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毎週の回診カンファレンスをベースに効率的な回復期リハビリテーションを展開

Doctor's interview

SHIGEATSU
NATSUME

吉田病院 附属脳血管研究所
副院長

毎週の回診カンファレンスをベースに効率的な回復期
リハビリテーションを展開

回復期リハビリテーション病棟では、回診カンファレンスやリハビリ計画書作成を頻回に実施し、可能な限り患者さんの経過を報告しご家族のご希望に合わせるよう努めています。急性期から一貫したリハビリテーションを提供するとともに、社会制度の活用サポートに至るまで積極的に関わり、退院後の不安軽減にも尽力しています。

一貫したリハビリテーション実現のために急性期・回復期の管理体制の一元化の徹底

当院では、リハビリ医以下、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の各責任者が急性期・回復期の両方を担当する体制にしており、リハビリを行う場所も共有しています。両病棟の責任者を一本化することで、病棟間のセクショナリズムを防ぎ、情報共有をスムーズにすることで、入院するすべての患者さんの経過を全員が責任をもって把握できるようにしています。このような体制をとっている病院は珍しく、当院の大きな特色と言えると思います。

この一元化システムを支えるのが、全患者への週1回の回診カンファレンスです。リハビリ医を中心に療法士や看護師、医療ソーシャルワーカー(MSW)がベッドサイドを回り、1週間のショートサマリを作成して全入院患者の状態やリハビリ内容の評価を徹底しています。2013年の回復期リハビリテーション病棟立ち上げと同時にこのシステムを運用していますが、急性期から途切れることなく回診カンファレンスを行っているため、情報の切れ目が限りなく少なくなりました。 また回診カンファレンスのみだけでなく、患者さんのためのカンファレンス自体が多いことも、当院の特色です。療法士は毎日といっていいほど何らかのカンファレンスを行っており、個々の患者さんに最善のリハビリテーションを提供するべく検討を重ねています。

リハビリテーションに最新機器を積極的に活用し、在院日数を短縮

全入院患者がリハビリテーションの対象である、これが当院における基本的な考え方です。急性期であっても入院時からすぐにリハビリ担当がつきます。リハビリテーションが必要になってから開始するという考えが、そもそも存在しないので、リハビリが後手の対応になるということがありません。また、すべての療法士が促通反復療法(川平法)を習得実践しており、電気刺激療法や早期装具療法までを並行して取り入れていることで、在院日数の短縮化にも大きく貢献しているものと思います。

効果的なリハビリを行う上で、重要なポイントになる1つが早期装具療法です。
当院の装具作成数は兵庫県下でもトップクラスを誇っています。
麻痺がある場合は、脳が「足が動かない」と認識してしまわないうちから装具を用いた訓練を開始することで、機能回復がスムーズになり、2次障害の予防も可能となります。また、痙縮に対するボトックス療法にも積極的に取り組み、急性期・回復期・退院後を問わず、この治療が最善だと判断した患者さんにお勧めしています。

加えて、患者さんが前向きに訓練に臨めるよう、メンタル面のケアも重視しています。入院後に長いリハビリテーションが必要になると患者さんはショックを受けるので、リハビリ期間はできるだけ短く設定し、必要に応じて延長・修正を追加。リハビリは有効か、新しい医療機器を使うほうがいいのではないかなど、回診カンファレンスでさまざまな角度から検証し、少しでも効率良く目標に到達できるよう方向づけます。患者さんやご家族に接する際は、寄り添うように温かな敬語を使うなど、コミュニケーションの面においても、全スタッフが徹底して意識するようにしています。

毎週の回診カンファレンスをベースに効率的な回復期リハビリテーションを展開

リハビリテーション総合実施計画書は多職種が合同で毎月作成し患者さん・ご家族と共有

リハビリテーション総合実施計画書は3カ月に1回以上作成するといった医療制度のルールがありますが、言い換えれば、これは3カ月入院する人には入院時・退院時だけ作ればいいということにもなります。半年の入院でも、途中で作成するのは1回だけとなります。当然ながら、このような形骸化した計画で効率的なリハビリテーションを行うことはできません。

そこで当院では、月1回のペースでリハビリ医や療法士、看護師、MSWが合同で協議して計画を策定。その都度、患者さんご家族と内容を共有し、進捗状況を評価して再度説明するという流れを繰り返します。そうすれば、何がどう進んでいるのか、問題はないか、社会的制度の活用はどうすればいいか、そういったことまでを細かく患者さんご家族に説明し、理解して頂くことが安心感にも繋がっているものと思います。

この計画書にはかなり詳しい情報を記載しており、途中で他の医療機関に転院する方にとっては、そのままセカンドオピニオンの資料となるレベルの内容です。リハビリテーション総合実施計画書の運用をここまで対応する医療機関は、まだまだ非常に少ないと思います。

