論理的かつ柔軟な視点で、
患者さんに納得される呼吸器内科治療を
武田総合病院呼吸器内科では、喘息・COPD・肺がんから希少な間質性肺疾患まで、幅広い呼吸器疾患を専門的に診療しています。部長の前川晃一先生は「論理的かつ柔軟に」をモットーに、データと患者さんの意向の両方を大切にした治療を実践。副部長の仲恵先生は医学的な正しさに加え、一人ひとりの患者さんが何を望んでいるかを常に問い直しながら、新しい治療にも積極的に取り組んでいます。
幅広い専門性にやりがいを感じ、呼吸器内科の道へ
前川部長:
呼吸器内科を選んだのは、扱う疾患の幅広さに惹かれたからです。喘息をはじめとするアレルギー疾患、感染による肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)といった気道疾患、そして肺がんまで、多くの分野をカバーしています。その分、内科医として幅広く研鑽を続ける必要がありますが、肺や気管支の症状を正確に診るためには、診療科の枠にとどまらず知識を深めることが欠かせません。
例えば、60代の女性患者さんが歩行時の息苦しさで来院され、低酸素血症のため入院して検査を進めると、肝硬変が根本にあることが分かりました。血小板減少で血液内科に入院中、動作時の低酸素症状があって当科に紹介されたのですが、肺のCTや各種検査では異常が見つからない。科内でカンファレンスを重ねて非アルコール性脂肪肝炎(NASH)由来の肝硬変を疑い、最終的に肝肺症候群(HPS)と診断しました。肝肺症候群は肺内の微小血管が異常拡張することで酸素化不良をきたし、一般的な予後は厳しい状態です。私たちが治療の手を尽くした結果、この患者さんは九州の大学病院で肝移植を受けることができました。
私が大切にしている「論理的かつ柔軟に」という姿勢は、こうした症例から培われています。医療は科学的なデータが基盤ですが、相手は人間である以上、同じ治療でも結果は一様ではありません。
最大限の効果を追求しながら患者さんの意見を取り入れ、年齢や合併症といった制約があっても、その方のためにできることを柔軟に模索し続けています。COPDのように非可逆性で長期管理が必要な疾患を丁寧に診て、患者さんから「納得できた」と言っていただけるとき、医師としての醍醐味を感じます。
仲副部長:
研修医時代に大学病院と市中病院でそれぞれ1年間を過ごし、呼吸器内科を選んだのはその頃に出会った先輩医師の影響が大きいです。感染・免疫・アレルギー・腫瘍と守備範囲が広く、興味を持てる疾患から専門を定めることができると感じました。
医師になってからは、常に新しい知見を学びながら個々の症例から得た経験を大切にするよう心がけています。診療の基盤はガイドラインですが、臨床では知識だけではたどり着けない正解が存在します。さらに、医学的に正しいとされることでも、「この患者さんはそれを望んでいるか」「本当に必要なのは何か」を直接問い返す姿勢を常に意識しています。
急性期から緩和ケアまで、専門性の高い呼吸器診療を幅広く
前川部長:
急性呼吸不全、気管支喘息重積発作、慢性呼吸不全急性増悪といった救急対応が必要な急性疾患から、COPD・特発性間質性肺炎・肺結核後遺症といった慢性呼吸器疾患まで対応しています。救急医療では内科系の各診療科と連携し、24時間体制を維持しています。呼吸器感染症にも迅速に対応しており、適応があり問題がなければ新薬を積極的に導入する方針です。最近では肺線維症の新規薬剤を取り入れました。
びまん性肺疾患にも積極的に取り組んでいます。びまん性肺疾患は病変が肺全体に広がる疾患の総称で、特発性間質性肺炎のほか膠原病による肺疾患・サルコイドーシス・薬剤性肺炎など多様な原因があり、確定診断が治療方針の分岐点となります。当科では、気管支鏡検査で診断がつかない間質性肺炎のケースに対し、全身麻酔下でVATS(ビデオ補助胸腔鏡下手術)による肺生検を行い、確定診断につなげています。
肺がんに対しては画像診断と気管支内視鏡を組み合わせて迅速に診断し、呼吸器外科と連携して手術・レーザー治療・化学療法を行っています。がんによる気道狭窄には気管支内ステント留置も対応可能です。積極的治療から支持療法への移行が必要な段階になった患者さんには、ベストサポーティブケア(BSC)と緩和ケアを提供しています。
