーションとデバイス治療について林医師に聞いた。

不整脈診療の中心となる疾患は「心房細動」であり、その患者数は高齢化に伴い年々増加し、心不全や脳梗塞の原因となるため適切な治療介入が必要となります。心房細動の治療の基本は、年齢や併存疾患に応じて脳梗塞予防のための適切な抗凝固療法を行った上で、心不全予防目的に心房細動中の心拍数を調整(レートコントロール)することと、抗不整脈による薬物治療や根治を目指すカテーテルアブレーションを組み合わせて心房細動そのものを治療し洞調律を維持(リズムコントロール)することです。

心不全や脳梗塞の原因となる心房細動に対する適切な治療介入

心房細動に対する
カテーテルアブレーション

心房細動に対するカテーテルアブレーションでは、高周波カテーテルによる焼灼とクライオバルーンによる冷凍焼灼を使い分け、心腔内エコーと3Dマッピングシステムを併用することで透視線量や造影剤量の削減を実現し、高齢者や併存疾患をもつハイリスク症例に対しても適応があれば安全面を考慮して慎重にアブレーションを行っています。また、心房細動に合併した複雑な回路を有する心房頻拍や、基礎心疾患を有する難治性心室頻拍例に対するアブレーションにも最新の3Dマッピングシステムを駆使して積極的に取り組んでいます。

順天堂大学医学部
循環器内科学講座
助教

黒田 俊介

3次元マッピングシステムを用いた
心房細動アブレーションについて

心房細動に対するカテーテルアブレーション治療では、肺静脈隔離を確実に作成することが重要です。心臓は解剖学的に複雑な形態をしていますが、近年の3次元マッピングシステムは約1㎜の誤差でカテーテルの位置情報を描出でき、これを併用することで安全性・確実に治療を行うことができます。また、頻拍時には位置情報と電位の時相に合わせたカラーグラデーションを組み合わせることで心筋の興奮伝播を可視化することができ、正確な診断に重要なツールとなっています。

植込み型デバイス植込み術

植込み型デバイス植込み術も近年増加傾向にあり、徐脈性不整脈に対するペースメーカ治療に加え、致死性心室性不整脈に対する植込み型除細動器(ICD)、重症心不全に対する両心室ペーシング(CRT)治療を行っています。また、超高齢者や心臓外科術後のハイリスク症例の徐脈性不整脈に対しては、低侵襲であるリードレスペースメーカを選択し良好な成績を得ています。

順天堂大学医学部
循環器内科学講座
准教授

飯嶋 賢一

重症心不全に対する
心臓再同期療法について

重症心不全では心室収縮能の低下(収縮不全)に加え、心室各所の収縮タイミングのずれ(同期不全)を併発することがあります。同期不全の是正を行うことで心不全改善を目指すのが心臓再同期療法(CRT)です。左室を挟んで2本の電線を留置し、ほぼ同時に電気刺激(ペーシング)を行います。これにより左室収縮の完了に必要な時間が短縮することで同期不全が軽減されます。適切な薬物療法でも心不全が改善しない重症心不全の患者さんが対象となり、一部の患者さんでは著明な心機能の改善が得られます。

Medtronic社、Boston Scientific社
ホームページより引用

心不全や睡眠呼吸など

他チームとも密に連携

当院の不整脈グループでは、科内の虚血(インターベンション)、心不全グループや睡眠呼吸グループと連携して、不整脈だけではなく、その原因または結果となり得る循環器疾患に対し多角的に治療介入を行っています。さらには、小児科心臓グループとの連携による小児例へのアブレーションやデバイス植込み、脳神経内科脳卒中グループとの連携による潜因性脳梗塞(ESUS)に対する植込み型心臓モニター(ICM)の植込みにも積極的に取り組んでいます。そして、不整脈専属の臨床工学技士(ME)とデバイスナースが中心になって、デバイス植込み患者の遠隔モニタリングデータ随時取得し、デバイスやリード異常の早期発見、様々な不整脈や心不全に対する治療介入までスムーズに行えるように院内ワークフローを構築し管理しています。

地域医療に貢献できるよう科内の各グループ、他科や多職種との連携を密にし、最新の診断・治療技術に基づき最善の診療を提供致します。不整脈の診断、治療等でお困りの患者さんがいらっしゃいましたら、是非ご紹介ください。

心不全や脳梗塞の原因となる心房細動に対する適切な治療介入

順天堂大学医学部
循環器内科学講座
助教

松本 紘毅

心房細動と睡眠時無呼吸症候群の
関係について

心房細動アブレーション後の再発のリスク因子として、糖尿病・高血圧症・肥満などが挙げられます。特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)を有する患者さんは再発リスクが約2倍とも言われており、積極的にスクリーニングを行っています。簡易ポリグラフ検査で中等度以上のSAS(無呼吸低呼吸指数[AHI] ≧15/h)と診断された際は、睡眠・呼吸障害センターと連携してポリソムノグラフィ(PSG)を行い、持続陽圧呼吸療法(CPAP)を導入しています。不整脈外来と睡眠・呼吸障害センターが連携し、SASのスムーズな診断・治療が可能です。

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順天堂大学医学部附属順天堂医院

順天堂大学医学部附属順天堂医院は、特定機能病院の指定および先進医療・救急指定病院の指定を受けた総合病院です。 28の診療科と1,036床の病床を有し、1日平均899人の入院患者・平均3,515人の外来患者さんの診療を行っています。

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