24時間365日、断らない救急のために。救急外来・拡張リニューアル
横浜市立みなと赤十字病院は、厚生労働省が実施する救命救急センター充実段階評価で8年連続で最高ランクの「S評価」を取得。
24時間体制で「断らない救急」を実践しています。
救急搬入件数の増加に伴う混雑を緩和し、より迅速な処置ができるよう、
2026年3月、救急外来の拡張工事を完了しました。
新しくなった救急外来について、武居救命救急センター長と中山救急科部長にお話を伺いました。
「断らない救急」のために6年余りかけた拡張工事が完了
武居 哲洋 医師:
2026年3月、救急外来の拡張工事が完了しました。院内で環境改善に向けたワーキンググループが発足したのは2019年12月のことです。これまでは見学に来た方がびっくりするほど、狭い場所に多くの救急車を受け入れていました。コロナ禍以前から横浜市の救急車の要請件数はずっと伸びており、年間1万台以上の受け入れ件数に対して対応するスペースが不十分な状況が続いていました。
当院救急外来の設計は、二次救急医療施設を前提にしていたと考えられます。三次救急医療施設としてこのまま病院の建物を数十年使うには工夫が必要で、救急の移転も含めてさまざまな案が出ました。10以上の設計案が検討され、予算をめぐる議論に時間がかかる中、コロナ禍が始まりました。工事の入札にも応募がなく、建築費の高騰で予算と折り合いがつかない状況が続き、当初の計画は縮小を余儀なくされました。
コロナ禍で得られた感染症対応も踏まえて、縮小案なりに使いやすい計画を何度も模索し、今年ようやく形になりました。改修工事は何度もできるわけではありません。この建物を使い始めて21年になりますが、一般的に病院の寿命を40年とすると折り返し地点です。この機会を節目として今後、救急の機能を充実させながら、長くこの建物で診療を続けていける形になりました。
今は、私たちのミッションである『断らない救急』を継続しながら、工事が終わってホッとしています。約1年3か月、救急車を受け入れる横で工事が進み、いろいろご迷惑をおかけしたと思いますが、無事に完成して皆さんに感謝しています。
リニューアルによって病院の機能が向上
武居 哲洋 医師:
救急外来の面積が約700㎡から約950㎡に広がり、初療ベッドが4床から5床(うち1床は陰圧室)、観察ベッドが8床から9床に増え、新たにウォークイン診察室として感染症に対応可能な陰圧室や産婦人科に対応できる診察室も設けられ、受け入れの幅が広がっています。これまでは部屋が細かく区画され、それぞれのブースが分散していましたが、救急外来の中央にスタッフステーションが配置されて見渡しやすくなり、安全面が向上しました。動線を見直して、救急車を使わずにウォークインで来院する患者さんと救急車で搬入される方の経路を分け、流れが整理されました。器材を格納するスペースも整理されて動きやすくなり、救急の流れがスムーズになったことで、他の診療科の入院や手術も円滑に回る効果を期待しています。
また、患者さんやご家族への配慮として、個室の面談室を設けました。これまでは面談室がなかったので、混み合った救急外来で生死に関わるような大切なお話をしなければならない場面もありました。
もう一つは、昼夜を問わず働く職員への配慮として、スタッフの休憩室を確保しました。これまでは、休憩室がないために救急診療エリアで飲食をせざるを得ないことが多く、職員自身の感染管理上の懸念もありました。
特にお伝えしたい変化として、リニューアルにあわせて複数名の救急救命士を新たに雇用し、当院の救急車で地域の医療機関へ患者さんをお迎えに行くサービスを開始しました。受け入れの幅が広がった分、救急隊からの応需要請にも今まで以上にお応えしていきたいと思います。日本赤十字社のミッションとして取り組んでいる救急・災害への対応も、多数傷病者同時受け入れ可能な医療ガス配管などの整備が進みました。
救急外来が新しくなり、診療内容や災害対策が充実
中山 祐介 医師:
今まで救急のスペースは、診察エリアと患者さんが待機する場所との間に壁があり、見渡せませんでした。拡張工事によって視界が広がり、患者さんの変化に気づいて声をかけやすくなりました。患者さんに接する時間が増え、より丁寧な診療につながっています。
診療エリアが広くなって受け入れがスムーズになり、お待たせする時間も短くなりました。待ち時間は患者さんや救急隊のご負担になりますし、私たちとしても気になるところです。余裕をもって診療できるようになると、一人ひとりの患者さんに向き合う時間が生まれます。お待たせする時間を少なくできることは、患者さんにとっても、私たちにとっても、うれしいことです。
リニューアルに伴い、設備も新しくなりました。X線でリアルタイムに処置を確認できる透視検査システムを導入し、骨折の整復や体内への管の挿入をX線で確認しながら行えるようになりました。陰圧室を増設し、感染症への対応体制も整いました。
災害対策の面でも、災害拠点病院としての機能が発揮しやすい環境が整ってきています。診療エリアが広がってベッド数が増えると同時に、多数の傷病者を受け入れられるよう通常より多くの患者さんが入れる設計にしています。例えば、1つの酸素エリアを2名の患者さんで使える配管を設置しました。また、救急外来にはNHKの速報が見られるテレビモニターが設置され、一般の通信システムが使えない状況でも情報収集や発信ができるよう、救急外来と災害対策室に衛星通信インターネット回線の配線も備えました。
