サービスサイトはこちら
機能温存と精度にこだわり、臨床・研究・教育の三輪で泌尿器科医療を牽引する

Doctor's interview

YOSHIMASA
ONO

東京医科大学病院
副院長/泌尿器科 診療科長

機能温存と精度にこだわり、臨床・研究・教育の三輪で泌尿器科医療を牽引する

東京医科大学泌尿器科は、ロボット支援手術をいち早く導入した歴史を持ち、前立腺がん・腎臓がん・膀胱がんをはじめとする泌尿器疾患に対して専門性の高い治療を提供しています。大野芳正主任教授は「患者さん一人ひとりの背景に寄り添い、機能を残す手術にこだわる」という姿勢を軸に、日々の診療から生まれた臨床疑問を研究へとつなげ、泌尿器科領域の発展に貢献してきました。融合画像ガイド下生検による精度の高い前立腺がん診断、AI活用による膀胱がん再発予測など、実臨床に直結する研究成果が地域連携を支えています。

機能温存と精度にこだわり、臨床・研究・教育の三輪で泌尿器科医療を牽引する

患者さんの生活背景をともに考え、よりよい治療方針を決める

私が大切にしているのは、病気だけを診るのではなく、年齢・生活環境・ご家族の状況・仕事のサイクルといった背景を把握した上で、患者さんと十分に相談しながら治療方針を決めることです。大学病院の使命として高度な医療を提供しつつも、その根底には「その方にとって何が最善か」を問い続ける姿勢があります。

東京医科大学泌尿器科では、先進的な治療を積極的に取り入れてきました。私の先代にあたる橘政昭前教授は、ロボット支援手術を日本に導入した先駆者です。現在、ロボット支援手術は前立腺にとどまらず腎臓・膀胱にも適応が広がっており、当科でも継続的に取り組んでいます。

最近、当科が注力しているのは「融合画像ガイド下生検」です。MRIと超音波画像を重ね合わせることで見落としが少なく、がんの部位を正確に把握できます。この精密な情報が、機能を温存する手術計画の基盤となります。臨床・研究・教育の三つの柱を担う診療科として、患者さんへの貢献を続けていきたいと考えています。

機能温存と精度にこだわり、臨床・研究・教育の三輪で泌尿器科医療を牽引する

豊富な手術経験を活かし、機能温存と精度を追求する

当科はロボット支援手術を早期に導入したため、豊富な手術実績を積んでいます。半数以上のスタッフがほぼ一通りの術式に対応でき、治療の精度にこだわる文化が根付いています。前立腺がんの手術では、病巣を正確に切除するだけでなく、術後の尿失禁を防ぐために必要な組織を温存する手技を重視しています。

ロボット支援手術の利点は、10倍の拡大視野と精緻な動作が可能な点です。出血を抑えた精確な手術が実現し、術者間の技術の均てん化にも貢献します。ただし、最終的な判断は術者に委ねられており、同じ手順でも結果に差が生じることは事実です。

私は手術ビデオでトレーニングをする際、常に「この先どうなるか」を考えながら映像を追います。スタッフの指導でも、一つひとつのステップで先を読んで手術を進められる外科医の育成を目指しています。若い医師には実際の技量を見た上で一言コメントを伝え、自分で考えて成長する力を引き出す指導を心がけています。答えをすべて口にすると自律した学びが育たないため、次の手術でうまくいくための気づきをヒントとして渡すようにしています。

臨床の疑問を研究へ。NLR・AI・miRNAで泌尿器がん診療を前進させる

私は腎臓がんの病理研究で医学博士を取得して以来、臨床医として患者さんのデータを積み上げる研究を大切にしてきました。日々の診療に生まれる疑問を解くことが、より良い治療への近道だと考えており、教室のスタッフにも臨床と研究の両方に取り組む姿勢を伝えています。

医師2〜3年目から東京医大の腎臓がんデータを自ら収集し続けていた時期に、学内学会で好中球リンパ球比(NLR:Neutrophil-to-Lymphocyte Ratio)に関する発表を耳にしました。泌尿器科領域でのNLR報告がないことに気づき、手持ちのデータを解析したところ、NLRが腎臓がんをはじめ泌尿器がんの再発予測に有用であることが分かり、論文として報告しました。

