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産科と婦人科、その両方から女性の生涯を支えたい

Doctor's interview

AKIHIRO
MORIYAMA

大阪府済生会中津病院
産婦人科 部長

産科と婦人科、その両方から女性の生涯を支えたい

産科と婦人科、その両方から女性の生涯を支えたい

森山医師:大阪府済生会中津病院の産婦人科では、産科と婦人科の双方に注力し、地域の女性を幅広く支えています。両分野においてバランスの取れた質の高い診療体制を維持しながら、地域の医療機関と連携し、女性のライフステージに応じた医療を提供しています。

産科と婦人科、その両方から女性の生涯を支えたい

「マインドを持って接する」患者さん中心の医療

患者さんと接する際に大切にしているのが、「マインドを持って接する」という姿勢です。患者さん一人ひとり、置かれている環境や価値観、生活背景は異なります。そのため、医療者側の都合や一方的な治療にならないよう、患者さんの状態や理解度を見ながら、できるだけ分かりやすい言葉で丁寧に説明することを心がけています。

当院が掲げる「思いやりと活力に満ちた病院」という理念のもと、患者さんに誠実に向き合うことを大切にしています。こうしたコミュニケーションを積み重ねることが、患者さんの安心や信頼につながり、結果として地域の先生方からの紹介にもつながっていると感じています。

産科と婦人科、その両方から女性の生涯を支えたい

産科|安全性を最優先した先進的な無痛分娩(和痛分娩)システムの構築

当院では、妊婦さんの身体的負担軽減と出産時の満足度向上を目指し、2024年より本格的に無痛分娩(和痛分娩)を開始いたしました。無痛分娩を安全に遂行するためには、産婦人科領域の専門知識に加えて、高度な麻酔管理技術が不可欠となります。私自身が厚生労働省認定の「麻酔科標榜医」の資格を保持している背景もあり、麻酔科医と密に連携を取りながら、非常にきめ細やかな無痛分娩プログラムを設計・実践しています。

当院では、麻酔のカテーテルを2本使用する方法を採用しています。さらに、PCAポンプ(エイミー)を使用することで、患者さん自身が必要に応じて追加の麻酔薬を投与できるようにしています。追加投与には1時間に4回まで、5分間のロックアウトを設けるなど、安全面にも配慮しています。

助産師がベッドサイド近くで分娩の進行を確認しながら、本人の痛みの部位や強さに合わせて麻酔の量を調整するため、できるだけリラックスした状態で分娩に臨んでいただけます。

当院での分娩を希望される場合には、妊娠初期の段階から受診していただくことをおすすめしています。初期の段階で診療録を作成しておくことで、夜間や休日に出血や腹痛などの症状が出た場合にも、これまでの経過を確認しながら迅速に対応することができます。

初診で分娩・入院の予約を行った後、妊婦健診は地域のクリニックで受けていただき、妊娠34週頃を目安に再び当院の産科外来を受診していただきます。無痛分娩を希望される場合には、妊娠32週頃を目安に麻酔外来を受診していただき、適応の確認や方法についての説明、同意を行います。

ハイブリッド手術室を活用した重篤な子宮出血への即応体制

無痛分娩には多くのメリットがある一方で、麻酔の影響などによって子宮収縮が弱くなり、分娩後に出血が増える可能性があります。

当院では、そのような重篤な出血に対して、子宮動脈塞栓術(UAE)にも対応しています。カテーテルを大動脈から子宮動脈まで進め、血管を塞ぐことで出血を止める治療です。ハイブリッド手術室を活用することで、カテーテル治療を行いながら、必要に応じてそのまま手術へ移行できる体制を整えています。

また、無痛分娩では計画分娩を基本とすることで、分娩のタイミングをある程度コントロールし、必要な専門スタッフが対応できるようにしています。近年は高齢妊娠や不妊治療後の妊娠など、さまざまなリスクを抱えた妊婦さんも増えています。そうしたケースにも、麻酔科や他診療科、設備を含めた総合病院としての体制を生かし、安全な分娩につなげています。

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赤ちゃんの安全を守る決断力と新生児蘇生への取り組み

私自身、産婦人科医として働き始めた頃から、出産時の対応によって赤ちゃんに一生残るような後遺症を生じさせたくないという思いがありました。そのため、3年間の麻酔科研修を受け、「麻酔科標榜医」の資格を取得しました。

分娩中に赤ちゃんの状態が急激に悪化した場合、気道確保や挿管に関する知識や技術がなければ、救命処置が遅れてしまう可能性があります。当科では、出生後のApgarスコアなどから重度の仮死が疑われる場合には、必要に応じて速やかに挿管を行います。

産科は、これまで存在しなかった命が誕生するという、ほかの診療科にはない特殊な領域です。だからこそ、安全を最優先に考え、分娩経過の中で母体や赤ちゃんに危険が及ぶ可能性が高いと判断した場合には、帝王切開へ切り替える決断力も重要です。

「経腟分娩を最後まで続けること」そのものを目的にするのではなく、母子ともに健康な状態で退院していただくことを最優先にしています。常に最悪の事態を想定し、赤ちゃんとお母さんの安全を守るために必要な判断を迅速に行うことを大切にしています。

