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より質の高い治療を目指し、総合病院として手を尽くして膵臓がんに立ち向かう

Doctor's interview

GASTROENTEROLOGY
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より質の高い治療を目指し、総合病院として手を尽くして膵臓がんに立ち向かう

浜松医療センターでは、総合病院としての強みを生かし、膵臓がんに対する集学的治療に力を注いでいます。膵臓がんは治療が難しく予後も厳しいため、早期発見と早期治療が何より大切です。鈴木安曇医師は、超音波内視鏡(EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、超音波内視鏡下穿刺吸引EUS-FNA)、がん遺伝子パネル検査などの先進的な技術を用いて精度の高い診断を行い、患者さんのQOLを高める治療に取り組んでいます。落合秀人医師は、ガイドラインで推奨される治療法に則り、外科手術だけでなく抗がん剤や放射線治療も併用し「少しでも生存率を上げるために手を尽くしたい」と語ります。

膵臓がんは治療が難しく、予後の悪いがんの代表格で早期発見が大切

鈴木 安曇 医師:

膵臓がんは予後の悪いがんの代表格であり、全国がん登録の最新のデータでは、5年生存率は12%前後と報告されていますが、早期発見が治療成績を大きく左右します。5年生存率は、がんの大きさが1cm以内で見つかれば約80%、2cm以内であれば50%と報告されており、それ以上の大きさになると一気に下がります。

膵臓がんは特異的な症状に乏しいため、その拾い上げには膵臓がんの可能性を考慮して検査を行うことが重要です。特に膵臓がんの高リスク患者に対して定期的なスクリーニング検査を行うことにより、早期発見につながる可能性があります。

膵臓がんのリスク因子として、まず家族歴があります。膵臓がん患者さんの5~10%において、第一度近親者と呼ばれる親、兄弟、子どもに膵臓がんの家族歴があります。第一度近親者に散発性膵臓がんの患者さんがいる方の膵臓がんリスク1.5〜1.7倍です。第一度近親者に膵臓がんの方が2人以上いる家系で発症した場合は、家族性膵臓がんと定義されます。家族性膵臓がんの家系では、第一度近親者に膵臓がんの方が1人いれば3.5倍、2人で5.4倍、3人で10.8倍と、数が多いほどリスクが大きく高まります

その他、糖尿病、肥満、喫煙や大量飲酒も膵臓がんのリスク因子となります。特に糖尿病を発症して1年未満の方では、膵臓がん背景として発症したケースもあり、リスクは6.7倍に上ります。また新規発症だけではなく、急に血糖コントロールが不良となった方なども要注意です。

より質の高い治療を目指し、総合病院として手を尽くして膵臓がんに立ち向かう

膵臓がんが疑われたら、早めに精度の高い診断を

鈴木 安曇 医師:

膵臓がんの検査には、CA19-9やCEAといった腫瘍マーカーが用いられますが、検出感度は高いものでも70~80%と報告されており、2cm以下の小さながんでは陽性率は約50%程度です。したがって早期発見には適しませんが、腫瘍マーカーに異常値が出た際は、膵臓がんも念頭にした精査が必要です。

膵臓がんの精査で特に精度が高いのは、超音波内視鏡(EUS:Endoscopic Ultrasound)です。当院では最近、EUS観測装置新しくなり、造影EUS検査できるようになりました。EUSはCTと比べて感度や特異度が高く、2cm以下の小さながんも見つけられます。膵臓がんそのものを発見できなくても、膵管の狭窄・拡張や膵実質の限局的な萎縮、嚢胞といった所見からがんが見つかる場合あります。

膵臓がんの病理診断ではEUS腫瘤が描出できれば超音波内視鏡下穿刺吸引EUS-FNA)が適しており、感度は約90%と有用な検査法です。またEUS-FNAの偶発症発症率は1%以下であり、穿刺ルート部の再発(Needle tract seeding)も0.3%と報告されており、安全性高いと考えられています。ただ、ステージ0の上皮内がんや1cm以下の小さな腫瘍など、EUSで腫瘤の描出が困難な場合には穿刺できないため、ERCPによる膵液細胞診を行います。ERCP時に1回のみの膵液採取ではがんの陽性率が低いため内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)を行い膵液を複数回採取する連続膵液細胞診(SPACE:Serial pancreatic juice aspiration cytological examination)を行うことが多くなっています。こうした精査によってステージ0の上皮内がんや1cm以下のがんが見つかれば、膵臓がんの根治が期待できます

