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頭蓋底腫瘍センターを設立―関西における治療拠点を目指して

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大阪府済生会中津病院

頭蓋底腫瘍センター長・脳神経外科部長 センター顧問・大阪公立大学脳神経外科 名誉教授 センター連携教授・大阪公立大学脳神経外科 教授

頭蓋底腫瘍センターを設立
関西における治療拠点を目指して

済生会中津病院は、2026年4月に頭蓋底腫瘍センターを設立しました。頭蓋底腫瘍は脳神経や主要血管に近接するため、極めて高度な判断と手術技術が求められる領域です。当センターでは、大阪公立大学脳神経外科で培われてきた知見と技術を基盤に、複数診療科・多職種が連携し、安定して質の高い医療を提供できる体制を構築しています。

頭蓋底腫瘍の分野を牽引する大阪公立大学脳神経外科の治療/技術を継承

後藤浩之センター長:済生会中津病院ではこれまでも頭蓋底腫瘍手術に取り組んできましたが、本領域は一般的に手術難易度が高く、大学病院へご紹介いただくケースも多い分野でした。私は大阪公立大学脳神経外科教室において、当センター顧問の大畑建治先生、連携教授の後藤剛夫先生のもとで研鑽を積み、頭蓋底腫瘍治療に携わってまいりました。

大畑先生は同教室第4代教授として頭蓋底外科の基盤を築かれた、本邦を代表する第一人者であり、耳鼻咽喉科領域との融合を含めた外科手技の発展に大きく寄与されてきました。後藤剛夫先生は第5代教授としてその流れをさらに発展させ、顕微鏡手術と内視鏡手術を融合した多様なアプローチを確立し、現在の頭蓋底腫瘍治療を牽引されています。

当センターの大きな特徴は、こうした両先生の知見と経験を直接的に受け継ぎ、それを日常診療の中で実践できる体制にあります。大学病院と連携しつつ、市中病院としての機動性を活かし、適切なタイミングで適切な治療を提供できる体制の構築を目指しています。

頭蓋底腫瘍センターを設立―関西における治療拠点を目指して

新しい技術を取り入れ、より質の高い治療へ

後藤浩之センター長:頭蓋底は、脳幹、脳神経、主要な血管など、生命や重要な機能に関わる構造が集まる非常に複雑な領域です。頭蓋底腫瘍は髄膜腫、聴神経腫瘍、下垂体腫瘍など比較的良性の腫瘍が多い一方で、悪性腫瘍を含む場合もあり、周囲の重要な神経や血管と密接に関わりながら進展するため、高度な専門的治療が求められます。

近年、顕微鏡手術の進歩に加え、内視鏡を用いた経鼻手術・開頭術の発展により、従来は到達が難しかった病変に対しても、より低侵襲で安全性の高い治療が可能となってきました。腫瘍の摘出率向上と、神経機能の温存を両立することがこれまで以上に重要となっています。
当センターでは、大阪公立大学脳神経外科で培われてきた頭蓋底外科の知見と技術を基盤に、顕微鏡手術と内視鏡手術を適切に組み合わせながら、患者さん一人ひとりに適切な治療戦略を選択しています。

診断においては、CT、MRI、PETなどの画像検査を適切に組み合わせ、腫瘍の性質や進展範囲を詳細に評価します。手術では、術中神経モニタリングや手術ナビゲーションシステムを活用し、脳神経機能の温存と安全性の向上に努めています。

また、頭蓋底腫瘍の治療は手術だけで完結するものではありません。症例に応じて放射線治療や薬物治療を組み合わせることも重要です。当センターでは、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、眼科、放射線治療科、糖尿病内分泌内科など複数診療科と連携しながら、患者さんにとって適切な治療方針を検討しています。

頭蓋底腫瘍は比較的稀な疾患であり、治療方針の判断が難しいケースも少なくありません。だからこそ、適切なタイミングで専門的な評価を受けることが重要です。患者さん一人ひとりに寄り添いながら、安全性と治療効果の両立を目指した診療を提供してまいります。

多職種連携と専門的支援体制で支える頭蓋底腫瘍治療

後藤浩之センター長:頭蓋底腫瘍センターでは、専門性の高い診療を安定して提供するため、院内外の連携体制を重視しています。症例に応じて耳鼻咽喉科・頭頸部外科との合同手術を行うほか、糖尿病内分泌内科などと連携し、周術期を含めた全身管理にも対応しています。

頭蓋底腫瘍は比較的稀でありながら高度な専門性を要する領域であるため、個々の症例に応じた適切な治療戦略が重要です。当センターでは、経験豊富な専門家の支援のもと、診療の質を担保しながら、継続的に治療を提供できる体制を整えています。

頭蓋底腫瘍センターを設立―関西における治療拠点を目指して

大畑建治センター顧問:後藤浩之先生は大阪公立大学において脳神経外科の研鑽を積まれ、頭蓋底腫瘍手術に継続して取り組んでこられました。手術手技に加えて、周囲との協調性にも優れており、チーム医療の中で力を発揮される先生です。

