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内科・外科・多職種が一体となるONE TEAMで、肝胆膵領域の患者さんによりよい医療を

Doctor's interview

YUICHIRO
MIHARA

国立国際医療センター
肝胆膵外科 診療科長

内科・外科・多職種が一体となるONE TEAMで、

肝胆膵領域の患者さんによりよい医療を

国立国際医療センター肝胆膵外科では、ナショナルセンターとしての総合力を軸に、手術の要否の見極めから複雑な多疾患併存症例の管理まで、診療科と職種の壁を越えたチーム医療を実践しています。

診療科長の三原裕一郎先生は「医療は患者さんの人生に関わる仕事」という信念のもと、臨床・研究・地域連携の三つを一体として推進。AI活用の超音波診断支援や神経内分泌腫瘍(NET)治療の研究など、日常診療に直結する成果を積み上げています。

「ONE TEAM」で一人ひとりの患者さんにとってよりよい治療を

私が大切にしている診療の軸は、肝胆膵外科単独で完結させるのではなく、

消化器内科・放射線科・多職種を含むチームで治療方針を議論することです。

肝胆膵領域の疾患は複雑で、手術だけで解決できるケースばかりではありません。

患者さんごとに病状・併存疾患・生活背景が異なるため、

さまざまな専門家の視点を集めて「この方にとって何が最もよい治療か」を考える姿勢を貫いています。

外科医として特に重視しているのは、手術の必要性の見極めです。

手術は患者さんの体に一定の侵襲を与える医療行為であり、手術自体が目的ではありません。

手術以外の選択肢も含めて十分に検討し、手術によって得られる利益が不利益を上回ると判断した場合に初めて提案します。

内科・外科・多職種が一体となるONE TEAMで、肝胆膵領域の患者さんによりよい医療を

手術を行う際は、開腹・腹腔鏡・ロボット支援それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明し、患者さんとともに術式を決定しています。ロボット支援下手術は膵体尾部切除や肝切除で導入をすすめており、2026年度中にはヘルニア手術にも展開予定です。安全性を最優先に、重篤な合併症を防いだ上でしっかりと病変を切除し、療養中の生活の質を高める手術を目指しています。

当科のスタッフはそれぞれ異なる専門性と得意分野を持っており、症例ごとに適した人員配置で診療にあたっています。診療科全体で密に情報を共有し、ダブル・トリプルチェック体制を徹底する。個々の外科医の力に依存せず、チーム全体の力を引き出すことが私の基本方針です。

私が赴任してもっとも印象的だったのは、職種や診療科の垣根が低く、患者さんのためにという共通の目的で各専門家と自然に議論できる文化があることでした。地域の先生方から「手術できるか分からない」「併存疾患が多くて迷う」「どこまで介入すべきか悩んでいる」といった声をいただくことがあります。そのような状況こそ、ぜひお気軽にご相談ください。

内科・外科・多職種が一体となるONE TEAMで、肝胆膵領域の患者さんによりよい医療を

ナショナルセンターとしての総合力。複雑症例を丸ごと支える体制

当院の最大の特徴は、ナショナルセンターでありながら高いレベルの総合病院機能を併せ持つ点です。日本のナショナルセンターの多くは特定疾患領域に特化していますが、当院は幅広い診療科が連携して患者さんを支えられる総合力を有しています。

肝胆膵外科の患者さんには、糖尿病・心疾患・呼吸器疾患・腎機能障害といった複数の併存疾患を抱える方や、高齢の方が多くいます。悪性腫瘍の方では栄養状態の低下や感染症リスクも加わります。侵襲性の大きい手術を安全に行うため、術前評価から周術期管理・集中治療・リハビリテーション・栄養管理まで、多くの診療科と専門職種が連携する体制を整えています。

当科は支援を受けるだけでなく、他科への協力も積極的に行っています。例えば、お腹に大量の粘液が生じる希少疾患・腹膜偽粘液腫を扱う腹膜センターでおこなわれる手術での際には肝胆膵脾に関連する領域の手術操作で当科のスタッフが参加しています。

肝胆膵外科の実力を測るうえで重要なのは手術件数や難易度だけではなく、多職種・多診療科が議論して患者さんにとってよりよい治療を決定できる体制そのものです。今後も当院の総合力を活かし、水準の高い治療を続けていきます。

