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地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

Doctor's interview

GASTROENTEROLOGICAL
SURGERY

横浜市立みなと赤十字病院

先田信哉 消化器内科部長/ 肝・胆・膵内科部長/消化器病センター長 杉田光隆 外科部長/肝胆膵外科部長 原英展 消化器内科医長/y-epad担当

地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

予後の厳しい膵臓がんが、早期発見により助かるようになってきました。横浜市立みなと赤十字病院は、y-epad(横浜市すい臓がん早期診断プロジェクト)に参画し、膵臓がんの早期発見に力を入れています。当院は総合病院の強みを活かして、消化器内科と消化器外科が密に連携し、高度な肝胆膵領域の治療を提供する体制です。

予後が厳しい膵臓がんも、早期発見で根治できる可能性がある

先田医師:膵臓がんは予後が厳しい疾患で、多くの患者さんが不幸な転帰をたどります。また、横浜市の統計では、がんによる死亡の臓器別で、膵臓がんは3位から4位と高い割合を示すデータがあります。当院で診療した過去5年ほどの膵臓がんの患者さんは、約半分がステージIVの手術ができない状態でした。5年生存率が約5割あるステージIの患者さんは約3割です。ちなみに腫瘤を形成していないステージ0であれば、5年生存率は9割近くになります。実際、目の前の患者さんが初めて来られたときにはという場合も多く、私たちには早期発見できる患者さんが少しでも増えてほしいと祈るような思いがあります。

原医師:特に20 mm以下の小さな段階で発見できた膵臓がんは、切除によって良好な予後が期待できます。膵臓がんは、いかに早期に見つけて適切な手術を行うかが予後に大きく影響します。

地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

当院では膵臓がんを早期に発見する精密検査の設備を備えています。CTやMRIに加え、膵臓を近接して観察できるEUS(超音波内視鏡検査:Endoscopic Ultrasonography)を積極的に用いています。CTやMRIで明らかな腫瘤として捉えにくい早期の段階でも、EUSで小さな病変や膵管の変化などを詳しく評価できる場合があります。腫瘤が確認できる場合にはEUS下で組織を採取し、明らかな腫瘤を形成していないものの膵管の異常から早期膵臓がんが疑われる場合には、必要に応じてERCPによる膵液細胞診を行うなど、それぞれの患者さんに適した方法を選択しています。

地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

杉田医師:膵臓がんは手術以外で根治を目指すのが難しいので、なるべく早く外科治療を受けてほしいと思います。早期膵臓がんの方は治療成績も高く、予後も良好です。最近は早期に発見されて手術を受け、よい経過をたどる方が増えていると感じています。

先田医師:膵臓がんは手術適応にならず、内科的治療を行うケースも多い疾患です。膵臓がんは、胃がんや大腸がんと比べて治療法が豊富ではなく、最近よく聞く免疫療法も効きません。近年、ゲノム診療が登場して脚光を浴びています。実際にゲノム診療で薬までたどり着くのは膵臓がんで15%程度ですが、今まで治療法が少なかったので期待されています。当院でも病院全体でゲノム診療をバックアップして柔軟に対応する方針です。

糖尿病をはじめ、他の疾患から膵臓がんが早期発見できる場合がある

原医師:早期発見につながる具体的な所見としては、エコー上で膵嚢胞や慢性膵炎が疑われる場合のほか、糖尿病の新規発症や急性憎悪があります。糖尿病を診ていたクリニックの先生が、HbA1cの急上昇でおかしいと紹介していただいたところステージIの膵臓がんが見つかったケースがありました。

膵臓がんは無症状で進行する場合が多く、ちょっとしたサインを捉えないと早期に見つけるのは難しいのが特徴です。お腹や背中が痛い、体重が減ってきたというケースは、進行した膵臓がんの可能性があります。急性膵炎は痛みで受診すると大体、入院になるので精密検査を受ける流れになります。一方、慢性膵炎の方は膵臓がんのハイリスク群ですが、がんのスクリーニングを受けていない方がいらっしゃるので、精密検査をご紹介いただければ幸いです。