当院では、がん遺伝子パネル検査にも対応しています。穿刺針の進歩によって、EUS-FNAで十分な組織量が採取できるようになってきており、内視鏡的に採取した検体を用いてがんゲノムを調べ、その患者さんの遺伝子変異を特定することが可能です。

膵臓がんの早期発見のために、開業医の先生方には早めにご紹介いただけますと幸いです。

より質の高い治療を目指し、総合病院として手を尽くして膵臓がんに立ち向かう

治療は外科手術が中心となるが、ガイドラインで推奨される抗がん剤や放射線治療の併用も重要

落合 秀人 医師:

当院は、日本肝胆膵外科学会が認める高度技能専門医の修練施設です。良好な治療成績を収められているのは、当科の努力だけでなく、鈴木先生をはじめ消化器内科の先生方や抗がん剤治療に携わる薬剤師や看護師の方々、放射線治療科の先生やスタッフのおかげだと感じています。

現在の医療では膵臓がんに対する根治的治療の中心は外科的切除であり、その基本は「R0(アールゼロ)切除」を目指すことです。R0切除とは、肉眼だけでなく顕微鏡でも腫瘍を取り切れたと確認できる、がんの遺残がない手術を指します。この原則は抗がん剤や放射線治療が進歩した今も30年以上前から変わりません。

一方で、抗がん剤の進歩は目覚ましく、術前・術後の使用によって膵臓がんの治療成績は確実に向上しています。

切除可能なステージⅠの膵臓がんに対する術前の抗がん剤使用は、以前のガイドラインから弱い推奨でしたが、2025年の膵癌診療ガイドラインではエビデンスレベルが上がり、使う抗がん剤の組み合わせも増えました

より質の高い治療を目指し、総合病院として手を尽くして膵臓がんに立ち向かう

膵臓の周囲には、温存(切除せずに残すこと)しなければならない大切な血管が多くあります。膵臓がんが温存の必要な血管に接触あるいは巻き込んでいる場合、血管残してがんを切除しても多くが再発するため、以前ほとんどの患者さんが切除不能とされていました。今は術前の抗がん剤がしっかり効くことで、手術と術後治療で治癒される方も出てきています。がんが進行して他臓器に転移し、抗がん剤治療しか手段がないと考えられた患者さんの中にも、抗がん剤の効果によって原発巣や転移巣を切除し、長期生存できる方が現れるようになりました。

また、R0手術ができた患者さんでも手術だけでは再発率は高かったのですが、補助療法として術後に抗がん剤をきちんと内服できると、治療成績は上がります。以前はとにかく癌を残さないように、できる限り広い範囲を切除するケースも多くありましたが、最近はR0切除ができれば、必要以上に広い範囲を切除せずに、術後にトラブルが起きないよう手術を心がけ、早期に体力を回復させ抗がん剤でがん細胞を叩く方向にシフトしてきています。ただし、抗がん剤が効かない場合もあるため、患者さんには十分にご説明することを心がけています。 

通常の放射線治療は単独使用よりも、抗がん剤と併用する化学放射線療法の方が、効果があると言われています。最近は、手術ができない大きな膵臓がんに用いる陽子線治療が保険適用となりました。

より質の高い治療を目指し、総合病院として手を尽くして膵臓がんに立ち向かう

総合病院として他科連携による集学的治療でよりよい医療を目指す

落合 秀人 医師:

当院では総合病院の強みとして、他科と連携した治療が可能です。たとえば、膵臓がんで胆管が狭くなると黄疸が生じて肝機能が悪くなり、抗がん剤治療や手術が難しくなります。黄疸のある方には、消化器内科で内視鏡によるドレナージ治療を標準的に行い、同時に生検も進めてがんによる狭窄かどうかを調べ、黄疸が改善した段階で速やかに次の治療(抗がん剤治療や手術)へと移ります。

また、術後は膵臓の組織が少なくなることで血糖の調整や栄養の吸収が難しくなるため、内分泌内科と連携して血糖をコントロールする体制を整えています。さらに、膵臓の手術で細い胆管や膵管と腸をつなぐ場合には、数年経つと徐々に狭窄してくる場合があり、鈴木先生をはじめ消化器内科の先生方に内視鏡による治療をお願いしています。