高齢の患者さんが多い慢性呼吸器不全に対しては、クリニカルパスを活用した包括的呼吸リハビリテーションを提供しています。在宅酸素療法やNPPV(非侵襲的陽圧換気療法)も積極的に活用し、生活の質を保ちながら療養できるよう支援しています。
また、当科は京都大学医学部附属病院呼吸器内科と連携しており、肺移植や希少疾患の治療が必要な際はご紹介しています。
専門検査から治療方針の決定まで、多職種・他科連携で支える
前川部長:
当科では、スパイロメトリー・気管支内視鏡検査・血管造影検査といった一般的な呼吸器内科の検査を一通り実施しています。肺がんの治療では遺伝子検査の結果をもとに治療薬を選択し、細胞診で的確な治療方針につなげています。より高度な検査が必要な場合は大学病院へご紹介します。
治療方針はガイドラインと遺伝子検査の結果を基盤にしており、選択肢が複数ある場合には科内カンファレンスで丁寧にディスカッションして決定します。
当院は診療科間の垣根が低く、相談しやすい環境です。特に呼吸器外科とは定期カンファレンスを設けているほか、緊急性の高い症例では担当医が直接呼吸器外科医に相談できる関係を築いています。例えば、細菌性胸膜炎が重症化した膿胸でドレナージや抗菌薬が奏効しない場合、迅速に外科的処置へ移行できます。リンパ節腫脹の組織採取、腹腔鏡下生検、気胸の手術なども状況に応じてタイムリーに対応しています。
仲副部長:
患者さんの日常生活の実態——どの程度動けるか、トイレに自力で行けるかといったことは、医師だけでは把握しきれません。看護師やメディカルソーシャルワーカー(MSW)と連携して情報を集め、その方の生活に合った医療を提供しています。退院後の困りごとへの対応やリハビリテーション支援も、多職種が継続的にサポートしています。
地域の先生方から緊急のご相談があった際は、連携室が窓口として各診療科につなぎます。当院の連携室は対応が迅速で、逆紹介の際も頼りにしています。
前川部長:退院後の生活環境の調整や逆紹介は、MSWが中心となって進めています。患者さんの状況とご家族の希望を丁寧に把握した上で動いてくれるため、医師側も安心して任せられます。
咳が1か月以上続く、気になる症状があればお気軽にご紹介を
前川部長:
ご紹介いただく患者さんで最も多い主訴は咳です。1〜2週間で自然に改善すれば風邪が疑われますが、発熱を伴う場合は肺炎の可能性があります。咳が1か月以上続く場合は喘息・肺がん・その他の器質的病変が潜んでいる可能性が高いため、ぜひご紹介ください。
間質性肺炎は治療の難しい疾患ですが、早期から投薬を開始すると予後の改善が期待できる薬剤が登場しています。気になる患者さんがいらっしゃれば、早めのご紹介をお願いします。
仲副部長:
呼吸器疾患の可能性があると感じられた時点で、ご紹介いただいて構いません。喘息では抗体製剤(生物学的製剤)の登場により、コントロール困難例の予後が大きく改善しています。当院で治療方針を整えた後は、維持期は近くの先生に診ていただき、悪化時や治療変更が必要なタイミングで再紹介いただく形が、患者さんの通院負担を減らせるでしょう。
在宅医療との連携も今後増えていく分野ですので、ぜひご一緒できればと思います。
前川部長:
喘息の患者さんには働き盛りの若い方も多く、平日昼間の受診が難しいケースがあります。夜間・土曜日も診療している開業医の先生は、そうした方々にとって頼れる存在です。COPDや喘息など、外来で長期フォローが必要な疾患が多い呼吸器内科だからこそ、地域の先生方との役割分担が力を発揮します。
抗がん剤が次々に登場する一方、副作用への対応も重要です。当院は総合病院として各診療科が揃っており、例えば神経症状が出た場合はすぐに神経内科と連携できます。専門性の高い治療を当院で完結できることが、紹介先病院への安心感につながると考えています。地域の先生方と役割を分かち合い、一人でも多くの患者さんに適切な医療が届くようにしていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
医療法人 医仁会 武田総合病院
「地域医療支援病院」として、高度医療を核に、総合的な診療体制を確立。 地域の健康文化の発信基地として、人々のからだと心のケアを支える。
所在地
〒601-1495 京都市伏見区石田森南町28-1
病床数
490床
URL
https://www.takedahp.or.jp/ijinkai/