地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

原医師:他の診療科との連携で膵臓がんが見つかるケースがあります。糖尿病の治療で見つかる場合が多く、他の病気で入院中に、代謝内科の先生から血糖コントロールの異常を指摘されて精査し、膵臓がんが見つかったケースがありました。また、当院は救急病院でもあり、救急外来で撮影されたCTを放射線診断科が読影し、膵嚢胞や膵臓がんを疑う所見が指摘されたことをきっかけに、消化器内科へ相談となる場合もあります。

開業医の先生からエコーで膵管拡張を指摘され、当院でEUSを行ったところ膵管内にとどまる早期膵臓がんが見つかったケースがありました。膵臓は背骨に近い臓器なので外からエコーを当てても分かりにくい場合があります。EUSを含む精密検査による診断から、外科治療や薬物療法まで、院内で一貫してつなげられることが当院の強みです。腹部超音波で膵管拡張や膵嚢胞などの異常を認めた場合はもちろん、膵臓全体を十分に観察できなかった場合にも、気になる点があれば気軽にご紹介ください。

杉田医師:最近、特に糖尿病を専門にしているクリニックの先生が、がんのスクリーニングを念頭に、糖尿病が急激に悪化した患者さんを大病院に紹介する流れがあります。当院は「高度医療機器共同利用」という、地域の先生からの紹介状をもとにCTやMRIなどの検査を行える制度があり、この制度を利用して検査し、早期膵臓がんが見つかったケースがありました。

原医師:当院では、患者さんとの日程調整にもよりますが、CTやMRIを1週間程度、EUSも概ね1か月以内で検査が可能な体制をとっています。膵臓嚢胞や膵臓がんの疑いで精密検査の依頼をいただいた場合、可能な限り1か月以内に一通りの検査を終了するようにしています。オンコールも受けていますので、黄疸や著明な体重減少など緊急性が高い場合には、入院を含めて迅速に対応しています。

消化器内科と消化器外科が、密に連携して膵臓がん治療

先田医師:当院では、消化器内科と消化器外科がスムーズな連携で患者さんを診療しています。両診療科で肝胆膵領域に力を入れ、依頼したがん患者さんの状況を報告し合う「キャンサーボード」を定期的に開いています。

杉田医師:消化器内科とはいわば分業の体制です。肝胆膵領域の患者さんは多くの場合、消化器内科を受診して診断を受け、消化器外科に来られます。検査の段階で明らかに外科の適応がなければ、そのまま消化器内科で治療をスタートし、手術の適応がありそうであれば、患者さんの合併症や併存疾患について調べてもらいます。近年、がんの手術では、術前に化学療法や放射線療法を行うようになりました。手術を前提にしている場合は外科で術前から治療を始め、境界領域であれば内科と相談してお願いするケースもあります。手術を受けるか迷われる方もいらっしゃるので、積極的に外科で一度お話しさせていただき、ニュートラルな状態で最終的にご本人とご家族に治療法を選択していただきます。

地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

総合病院としての強みを活かし、高度な治療を提供

杉田医師:当院は総合病院なので、診療科間で連携し、合併症をお持ちの方や高齢の患者さんに安全性を重視した治療が可能です。また、当院は日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医修練施設に認定されており、難しい症例の手術を専門的に治療できる体制を構築しています。地域の先生に安心して患者さんをご紹介いただければと思います。

