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他科多職種、地域医療連携を強化し、チームワークで脳卒中の超早期治療に挑む

Doctor's interview

STROKE
CENTER

浜松医療センター
脳卒中センター

他科多職種、地域医療連携を強化し、
チームワークで脳卒中の超早期治療に挑む

静岡県⻄部地区の脳卒中治療の受け皿として、浜松医療センターでは2021年 7月1日に脳卒中センターを開設しました。

24時間365日体制で、脳神経内科医4名 脳神経外科医6名が常時脳卒中に対応しています。

昨年血管内治療の指導医である平松久弥医師を迎え、更にアップデートした脳血管内治療の取り組みをご紹介させて頂きます。

脳卒中のエキスパートが揃う充実した体制

中山医師当院は、浜松市中部・南西部から湖西市を医療圏とし、開設以来、脳内出血に対する超早期の開頭血腫除去術、脳梗塞に対する超早期の血行再建術など脳卒中に対する革新的な取り組みを行ってきました。昨今の脳神経外科医、脳神経内科医不足により、中小病院において脳卒中を専門に扱える施設が減少しています。静岡県西部地区の基幹病院として、脳卒中の専門治療を集中的に行い、受け皿としての体制を強化することが求められ、2021 7 1日に脳卒中センター設立に至りました。

 

脳卒中は早期治療が非常に重要です。当院では24時間365日、脳卒中患者を受け入れ、t-PA投与、血栓回収術をはじめとする血管内手術及び開頭手術が可能となっています。昨年(2021)、血管内治療の指導医である平松久弥医師が加わり、現在、脳神経内科医4名、脳神経外科医6名が常時脳卒中に対応し、充実した医療体制となっています。近年、血管内手術の症例数が非常に増えており、平松医師の指導のもと高度な治療にも対応し積極的に急性期の受け入れを行っています。さらに脳卒中の開頭手術に関しましても専門性の高いベテラン医師が揃っています。


当院では78年前から初期脳卒中治療対応の講座として神経救急蘇生【ISLS(Immediate Stroke Life Support)】コースを開設しています。初診救急外来で脳卒中の適切な診断を行い、次の領域の治療に結びつけられる教育プログラムとなっています。当院の1、2年目の研修医は全員、ISLSコースを受講し、救急外来での脳卒中患者の診療を行うようにしています。

 

急性期以降もチーム医療や多職種連携を強化し、嚥下については口腔外科医の協力を要請、栄養管理はNST(栄養サポートチーム)をはじめとした多職種チームが早期から介入し栄養改善を行っています。リハビリテーションも急性期治療に並行して行い、入院後48時間以内にはベッドサイドリハビリから開始できるよう体制を整えています。

地元静岡で脳卒中のプロフェッショナルを目指す!

平松医師医師を志すようになったのは小学4年生の時です。ブロック塀から転落し左腕を骨折して約2ヶ月入院しました。牽引治療と観血的手術を行い、あれほど痛くて変形していた腕が元通りになったことで、子供ながらに医学の素晴らしさを知り、医師に興味を持ちました。その後、中学3年の時に肺炎で1ヶ月入院し、医師の点滴加療、特に抗生物質の薬の効果に大変驚き、高校卒業後、強い志を抱いて医学部に入学しました。

医学部6年の時、市中病院での実習で、野戦病院のように次から次へと運ばれてくる患者を脳神経外科医が手術で手際よく治していく姿に強い憧れを抱き、地元である静岡に戻って脳神経外科医になることを決意しました。初めてくも膜下出血の患者さんの手術に入った時に、スリリングで緊張感漂う状況下で命を救う脳卒中治療の奥深さを感じ、関心が高まりました。

他科多職種、地域医療連携を強化し、チームワークで脳卒中の超早期治療に挑む

母親の病気を治した血管内治療のエキスパートを目指す

平松医師医師になって8年目、私の母が海綿静脈洞部の硬膜動静脈瘻に罹患しましたが、シャントが深部にあり開頭手術での治療が困難でした。私の師匠の一人である脳血管内治療医の先輩の施術によって治癒したことが、カテーテル治療・脳血管内治療の技術取得を目指す大きなきっかけとなりました。

当時はカテーテル治療が現在ほど普及しておらず、くも膜下手術もクリッピング手術が主流でカテーテル手術はクリッピングが難しい症例に限って行われていました。私は聖隷三方原病院と聖隷浜松病院で8年間、血管内治療の指導を受け、その後、現在の藤田医科大学で一年半学んで専門医資格を取得後に浜松医科大学に戻りました。