肝胆膵領域は治療方針の決定が難しい症例が多く、当院では消化器内科・放射線診断科・放射線治療科を交えた肝胆膵ユニットカンファレンスを定期開催しています。画像解釈や手術適応で悩むケースも、複数の専門家が議論することで外科単独ではたどり着けない治療方針が見えてきます。結果的に手術になる場合も、化学療法や内科的治療を優先する場合もあります。ガイドラインだけでは決められない個別の判断がここで生まれます。

内科・外科・多職種が一体となるONE TEAMで、肝胆膵領域の患者さんによりよい医療を

肝胆膵ユニットカンファレンスとMDTカンファレンスで「患者さん中心の医療」を実践

さらに重要な役割を果たすのが、MDTカンファレンス(多職種チーム:Multidisciplinary Team)です。

医師に加え看護師・薬剤師・栄養士・リハビリテーションスタッフ・医療ソーシャルワーカーが参加し、生活環境・介護体制・就労状況といった社会的背景も含めて支援方針を検討します。治療の安全性を高めるだけでなく、患者さんが安心して療養生活を送れる環境づくりに直結しています。

当院は国際医療を担うナショナルセンターとして外国人患者さんの診療経験も豊富です。多言語対応・医療通訳体制が整っており、文化的背景にも配慮した診療環境を提供しています。

AI超音波診断支援・NET肝転移・膵島移植。臨床に還元する研究

私は、臨床と研究を往復しながら肝胆膵領域の発展に貢献したいと考えています。現在取り組む研究の一つが、東京大学と連携して開発を進めているAI活用の超音波画像診断支援システムです。

超音波検査による肝腫瘍の診断は医師の経験に依存する部分が大きく、見落としのリスクが課題です。AIが画像を自動解析して腫瘍の可能性を抽出する仕組みが実用化されれば、専門医でなくても異常に気づき、専門施設へ早期に紹介できるようになります。

AIが診断を下すのではなく、これまで見逃されていたケースを拾い上げるツールとして地域連携をサポートする役割を想定しています。

もう一つの柱が、神経内分泌腫瘍(NETNeuroendocrine tumor)の肝転移に対する治療研究です。NETは比較的希少な腫瘍で、治療方針の決定に専門的な判断を要します。

内科・外科・多職種が一体となるONE TEAMで、肝胆膵領域の患者さんによりよい医療を

消化器内科・放射線科と連携し、外科切除が可能な症例は積極的に手術を検討します。

手術だけでは対応が難しい症例には薬物療法と放射線療法を組み合わせた集学的治療を実施しており、当院はペプチド受容体放射線核種療法(PRRT)を実施できる施設でもあります。他大学との綿密な連携も行なっており、現在ではNET新規肝切除治療の効果について共同研究を進めています。経過観察から積極的な新規治療まで、幅広い選択肢を提供できる点が当科の強みです。

また、私は東京大学で肝移植の臨床を積み、大学院ではiPS細胞を用いた膵島細胞の分化誘導研究に取り組んでおりました。当院には国内の膵島移植分野をリードする霜田雅之先生が在籍しており、肝胆膵外科と密に連携する新領域を形成しています。

遺伝性膵炎に対する自家膵島移植では、当科が切除した膵臓から霜田先生が膵島を分離し、放射線科が門脈内に注入するプロトコールで実施しています。大学で培った移植医療の経験を膵島移植の分野でも積極的に活かしていきたいと考えています。

GVHD治療での原体験。チームと患者さんと限界に向き合った8か月

大学病院の肝胆膵・移植外科に在籍していた頃、今も強く印象に残る患者さんがいます。肝移植後にGVHD(移植片対宿主病:ドナー由来のリンパ球が患者さんの体を攻撃する合併症)を発症した方です。当時、国内に確立した治療法がなく、救命が難しいとされていました。

私は文献と海外の報告例を徹底的に調べ、限られた症例の中に共通する治療戦略のパターンを見出しました。翌朝、上司である國土典宏教授に治療方針を提案すると、通常の移植医療の枠組みを超える可能性があるため、院内での慎重な検討が必要となりました。國土教授をはじめ医局員全員が全力でサポートする意思を示し、倫理委員会の承認を経てチーム全体で治療を開始しました。