療法士は研鑽を積んで医学的知識を深め、積極的なリハビリテーションを遂行

脳卒中の患者さんに対しては、いかに積極的なリハビリテーションを遂行するかが重要であり、療法士にはリスク管理も担えるくらいの医学的知識が不可欠です。しかし、看護師と比べると療法士の教育課程は医学的知識が不十分なのが現状です。ですので、入職後もしっかり学んでいかなければ、知識不足によりリハビリテーションが消極的になってしまう恐れがあります。このような背景から、当院では療法士の医学面の研修にも力を入れています。

例えば画像読影です。リハビリ医に指示されるだけのリハビリテーションとならないよう、責任病巣の確認、病態やリスクの評価、予後予測の評価までマスターする画像読影勉強会を実施しています。高次脳機能障害に関しては、言語聴覚士だけでなく理学療法士・作業療法士もしっかり知識をつけた上で介入するようにしています。

摂食嚥下障害においても療法士の関わりは大変重要となります。栄養状態はどうか、どのように食べることができるか、脳に問題がある場合はどうするかなど、管理栄養士と言語聴覚士、場合により作業療法士も交えて検討しています。積極的に嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下ビデオ造影検査(VF)を実施し、VF検査後は医師を交えた読影カンファレンスで所見や方針を検討。VFの実施件数は168件(2016年度)と非常に多く、これほど多数の、しかもVE・VFの両検査を実施する医療機関も全国的にみてごくわずかです。他院の回復期病棟に転院される方に対してもできる限りVFを行い、検査結果はCDにまとめてお渡しします。退院後のことを考えればここまで徹底するべきだと考え、スタッフ一同、熱意を持って取り組んでいます。

毎週の回診カンファレンスをベースに効率的な回復期リハビリテーションを展開

気軽に相談できるよう、医療ソーシャルワーカーがオープンな環境に常駐

回復期リハビリテーション病棟を語る上で、医療ソーシャルワーカー(MSW)の存在も忘れてはなりません。当院のMSWはリハビリテーション実施計画書作成から家屋評価のマネジメントまで担う、マネージャー役を担当します。あらゆる情報を把握して退院に向けて懇切丁寧にサポートするので、不要な入院延長が発生することなく、在院日数短縮化の重要な役割を担っています。

50~70床の回復期リハビリテーション病棟では、兼務を含め、多くても1.5人程度のMSWがいるのが一般的ですが、当院では専従4人体制をとっています。MSWは病棟フロントの窓口に常駐し、専用の相談室はあえて設けていません。こうすることで患者さんやご家族との面接の頻度が格段に上がり、不安やご要望を気軽に話せる雰囲気を環境面から整えています。
リハビリテーションが進むにつれて、退院後に想定される状態や患者さん・ご家族の思いも少しずつ変化します。在宅療養への迷いが生じてくるなど、現実的な悩みが出てくるのです。そのような心の動きを見逃さないようMSWが関わり、少しでも不都合があれば繰り返し調整に入ります。場合によっては早期から施設入所を提案するなど、皆さんが心を痛めなくて済むよう配慮しています。

手厚いフォローで退院後の社会的不安を取り除く

脳卒中で倒れると収入が不安定になりやすく、多くの方が経済面への不安を抱きます。その不安解消に向けて、社会制度の活用方法については早い段階からアドバイスすることが大切です。例えば、身体障害者手帳や障害年金の申請方法やタイミングを調べ尽くしてご家族にご説明することで多くの不安を解消できる場合があります。退院時に障害者手帳があれば障害者雇用促進法によって復職が優遇されることなど、制度の存在を知れば安心することができるので皆さん前向きな気持ちになりリハビリに集中して頂くことができます。こうした在宅復帰に向けた強力なサポートも当院の強みの一つと言えるでしょう。

ただ、社会制度の中には、退院後しばらく経過しなければ申請できないものもあります。しかし、退院後に医事課窓口で一から相談するのは手間がかかってしまいます。当院では、半年後、1年後でも、入院時に担当したMSWが相談に応じることで、退院後の負担軽減に努めています。患者さん側からの連絡を待つのではなく、MSWが先手で連絡を取り、申請漏れがないようサポートします。長期にわたる切れ目のない支援で、患者さんご家族の社会的不安をなくす一助となれたらと思います。

吉田病院 附属脳血管研究所

神戸市兵庫区の吉田病院は脳卒中の急性期・リハビリテーション・再発予防まで切れ目のない医療体制を提供しています。 専門医による救急対応を24時間受け付けており、在宅復帰を目指したリハビリテーションや脳卒中の早期発見や再発防止まで支援しています。

  • 所在地

    兵庫県神戸市兵庫区大開通9丁目2-6

  • 病床数

    139床(脳卒中ケアユニット12床、7対1一般病棟71床、回復期リハビリテーション病棟56床)

  • URL

    https://www.yoshida-hp.or.jp/

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