当時、浜松地区は血管内治療を専門とする医師が少なく、浜松医科大学病院でも血管内治療医がいなかったため、2006年自ら血管内治療を開始し、2011年に指導医の資格を取得し、後進の指導をしながら血管内治療のグループを立ち上げました。血管内治療に携わるようになってから20年余、個人の症例実績は1000例を超えています。

脳卒中は急性期の治療が非常に大切です。私自身残りの医者人生が10年ほどだとすると後進の指導も含めて急性期の治療にもう少し深く関わっていたいという気持ちがありました。浜松医療センターは充実した急性期医療を提供する病院なので私が貢献できる場があるのではないかと思い、赴任いたしました。

脳血管内治療の危険性を十分認識する

平松医師脳血管内治療のカテゴリーは治療といえども「外科手術」だと考えています。手術というのはそもそも侵襲的治療で、脳血管内治療は低侵襲治療と言われていますが無侵襲ではありません。血管内治療の歴史はデバイスの進歩でもありますが、ある意味で合併症をいかに克服するかという歴史でもあり、ガイドワイヤー、カテーテル、コイルの数ミリの動きが致命的な血管穿孔につながるリスクの高い治療です。潜在的な危険性を十分認識し、合併症をできるだけ起こさないように心掛けることは極めて重要だと考えています。

私は普段はズボラな性格ですが、脳血管内治療を行う際は戦略を立て慎重すぎるほど慎重に行います。治療適応に関しても直達術が良いのか、カテーテル手術が良いのかを内科と外科の経験豊富なフタッフとディスカッションをして決定するようにしています。

 

現在、脳動脈瘤の血管内治療は動脈瘤そのものにコイルを詰めて動脈瘤を閉塞する「コイル塞栓術」が主流です。最近では大きさや形によってステントを使った治療も出てきていますが、長期的なデータがまだ出ていないため、まだ限定された施設のみでしか行われていません。

当センターでは新しいデバイスだからといってすぐに飛びつくのではなく、内科と外科の両方の視点でしっかり検討し、患者さんにとって最適な方法を選択しています。二次予防も考慮して良質な医療を提供していきたいと考えています。

他科多職種、地域医療連携を強化し、チームワークで脳卒中の超早期治療に挑む

画像に頼らず患者を診ることを指導

平松医師治療をしたからといって全ての患者さんが元気で帰れるというわけではありません。特に脳卒中は発症してしまうと何らかの後遺症が残ってしまうという現実を何度も目の当たりにしました。

脳卒中の患者さんがどうしたら後遺症を最小限にして救えるかということを脳外科医になってから強く思うようになりました。画像だけで判断するのではなく、まず最初に患者さんの状態を診て、やらなければいけないことは何かをしっかり考える、その後に画像をみて確認するように若手には指導しています。

脳卒中連携パスで関連施設をシームレスに観察

中山医師静岡県西部地区では病院と地域のかかりつけ医とともに患者さんの情報を共有するツールとして、2008年より「脳卒中地域連携パス」が始まりました。

現在、登録されている病院や施設も非常に多く、これを使用することにより関係する医療機関や施設から患者さんの状態をシームレスに観察できます。急性期病院から回復期のリハビリテーション施設、開業医、歯科医、介護施設の方々と、地域連携が非常に上手くとれていて、定期的に会議を開いて常にパスの見直しや問題点について話し合いが行われています。

超急性期の患者さんに関しては個人の情報を特定しない形で脳神経内科脳神経外科の医療スタッフ全員が画像も含めLINEで患者さんの情報を共有し急性期の治療方針を決めています。また、通常は毎週内科と外科で合同カンファレンスを行い、患者さんの診断や治療、今後に関してディスカッションをする場を設けていて風通しの良いチームを作っています。

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一刻も早く脳卒中の症状を見極め早期治療へ

中山医師脳卒中治療は時間との戦いです。後遺症を少しでも軽減するためには、一刻も早く脳卒中の症状を見極め、専門の医療機関を受診することが重要です。また1割程度ですが、一過性脳虚血発作(TIA)のように症状がなくなっても脳梗塞が見つかることがあります。当センターでは開業医の先生方がいつでも患者さんをご紹介いただけるよう、エキスパートによる24時間365日対応可能な体制を整えています。患者さんに脳卒中の症状が出ていたら様子を見るのではなく、迅速にご紹介いただきますようお願いいたします。

浜松医療センター

静岡県西部地区を診療圏とする高度総合医療機関であり、地域医療支援病院、災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、地域周産母子医療センター、アレルギー疾患医療拠点病院、日本脳卒中学会一次脳卒中センター、そしてゲノム医療連携病院の責を担っている。

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