経過は厳しく、重度の消化管出血と全身状態の悪化が続き、この数カ月間は家族が起きる前から出勤して治療にあたりました。

治療は移植外科医一人では到底不可能で、集中治療科・消化器内科・多職種の医療スタッフが各々の立場で参加することで初めて成立すると痛感した時間でした。

激しい腹痛と日々変わる容体の中、患者さんも精神的に追い詰められていきました。私も限界を感じ始めていたある日、二人で家族の話をしました。生まれたばかりのお子さんがいると知り「あなた一人の命だけでなく、生まれたばかりのお子さんとの人生も守るために一緒に頑張ろう。3歳の保育園の運動会でパパとして走ろう」と約束しました。

内科・外科・多職種が一体となるONE TEAMで、肝胆膵領域の患者さんによりよい医療を

長い集中治療の末、病状は回復し、異常リンパ球が消失して退院が叶いました。私は直前に異動したため退院の瞬間は同僚から聞きましたが、数年後に再び大学病院に戻ったとき、外来の廊下で見慣れた顔に声をかけられました。

「先生、ちゃんと約束、果たしましたよ」と笑顔で近づいてきてくれたのです。外科医になってよかった、この仕事をしていてよかったと、心から感じた瞬間でした。現在も再発なく社会復帰され、ご家族と日常生活を送っています。

この経験から、医療には確かに限界があります。ただ、患者さんと医療チームが一緒に向き合えば、その限界を越えられる場面がある。医療とは病気を治すだけでなく、患者さんの人生そのものに関わる仕事だと、あらためて実感した経験でした。

地域と専門施設がつながり続ける。生涯フォローアップの体制づくり

地域の先生方との連携は「どちらが主治医か」ではなく「どう役割を分担するか」という発想で考えています。

たとえば、肝細胞がんは一度治療して終わりではなく、慢性炎症や線維化を背景に新たな病変が発生しやすい疾患です。

生涯にわたるフォローアップが不可欠であり、そのすべてを専門施設だけで担うことはできません。

併存疾患の管理や日常的な健康状態の把握は地域の先生方の得意分野であり、

患者さんにとってもかかりつけ医で継続的なケアを受けられることは大きな安心につながります。

一方、肝がんの再発評価にはCTMRIによる画像診断が欠かせず、当院のような専門施設への定期受診も必要です。

腹部超音波による初期評価を地域の先生にお願いし、異常があれば当院で精査するという柔軟な分担も可能です。

紹介の有無にかかわらず、検査結果や治療内容を適切にフィードバックし、

診療情報を切れ目なく共有する体制を整えることが専門施設の役割だと考えています。

地域と専門施設がつながり続ける医療の仕組みを、今後さらに強化していきたいと思います。

少しでも不安を感じた段階」が紹介のタイミング。気兼ねなくご相談を

地域の先生方は、同じ患者さんを一緒に診ていくパートナーです。

お伝えしたいのは「少しでも不安を感じた段階でご相談ください」というメッセージです。

肝胆膵領域の疾患は、検査値や画像所見だけでは診断・治療方針の判断が難しいケースが多く、先生方が少しでも違和感を覚えた段階でのご紹介が、結果的によいタイミングになります。

腫瘍マーカーや肝機能・膵機能が正常でも、がんが潜んでいる場合があります。

当科への直接ご依頼で多い胆嚢結石・胆嚢ポリープは手術適応の判断が難しく、経過観察か手術かで迷われることもあるでしょう。

鼠径ヘルニア・臍ヘルニア・腹壁瘢痕ヘルニアといった腹壁ヘルニアも同様です。

「手術が必要かどうか分からない」段階こそ、ぜひご相談いただきたいと考えています。

消化器内科・外科のどちらへのご紹介でも、両科が密に連携して治療方針を検討しますのでご安心ください。

どうぞお気軽にお声かけいただけますと幸いです。

国立国際医療センター

高度急性期医療と先進研究を担う特定機能病院。救急・感染症・がん・国際診療など幅広く強みを持つ。 2025年4月1日、国立国際医療研究センターと国立感染症研究所が統合し、「国立健康危機管理研究機構(JIHS)」が設立。

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