別の症例では、高齢で腎機能が低下した患者さんの腎摘除後に腎機能がほとんど変化しなかったことを不思議に思い、データを調べ直したところ、腫瘍の大きさが術後に残存する腎機能に影響することを見出し、研究発表しました。

最近では、平沢陽介講師を中心に、尿中miRNAを用いて進行性尿路上皮がんに対する免疫療法の効果を予測する研究を論文にまとめました。尿は非侵襲的に採取できる利点があり、免疫療法の適応選択に活用できれば患者さんの負担軽減につながると期待しています。

AIを活用した研究では、がん細胞核の顕微鏡写真を機械学習で解析し、筋層非浸潤性膀胱がんの早期再発を予測する手法を発表しました。この疾患は再発率が高く、術後のBCG(ウシ型弱毒結核菌)膀胱内注入療法が再発予防に用いられますが、副作用が強いという課題があります。私たちの手法を活用することで、追加治療が必要な患者さんを絞り込み、過不足のない治療選択につなげることを目指しています。

機能温存と精度にこだわり、臨床・研究・教育の三輪で泌尿器科医療を牽引する

がん研での原体験、デンマーク留学。指導者への感謝を次世代へ

修行時代でもっとも鮮明に残っているのは、医師2年目に旧がん研究会附属病院(現がん研究会有明病院)に勤務していたときの経験です。京都大学から来ていた山内民男先生のもとで1年間働き、20代で長期入院しながら抗がん剤治療を続けていた患者さんを担当しました。その方が2回の手術を経て退院された際、ご家族とともに涙を流して感謝されていた場面は今も忘れられません。山内先生の厳しくも熱意ある指導と、患者さんに感謝された経験が、医師としての原点となっています。

デンマークへの留学は、恩師の知人であるクリステンセン教授との偶然の食事の席がきっかけでした。腎臓の細胞生理学を専門とするクリステンセン教授のもとで、腎臓におけるタンパク質の再吸収に関するテーマを与えられ、機械のセッティングから試行錯誤して研究を進めました。2年間の予定が1年に短縮されましたが、自由に考えて方向修正しながら成果をまとめる経験ができたことは、今の研究姿勢の土台になっています。

これまでお世話になった指導者への感謝を、次世代の教育に還元していきたいと思います。

融合画像ガイド下生検で前立腺がんを正確に診断し、機能温存手術へつなげる

当院では数年前からMRIと超音波画像を融合した「融合画像ガイド下生検」を実施しており、従来法より正確な生検が可能になっています。

地域の先生方からご紹介いただく機会で多いのは、健康診断や検診でPSA(前立腺特異抗原)の異常値が指摘されたケースです。PSAが高値の場合はまずMRIを撮影して生検の必要性を判断しますが、読影における偽陽性・偽陰性の問題を排除することが課題です。私はMRI画像と見かけの拡散係数の関係を研究し、画像診断で重要な指標を示す論文を発表しました。2026年6月には、その内容をカラーマップで可視化した論文を発表し、東京医科大学のプレスリリースにも掲載されています。

私たちの目標は、患者さんに不要な検査を課さず、見落としの少ない精度の高い診断を届けることです。正確な病変の把握は、神経を温存して機能を残す手術にも直結します。前立腺がんは進行が緩やかなため、年齢や状況によっては経過観察を選ぶ場合もあります。個々の患者さんの状況に応じた対応を続けていきます。

二人主治医制で地域の先生と役割を分かち合い、患者さんを継続的に支える

地域の先生方には、ぜひ気兼ねなくご紹介ください。当院で専門的な検査と治療を行い、安定期はかかりつけの先生にフォローをお願いする、二人主治医制の形で連携したいと考えています。専門的な治療が再び必要になった際は、いつでもご紹介いただけます。

高齢化に伴い、がん以外にも排尿障害や夜間頻尿でお困りの患者さんが増えています。気になる症状のある患者さんがいらっしゃれば、どうぞお気軽にお声かけください。どうぞよろしくお願いいたします。

機能温存と精度にこだわり、臨床・研究・教育の三輪で泌尿器科医療を牽引する

東京医科大学病院

東京医科大学病院は新宿副都心に位置する「特定機能病院」であり、都区西部「地域がん診療連携拠点病院」に指定されています。

一覧を見る