「自分の家族だったら」という気持ちを大切に
中山 祐介 医師:
以前はエリアが狭く、大切な時間を過ごすにふさわしい空間を用意できないこともありました。心肺停止の患者さんの周りでご家族が泣き崩れる傍ら、カーテンを1枚隔てて意識の清明な患者さんが日常的な会話をしながら治療を受けている、そのような場面がありました。広くなったことで、患者さんやご家族のプライバシーへの配慮ができるようになりました。ご状態が深刻な患者さんのご家族には、早めに個室へお越しいただき、穏やかな時間をご一緒いただけるよう心がけています。
私がスタッフにいつもお話しているのは「自分の家族だったら」という気持ちです。患者さんに対して、家族にしたくないことはしない。家族にしてあげたいことをしてあげる。患者さんに親身になれば、救急の現場で大切にすべきことが自然と見えてきます。
スタッフが働きやすくなり、スキルアップや連携がしやすく
中山 祐介 医師:
拡張工事によってスタッフが働きやすくなり、互いに学び合える場面も増えました。診療エリアの中央にスタッフステーションができ、情報共有がしやすくなりました。新しくできた休憩室はテーブルを囲む形でソファが配置されています。以前は業務が終わるとそのまま解散でしたが、今は医師・看護師・救急救命士など多職種がお茶を飲みながら話せる場所ができました。患者さんのプライバシーに配慮しながら症例の振り返りができるようになり、それぞれの成長や多職種間の連携につながっています。
当院は「断らない救急」を掲げており、途切れなく救急車をお受けしています。医師・看護師・救急救命士がチームとしてカバーし合う体制が大切です。多職種でタスクシフトしながら動ける仕組みが、安定した救急対応を支えています。今後、救急救命士の人数がもう少し増えていければとも思っています。
武居 哲洋 医師: 救急の現場は、特に初期研修の医師が自分自身で臨床推論を行える数ない機会の一つです。指導医がきちんとバックアップして成長できる体制を整えることが当院にとってとても大切だと考えています。当科の特徴として、週に4回は症例について議論する場を設け、研修医に向けた救急症例セミナーの企画も毎月行っています。今回の工事でカンファレンス室にモニターを設置し、研修しやすい環境も整いました。
「断らない救急」の考え方を大切に、地域を支える
武居 哲洋 医師:
当院は、すべての患者さんをお受けすることを基本方針としています。救急患者さんを初期救急から三次救急に病院前で振り分ける我が国の救急システムには限界があると考えています。救急受診前には検査を受けていないことが多く、症状の軽重の判断は診察した上で慎重に行う必要があります。救急の患者さんは高齢の方も多く、丁寧な確認を心がけています。
地域の先生方からご依頼いただいた患者さんを、しっかりお受けします。地域連携室にお電話いただいた際は、救急車でのご来院のほか、当院の救急車でお迎えに伺うことも可能です。拡張工事によって受け入れの体制が整いましたので、地域の先生方にはぜひ当院のサービスをご活用いただければ幸いです。
中山 祐介 医師:
当院は「断らない救急」の考え方を大切にしています。道で倒れている方を見かけたら声をかけると思います。目の前で苦しんでいる方に対して、あれこれ条件を考えすぎずにまず動こうと、スタッフには伝えています。病気で苦しんでいる方がいれば、お力になるのが私たちの役割です。
救急車を呼んで申し訳ないとおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。一般の方が症状の軽重を判断するのは難しいことです。不安があれば受診していただいて構いません。他に緊急性の高い方がいれば、お待たせしてしまう場合もありますが、その点はご理解いただければ幸いです。
横浜のインフラとして「もしもを守る。いつもへつなぐ。」
武居 哲洋 医師:
横浜市立みなと赤十字病院は、「もしもを守る。いつもへつなぐ。」という理念を掲げています。コロナ禍を経て、私たちは改めて「病院が地域に果たす役割」を考え直すようになりました。病院は水や電気といったライフラインに近い、地域の暮らしを支えるインフラの一つです。当院は公的病院としての役割を担い、行政からのご依頼にもお応えしています。今回の工事にあたっては、横浜市にもさまざまなご協力をいただきました。横浜市中区を中心とした地域の皆さんに何かあれば、私たちはしっかり動きます。地域の皆さんのお役に立ち、医療機関の先生方からも頼りにしていただける存在でいたいと思っています。
中山 祐介 医師:
今回の工事で、施設面だけでなく診療環境も大きく変わりました。整った環境で地域の皆さんにしっかりお応えできるよう、取り組んでいきたいと思います。地域の医療機関から連携室にご依頼があった際は、救急外来での診察を経て総合診療科へつなぐ場合もあります。ご自身での来院が難しい方には、病院救急車でのお迎えにも対応しています。「もしも」の際は、ぜひ私たちにお声がけください。
横浜市立みなと赤十字病院
横浜市立みなと赤十字病院は救急・高度急性期とがん医療を担う地域の基幹病院です。「断らない医療」を掲げ、国からS評価を受けた最高水準の救命救急センターや、手術支援ロボットなどの高度医療体制を備えます。
所在地
神奈川県横浜市中区新山下3丁目12番1号
病床数
624床(一般584床、精神40床)
URL
https://www.yokohama.jrc.or.jp/