また、済生会中津病院は各診療科の体制が整っており、組織としての安定性も高い医療機関です。さらにアクセスの良さもあり、地域医療において重要な役割を担う施設といえるでしょう。こうした環境のもとで、専門性の高い頭蓋底腫瘍治療に取り組む意義は大きいと考えています。
外科治療の質は施設の種別だけで決まるものではなく、術者の経験や体制によって支えられます。このような体制のもとでのセンター設立は大変意義深く、今後の取り組みに期待しています。

頭蓋底腫瘍センターを設立―関西における治療拠点を目指して

患者さんとの信頼関係を基盤とした診療を

後藤浩之センター長:私は、手術前の外来において十分な時間をかけ、患者さんとご家族への説明を大切にしています。頭蓋底腫瘍の手術は難易度が高いため、術者として治療方針やリスクについて丁寧にお伝えし、ご理解と信頼を得たうえで手術に臨むことが重要と考えています。
脳神経外科手術は、術者の判断や手技が結果に大きく影響する領域です。だからこそ、一例一例に真摯に向き合い、適切であると考えられる治療を選択する責任があります。

例えば、腫瘍の一部を温存することで安全性を高められる場合と、より広範な切除を目指すことで機能改善が期待できる場合とでは、リスクと効果のバランスを慎重に見極める必要があります。どの段階まで踏み込むかという判断は、経験と専門性に基づく重要な意思決定となります。

頭蓋底腫瘍センターを設立―関西における治療拠点を目指して

「理想を掲げるだけでなく、それを実践することが重要である」という教えとともに、いわば“根性”とも言える粘り強さを持って手術に向き合う姿勢の大切さを学んできました。日々の診療においても、その姿勢を忘れず、責任ある医療の提供に努めてまいります。

関西における頭蓋底腫瘍手術の拠点を目指して

後藤剛夫センター連携教授:大阪公立大学脳神経外科では、これまで頭蓋底外科、とりわけ頭蓋底腫瘍手術に継続して取り組んできました。技術的に難易度の高い領域ではありますが、教室として経験を積み重ね、専門性の高い診療体制の構築に努めてきました。

後藤浩之先生は、同教室において研鑽を積まれ、これまで多くの症例に携わってこられました。難易度の高い症例においても、安定した手術を実践されており、今回、済生会中津病院に頭蓋底腫瘍センターが設立されたことは、これまでの取り組みを臨床の場でさらに展開していく一歩になるものと考えています。

頭蓋底腫瘍センターを設立―関西における治療拠点を目指して

大畑建治センター顧問:頭蓋底腫瘍センターの取り組みが、まずは大阪を中心とした地域で広く認知され、必要とされる患者さんに適切に届くことを期待しています。頭蓋底腫瘍は専門的な治療が受けられる施設が限られる領域だけに、中津病院でこうした治療が受けられるということを、まずは地域の医療機関や患者さんに広く知っていただくことが第一歩だと考えています。

後藤浩之センター長:済生会中津病院は市中病院として、大学病院とは異なる役割を担いながら、機動性や地域との近さといった強みを活かした診療が可能であると考えています。今回のセンター設立にあたり、これまでご指導いただいた先生方に相談しやすい環境にあることも大きな支えとなっています。
今後も、大阪公立大学脳神経外科で培われてきた知見と経験を基盤としながら、診療の質を維持・向上させ、継続的によりよい医療を提供する覚悟です。

頭蓋底腫瘍が疑われる際は早期のご相談を

後藤剛夫センター連携教授:頭蓋底腫瘍は比較的稀な疾患であり、手術の難易度も高いことから、専門的な経験と判断が求められる領域です。治療方針、とりわけ手術適応やそのタイミングについては、頭蓋底腫瘍を専門とする医師による評価が重要になる場合があります。

実際には、症状が乏しい段階でも手術を検討した方がよいケースがある一方で、症状があっても慎重な経過観察が適切な場合もあり、個々の症例に応じた判断が必要となります。こうした点からも、診断や対応に迷われる際には、専門施設へのご相談をご検討いただければと考えています。

後藤浩之センター長:症状が明らかでない場合でも、将来的に治療が困難となる可能性が考えられる際には、早期の段階で治療介入を検討することが望ましい場合があります。例えば、比較的若年の患者さんで将来的に手術が必要となることが予想される場合には、腫瘍が一定の大きさに達した段階で治療を行うことで、リスクの低減につながる可能性もあります。

頭蓋底腫瘍は日常診療で頻繁に遭遇する疾患ではありませんが、診断や対応に迷われる際に、当院脳神経外科を選択肢の一つとして想起していただければ幸いです。今後も地域の先生方に信頼していただけるよう、院内外の連携を大切にしながら、適切な医療の提供に努めてまいります。ご相談などがございましたら、どうぞお気軽にお声がけください。

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大阪府済生会中津病院

"思いやりと活力に満ちた病院"をスローガンに、地域の中核病院として総合的な、きれ目のない「医療・看護・介護サービス」を提供。 2016年には創立100周年を迎えた。

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