血管外科とは、門脈や動脈の再建を合同で行っています。最近は腹腔鏡やロボットによる低侵襲の治療が主流となっており、可能な限り低侵襲手術を心がけていますが、拡大手術が必要な方には開腹手術で対応する必要があります。進行した膵臓がんには拡大手術と集学的治療が基本であり、メリハリをつけて治療することが大切です。最近は80代でもお元気な方には膵臓がんの手術を行い、良好な成績得られています。

消化器内科で精密検査して、ステージ0やⅠといった早い段階の膵臓がんを見つけていただければ、腹腔鏡手術のような低侵襲の治療が可能です。しかし、多くの膵臓がんの方は進行して予後が厳しくなった段階で見つかっているのが実情です。気になる患者さんはぜひ検診やドック等を受けていただいて、異常があれば当院に受診いただきたいと思います。

膵臓がんの治療後に再発がなければ、多くの患者さんは日常生活を取り戻し、お仕事に復帰されています。入院期間は、膵頭部を切除する手術で約14日、膵尾部の手術で約10日が平均です。

より質の高い治療を目指し、総合病院として手を尽くして膵臓がんに立ち向かう

鈴木 安曇 医師:

当院では消化器外科、消化器内科、放射線診断科、病理診断科を中心に複数の診療科が集まり消化器がんに対する合同カンファレンス「キャンサーボード」を定期的に開いています。複数の診療科で検討することにより、最良の医療が提供できるよう努めています。また総合病院の強みとして、循環器のトラブルといった全身管理が必要なケースにも、多科連携で対応が可能です。

私が専門とする胆膵内視鏡は、手術後のトラブルにも対応しています。たとえば、術後の患者さんに胆管ドレナージを行う場合、これまでは経皮経肝的ドレナージが標準的なドレナージ法でしたが、体表からチューブが出る状態となり、QOLが下がってしまいます。当院では超音波内視鏡を用いた経消化管的胆管ドレナージや、バルーン小腸内視鏡を用いた内視鏡的ドレナージも行っておりますので、QOLを損なうことなく低侵襲な治療の提供が可能です。術後の患者さんに何かあった際に当院へご紹介いただければお力になれるかと思います。

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早期発見をはじめ、より精度の高い治療を目指す

鈴木 安曇 医師:

私は大学を卒業してからずっと、胆膵内視鏡のハイボリュームセンターである京都第二赤十字病院で研鑽を重ねてきました。

地元・浜松に戻った理由の一つには、治療が難しい膵臓がんの領域において、少しでも浜松に貢献できればという思いもあります目の前の患者さんに質の高い診断・治療をお届けしたいという一心で、私はこれまで内視鏡技術を磨いてきました。しかし膵臓がんの治療成績を上げるためには、何より早期発見が大切です。そのためには地域の先生方のご協力が必要不可欠であり、ぜひ早めのご紹介をお願いいたします。

より質の高い治療を目指し、総合病院として手を尽くして膵臓がんに立ち向かう

落合 秀人 医師:

私はまだ若い頃に他県のがんセンターへ赴任しました。膵臓手術の権威に師事し、精度の高い手術修行を重ねる中で、同時に手術の限界も実感したことを今でも覚えています。当時、膵臓がんは主に手術だけで根治を目指す時代でした。今も膵臓がん治療は外科手術大きなウエイトを占めますが、生存率を上げられるプラスアルファが出てきています。今年の米国臨床腫瘍学会でも、膵臓がんに対する新しい治療薬研究についての話題が多く、期待できる報告結果も見られています。

膵臓がんは、ステージ0であれば5年生存率が約85%と報告されるようになりました。しかし、多くの患者さんはステージII以上で発見され、予後が厳しいのが現実です。生存率が比較的高い、ステージ0、I見つかるようになってきた今、ステージⅡ以上患者さんをいかに治療していくかそこが、私たち膵がん治療医の踏ん張りどころでしょう。1%でも生存が上がるように、目の前の患者さんが膵臓がんを克服できるように現代の医療の武器を総動員し、日々考えながら診療にあたっています。

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浜松医療センター

静岡県西部地区を診療圏とする高度総合医療機関であり、地域医療支援病院、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、地域周産母子医療センター、アレルギー疾患医療拠点病院、日本脳卒中学会一次脳卒中センター、そしてゲノム医療連携病院の責を担っている。

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