地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

y-epad(横浜市すい臓がん早期診断プロジェクト)に参画

原医師:早期がんの患者さんを積極的に発見する取り組みが、横浜市をはじめ全国の自治体で始まっています。y-epad(横浜市すい臓がん早期診断プロジェクト)は、横浜市の大学病院や医療機関、地域の開業医の先生方、医師会、横浜市医療局が連携して早期がんを発見するプロジェクトです。横浜市の特徴として、医局の垣根を超えて連携する医療体制があります。当院も新たにy-epadに参画し、現在は横浜市内8つの拠点病院が連携して膵臓がんの早期診断に取り組んでいます。

y-epad参加施設で診断された膵臓がん患者さんのうち、ステージII以下は64.8%を占め、さらに腫瘍径20 mm以下の症例は38.9%でした。膵臓がんを早期に見つける割合を引き上げられれば、横浜市民の皆様がより前向きに膵臓がんの治療に取り組めると期待しています。

y-epadでは一般の方に早期膵臓がんの発見に関心を持っていただくため、市民公開講座を開いています。また、横浜すいぞうというAIを用いたアプリを開発し、早期発見の重要性を広めてきました。

地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

少しでも多くの早期膵臓がんを見つけたい

先田医師:当院では、膵臓がんがステージIで見つかる方は年間で約3割、7割以上はステージII以上です。y-epadのプロジェクトを通して少しでも早く、できればステージ0の方を拾い上げていきたいと考えています。ご紹介いただく患者さんの大半はがんではありませんが、私たちは「どうして送ったのか」とはいっさい言いません。検査した結果、何もないのが一番で、患者さんも喜びます。先生方が気軽にご紹介いただいた中に、わずかでも早期がんの方を見つけるのがプロジェクトの目的です。

開業医の先生に精密検査のご依頼をいただき、手術後にお戻ししてといった密な連携がスムーズにできる関係性が理想です。手術後、何もなければ地域の先生方にいつも通り診療していただきます。必要な場合、日頃は地域の先生に診ていただき、定期的に当院で画像診断する「二人主治医制」で診療します。いずれにしても必ずお戻しする方針です。

地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

原医師:病院を受診していない方は、なかなか早期に膵臓がんを見つけられません。肺がんには胸部レントゲン、大腸がんに対しては検便といった健診がありますが、膵臓がんには決まったスクリーニングが確立していません。人間ドックや健康診断では腹部超音波検査が含まれていない場合もあります。y-epadのプロジェクトを利用して、膵臓がんを早期発見できればと考えています。がんが見つからず、膵嚢胞や慢性膵炎のような膵臓がんのリスク因子が分かった場合、当院がご一緒にフォローアップさせていただきます。紹介先としては、消化器内科および消化器外科のほか、医療連携室が窓口です。医療情報提供書は、横浜市が作成したy-epadの書式もありますし、自由に書いていただいても構いません。

杉田医師:膵臓がんは基本的に長い期間のフォローが必要です。10年後に再発する方もいらっしゃるので、大腸がんや胃がんの地域連携パスのような形でお返しするのは難しいかもしれません。手術後、手術の内容や経過を報告させていただき、当院では3か月に1度程度の定期的な診察を行います。日常的な診療は地域の先生にお願いして、お困りごとがあればすぐにご連絡いただき、病院とクリニックの両方で患者さんを支える形を考えています。私は当院に赴任して10年を過ぎますが、10年無事に経過している方も少しずつ出ており、定期的な経過観察を終了する場合は完全にお戻ししています。

地域の先生と連携して膵臓がんを早期発見し、1人でも多くの患者さんを救いたい

ご紹介への感謝を胸に、高度な治療でお応えします

先田医師:地域の先生方には、大切な患者さんをご紹介いただき、本当に感謝しています。当院は救急病院というイメージが強いようですが、がん診療に対しても、高度な治療を提供できる体制です。特に、膵臓がんをはじめ肝胆膵領域の治療には専門性を持って取り組んでいます。早期膵臓がんは基本的に無症状なので、ご紹介いただいた患者さんががんではない確率が他のがんより高いと思いますが、早期膵臓がんを見つけるためなので構いません。ぜひ、気軽にご紹介ください。

横浜市立みなと赤十字病院

横浜市立みなと赤十字病院は救急・高度急性期とがん医療を担う地域の基幹病院です。「断らない医療」を掲げ、国からS評価を受けた最高水準の救命救急センターや、手術支援ロボットなどの高度医療体制を備えます。

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