女性の生涯を包括的に支えるヘルスケアと、飽くなき技術の追求

産婦人科は、思春期や月経の悩みから、妊娠・出産、更年期、さらに老年期の子宮脱など、ドラマチックに変化していく女性のライフステージを支援する視点を養うため、女性ヘルスケア専門医を取得しました。

また、低侵襲治療についても新しい技術を積極的に学び、vNOTESなど新たな治療法にも取り組んでいます。診療科を率いる立場として、若い医師やスタッフに新しい知識や技術を伝えていくためにも、まず自分自身が学び続けることが大切だと考えています。外来にもトレーニング機器を設置し、日々の診療の中で技術を磨ける環境づくりにも取り組んでいます。

女性のライフステージが変われば、必要となる医療も変わります。その一つひとつに向き合いながら、産科と婦人科の両面から長く女性を支えていける診療科でありたいと考えています。

婦人科|低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット支援手術)への積極的な取り組み

婦人科診療における当科の強みの一つが、低侵襲治療への積極的な取り組みです。日本婦人科腫瘍学会の専門医に加え、腹腔鏡手術の技術認定医も在籍しており、2020年には認定研修施設となりました。さらに2021年には手術支援ロボットを導入し、低侵襲手術の選択肢を広げています。

良性疾患では、腹腔鏡手術を第一選択とすることを基本としています。悪性腫瘍についても、患者さんの負担をできるだけ抑えながら、適切な治療を行うことを重視しています。2021年には腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術の施設認定も取得しました。

一方で、婦人科がんに対する腹腔鏡手術には適応が定められています。現在のガイドラインでは、子宮頸がんであれば早期の症例、子宮体がんであればⅠA期などが対象となるため、適応を慎重に判断し、ガイドラインを遵守したうえで手術を行っています。

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多職種・他科連携による高度がん治療

総合病院であることの強みは、婦人科だけで治療を完結させるのではなく、必要に応じて他診療科と連携しながら治療を進められることです。

例えば、免疫チェックポイント阻害薬による治療では、免疫関連有害事象(irAE)などさまざまな副作用に注意する必要があります。その際には内科と情報を共有しながら、患者さんの状態に応じて治療内容を調整しています。主に膠原病内科や内分泌内科への受診が多いですが、眼に副作用が出る可能性がある場合には眼科、呼吸器系の合併症が懸念される場合には呼吸器内科と連携するなど、それぞれの専門性を生かした診療を行っています。

また、局所進行子宮頸がんに対しては、放射線治療と化学療法を組み合わせた化学放射線療法(CCRT)を院内で行うことができます。このように、総合病院として複数の診療科や専門職が連携できる環境を生かし、患者さんの状態に応じた治療を提供しています。

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妊孕性を守る早期発見と地域連携

若年のがん患者さんでは、妊孕性を温存できるかどうかが重要な問題になります。例えば子宮体がんの前段階である子宮内膜異型増殖症などでは、ホルモン治療によって子宮や卵巣を温存し、妊娠を目指すことが可能な場合があります。ただし、妊娠・出産後には再発やがん化のリスクを考慮し、最終的に子宮を摘出することもあります。すでに子宮体がんへ進行してしまうと妊孕性温存が難しくなるため、早期発見が重要です。

月経以外の出血や閉経後の出血など、子宮体がんが疑われる症状がある場合には、ご紹介いただければ必要な精密検査を行います。特に子宮内膜の検査は、出産経験のない方などでは痛みや穿孔などのリスクがあり、一般のクリニックでは検査が難しいケースもあります。

超音波検査だけでは判断が難しい場合や、「なんとなくおかしい」「念のため詳しく調べておきたい」という段階でも、気軽にご紹介いただければと思います。早期に発見し、必要な治療につなげることが、患者さんの治療や妊娠の可能性を守ることにもつながります。

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顔の見える地域連携と、これからも続くつながり

地域の先生方との連携では、顔の見える関係を大切にしています。実際に直接お会いしてお話しすることが、信頼関係を築くうえで大切だと考えているからです。

当院では、地域の先生方からご紹介いただいた患者さんをできるだけスムーズに受け入れられるよう、オンライン予約システムなども活用しています。また、診療や治療が一段落した患者さんについては、速やかに紹介状をお返しし、地域の先生方のもとで継続して診ていただけるよう心がけています。

これまで当院が地域の中で診療を続けてこられたのも、地域の先生方に支えていただいているからこそです。ご紹介いただいた患者さんを大切に診療し、必要な治療を終えたらまた地域へお返しする。そうしたつながりを一つひとつ積み重ねていくことが、地域医療を支えることにつながると考えています。

これからも地域の先生方との顔の見える関係を大切にしながら、産科・婦人科の両面から、女性の人生に寄り添う医療を提供していきたいと思います。

大阪府済生会中津病院

"思いやりと活力に満ちた病院"をスローガンに、地域の中核病院として総合的な、きれ目のない「医療・看護・介護サービス」を提供。 2016年には創立100周年を迎えた。

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